Kalte Speisen(カルテ・シュパイゼン)

 

08年2月19日(火)

近頃の人達にとっては、朝はたいへん忙しいために、朝食をとらない人が増えているようです。

大人たちにとっては、朝の時間は朝食を取ることよりも、少しでも寝ていたいとか言う事は、理解出来ないわけではない。

しかし、それが体を作っている時期になる成長期の子供達にとっては、重大な問題を惹き起こす元になる。それでなくとも、現代っ子の魚嫌いと、塩素のたっぷり入った水道水のせいで(水道水は蛇口から水が出るときに、残留の塩素がある程度の濃度でなければならない決まりがある。勿論、水の腐るのを防ぐためである。)、日本人は慢性のカルシューム不足を引き起こしている。何故水道水が関係あるのかと言うと、カルシュームは、食中毒のときなどの時には、体に入った毒素を中和して体外に出す働きがあるので、非常に有効な治療薬として注射などで使用される。あの、くるくる目が回ってしまう透明の注射が、実はカルシューム剤であり、体内に入った毒素を排出してくれるのである。塩素はそのものが毒性の強いものである。そのために体に溜まった塩素やコンビになどで使用される防腐剤などの毒を、カルシュームが体外に出してくれる働きがある。しかし、今日の子供達のように、好き嫌いが激しく、特にカルシューム系(所謂小魚など)を食物として摂取しなければ、体は慢性的なカルシューム不足に陥り、その不足したカルシュームを補うために、体の骨の中からカルシュームを補充するようになる。その結果、慢性的なカルシューム不足は、骨粗しょう症(コツ・ソ・ショウ・ショウ)という世にも恐ろしい病気を惹き起こす元となる。

その前兆となるのが、所謂、アトピーやアレルギーである。

教室でも、朝食抜き、或いは菓子パンなど(甘食)で食事をとっている子供達、或いは好き嫌いが激しい子供達は、小学校の5,6年生、中学生ぐらいになると、確実にアトピーになったり、鼻炎等をひき起こした、アレルギーが出たりしている。あまりにも、アレルギーが酷い生徒の場合、親や本人と相談をして、ある種の民間療法のようなアドバイスをする事があるのだが、それはあくまで個人的な話である。(触れてはいけないので省略する)

 

しかし、私達世代の人間に言わせれば、何も朝が忙しいのは、現代に限ったことではないし、洋の東西を問うわけでもない。古い日本でも、或いはヨーロッパにしても、朝食は手早く用意できて、しかも仕事をしていくために、充分なエネルギーを補給できるように、手軽な既製品で殆どが間に合う、十分に満足の出来るメニューが古来から考えられて来た。

ドイツ語では冷たい食事の事をkalte speisenカルテ・シュパイゼン(冷たい食事)と言う。

私が留学をしていたときには、住んでいた下宿は一部屋の間借りだったので、コンロなどのキッチン用品は一切置く事はできなかった。

ドイツの水はカルキが多いので、沸騰させてからでないと飲んではいけないと、ドイツ人の友人に注意されて、黒い握り手の付いた、半田ごてのような小さいものを珈琲カップの中に突っ込んで、電器を通電すると、一瞬でガバガバと沸騰する、そういった湯沸かし器を買ってきた。それで沸騰させたカップに、ティーパックを入れて、紅茶を作る。

(何と、当時とは違って、ずいぶんおしゃれになってはいますが、同じヒーター式の湯沸かし器がまだ日本でも売っていたのですよ!左側のタイプは、おしゃれな電器珈琲カップ用の湯沸かし器(今売っているものです。)
:右側は、(実はこれは湯沸かし器ではなくって、普通の半田ごてですが、)ドイツで見た湯沸かし器はこんな感じでした。ただのイメージですが、参考までに載せておきます。


私のドイツでの朝食は、珈琲とパンだけの普通のドイツの学生や日本人の留学生よりは、ちょっと(一品分)豪華なものだったかな?

なんていっても、所詮は学生の下宿暮らしの事、冷蔵庫すらないので(当時は日本でも冷蔵庫を持っている学生なんか殆どいなかった時代の話ですが)当日の朝(冷蔵庫がないので買い置きは出来ません。)、近所のスーパーで買ってきた、ビヤー・サラミ2枚とシンケン・ゼンメル(schinkensemmel)を1個か、さもなければ食パン1枚、後はサラダ菜2,3枚、パンにオレンジのジャムか、ヒンベャー(Himbeereえぞいちご・木苺)・ジャムを塗って食べる事もありました。「ジャムを塗る事・・・」それが贅沢かな?

Semmel(握りこぶしよりも、少し小さいぐらいの大きさですかね。)それが朝食でしたよ。

シンケン・ゼンメルと言って、パン屋で買って食べていましたが、実際には、それはどういうわけか普通のsemmelでした。(schinken豚のハム)は何処にも入っていなかったのですが)そのsemmelをドイツ人(ミュンヒェンの)の皆はschinken semmelと言っていました。(何故かその理由は未だに分かりませんが・・・。)

昼は大学の食堂で、紅茶と、Schweinwurst(豚のソーセージ)にsauerkraut(キャベツの酢漬け)

夜は、下宿では自炊が出来ないので、大衆レストランの中でも一番安い食べ物として、Wienerwald(ウイーンの焼き鳥屋、日本では高級ドイツレストランになりますが・・・。)で、四分の一の鶏のbraten(あぶったもの)とSpezi(シュペッツィといって、コーラとレモネードを半々に割ったバイエルン独特の飲み方の飲み物)を注文する。

「バイエルン独特の飲み物を注文するなんて、おしゃれ・・・!」なんて思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはspeziの方が(ワインなんかの、高い飲み物と違って、飲み物としては)量的にも、値段的にも、これが一番安いからなのです。

 

当然gebratene(焼いた)鶏には、sauerkraut(ザウアークラウト、キャベツの酢漬け)が付いてくるのだが、それがドイツで食べる、普段の唯一の野菜だ。ほとんど野菜は食べない。ドイツでは野菜は取れないので、国が外国から輸入しているので価格は安定しているのだが、それでも、貧乏留学生には高価な食べ物である。音楽の留学生は普通お金持ちのお嬢様が多いので、食事に困る人はいないとは思うのだが・・、そこはそこ、勘当されて音楽を勉強している身では致し方ない。

 

愚痴はそれぐらいにして、兎に角、ドイツはビールが旨い!日本のものとは比べ物にならない。(日本でドイツの輸入ビールを飲んでも、防腐剤が入っているので全く味が壊れてしまっていて、全然別の味になってしまっていて、お話にならない。)

牛乳も当時の日本では、まだ成分無調整なんていうおしゃれな牛乳は売っていなくって、バターや加工乳を混ぜた、とても飲めたしろものではなかったのだが、ドイツでは、朝近所で取れたばかりの牛乳がそのまま出てくる。これが濃くって美味いんだな!ところが他の日本人は、牛乳が濃すぎて、下痢をして飲めないんだそうな!日本の加工乳の味に慣れてしまっているからなのだよ。

かわいそうに!

私の乳母は、山羊さんだったからね・・・!取れたての、山羊のオッパイもとても濃い。

 

私のドイツの生活では外食が殆どであったが、それは貧乏生活で、調理が出来るような広い部屋が借りれないと言うどころではなく、ベッドと机だけでいっぱいいっぱいの、誰一人として部屋に呼べないような、狭い一部屋だけの生活であったからだ。

 

「ドイツの思い出話」はさておいて、元の話に戻って、忙しい朝の時間の食事に対して、ドイツ流のkalte speisen(冷たい食事)を日本の食事に当て嵌めて考えて見ると、それはそれで、日本にも定番の朝食メニューがある。朝作る料理は一汁一菜で、後は作り置きの保存食で間に合わせる、という方法である。

温かいご飯に、味付けのり、豆腐の上に生姜をすって乗っけるか、あるいはカツオ節の削ったのをのせるか、納豆も味に飽きたら、たまにはちょっと趣向を変えて、玉ねぎをみじんに切ったものを薬味に入れたり、沢庵を微塵に切って入れても美味しい。スーパーで売っているイカそうめんを買って来て、さらに微塵に切って混ぜても乙なものだ。卵の黄身を少しだけ入れるというのもある。

そう言ったバリエーションの事を、ドイツ語でkleinigkeitクライニッヒカイト(小さな事、些細な事) と言う。同じmelodieが繰り返されるときに、最初はフォルテだったのが、繰り返しではピアノになったり、音が1個か2個少し変わっていたりする。そういった微妙な変化を指す単語である。音楽の指導の時によく使っている単語である。「そこを、そう弾いたら、1回目と同じになってしまうでしょう?」と言った風に・・・。

毎日同じ物でも、調味料を少し変える事によって、飽きが来ないように、小さな味の変化を味あうのだ。

 

今日は温かい白いご飯に、松浦漬け(クジラの軟骨の粕づけ)である。(缶詰で売っている)

江戸時代の日本三大珍味一つである。

佐賀の「がね漬け(がん漬けとも言う)」もおいしい。蟹(シオマネキじゃなかったかなぁ?)をすりつぶして、塩と唐辛子で漬け込むのです。子供の頃は祖母がよく作ってくれた。

市販のがね漬けと違って、祖母のがね漬けは、こってりして美味しかった。市販の物は少したれがさらさらとしていて薄い。

日持ちがしないので、今買うことはあまりないが、子供にはちょっと無理だとは思うが、大人の酒のつまみには最高である。

明太子なども当然kalte(カルテ)になる。のりのつくだ煮等等、いろいろ考えれば限がなく、いろいろあるよね。手間をかけないで、味の工夫をする、それがまた人生の楽しさなのだよ!

メインディッシュを、例えば鯵の開きか、鮭の切り身の塩焼きか、適当に買ってきた魚の甘炊き、煮付け等からその日その日の気分に合わせて一品と、後は味噌汁。白みそから、さつま汁、けんちん汁まである。白みそ、合わせ味噌、赤だしと変化させれば当然料理の具材もそれに合わせて替わってくる。その日その日の気分しだいだ。

 

つまり、結論的に言うと、温かいご飯とみそ汁、それに一品の焼き物か、煮物があれば、あとはkalte speisen(冷たい食事)でも,ずいぶん豪華な日本食になる、というお話でありました。

と言う事で、今日は(・・・も!)、仕事が忙しかったので、当然(・・!)そうなりました。

 

参考例:日本の朝食

ご飯、

お味噌汁

(白味噌、若しくは合わせ味噌まで・・・赤だしはこってりしているので、僕にとっては朝食には少し重たい。夜のメニューだと良いけれど。)

+暖かい一品(定番は鮭の切り身の塩焼き、鯵の開きは、寝起きが悪い人には少し重たいか?)

+kalte speisen

:味付け海苔(のりの佃煮)

:納豆(薬味無し、玉ねぎの微塵、沢庵の微塵、イカの微塵、等々)、或いは、山芋のすったもの等々、

:生卵(出汁巻卵等)、或いは、生卵が駄目な人はふりかけなどでも良い。

:漬物類(口直しなので、2,3種類をほんの少しずつの方が、目先が変わって良い。私はきゅうりの古漬けが大好きです。口がひん曲がりそうにすっぱくなった、漬かり過ぎた古漬けです。)

お後は、お好きにどうぞ!

江古田の一静庵にて

 

 

蛇足:

これは本当に蛇足であるが、毎週の日曜日は、殆どの日が午前中早くから、千葉や東京でのオケ練習のために、食事を作っている暇がない。当然kalteを作る暇すらないのだ。

と言う事で、千葉に車で移動する途中で、コンビニに寄って幕の内弁当などを買っていく。

しかし、家庭でどうしてもコンビニ弁当を食べなければならないときには、「後で、洗う手間が・・・!」等と言わないで、材料を小皿に分けて出してみると良い。驚くほど豪華な、食事になるよ!それに一品、インスタントでも良いから、お味噌汁を付けて食べることをお勧めします。それだけで、ずいぶん気分が変わりますよ。




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