J.S.Bach 無伴奏cello組曲 第四番 変ホ長調   allemande violaversion





Bachの無伴奏の校訂本は、数限りなく出版されています。

しかし、殆どの楽譜の校訂は、
「baroque楽器が、現代の楽器に比べて劣った楽器であり、Bachのslurはbowslurではなく、机上のslurに過ぎない。」という前提の元になされている。

baroque時代の、所謂、
「baroqueviolinは、色々な表現が出来ない・・未完成の楽器である・・」という前提に基づいており、あくまでも、現代のviolinの演奏法であるbowslurやarticulationを当てはめて校訂した楽譜である。
現代風なinterpretationに拠った解釈をとっているのである。

しかし、こんにち、(1970年代後半から1990年に掛けて)、baroque時代の楽器が復刻、修復されるようになるに従って、当時の楽器の演奏の正しい在り方が、少しずつ分かって来て、現代人のbaroqueの演奏のstyleが誤った認識に因るものである・・という事が分かって来るようになった。

そのキッカケを作ったのは、行き過ぎた改良(改悪)を続けて来たmodernCembaloの開発にある。
Cembaloという楽器が、19世紀から20世紀に掛けて、完全に廃れて人々から忘れ去られてしまったのは、Cembaloの音量の弱さや強弱が出来ない・・と言った機能的な理由によると、解釈されていた。
それでCembaloのactionをスプリングで機械的に引っかき、強い音量を出すmodernCembaloと呼ばれるCembaloが多くのメーカーによって作り出される事になった。
大手のCembalo工房は、Neupertやammrと呼ばれるCembalo工房などを始めとして、多くのCembalo工房がそういったmodernCembaloを作り上げて来た。
それらのCembaloは、Cembaloの一番の弱点とされる音量の点だけの改良で、自然actionではなく、Springによる機械的な音を出す事、16feetの重低音を加える事等々の、音量の点の改良であった。

しかし、Wanda Landowskaという名Cembalistが、Pleyel社との共同の開発で、所謂、LandowskaCembaloと呼ばれるモンスターチェンバロを作り上げて、音量のみならず、強弱や、色々な機能を持つ、monsterCembaloを作り上げたのだが、そのCembaloは、一般的なCembaloとして、世に認められる事はなかった。
1970年代からは、楽器博物館等に保存されているbaroqueのCembaloの楽器をrepairして当時の音を再現したり、或いは、その楽器の設計図に従って新しく作られた復刻楽器によって多くの演奏家達が、当時の楽器や音の再現をする事になって、それが1980年代に入ると、他の楽器(violinやcello)等も、昔のままの制作当時の音が再現されるようになってきて、当時のままの楽器(復刻楽器も含む)やbowで、当時の演奏法を再現したperiodの演奏会が、開催されるようになってきた。


また、多くの、失われてしまって、当時の文献上にのみ存在した、baroque特有の演奏法も、復刻された当時の楽器で演奏を再現する事によって、新たに知る事が出来るようになって来て、baroque時代の奏法を詳らかになって来た。
しかし、残念ながら、未だにperiod奏法による、古式豊かなBachの原典版は出版されていない。



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