他の版ではGisの伸ばしの音がない版もある。
C: Bの部分の構成
次のBの部分は非常に早い部分である。
バレリ-ナがつま先で立ってくるくると回転していくような曲である。
Bの部分もAの部分と同じように大きく16小節のStollenが2回繰り返されて出来ている。繰り返された16小節のStollenを「う」とすると、auftakt+33小節目から40小節までの前半部、と41小節目から48小節目までの、大きな「う`」、「う゛」という全く同じphraseから出来ている事がわかる。
また、「う」=c(4小節)+d(4小節)の二つのphraseで構成されていることが分かる。
cは1小節単位のMotivが4回繰り返され、dは前半2小節と後半2小節の細かいMotivに分かれる。
33小節目から、38小節目までは、点のdecrescendoで弱くしていくのであるが、39小節目と40小節目で一気にcrescendoをする。
one pointadvice
意外と45小節目から48小節目(61~64小節目)の指使いで引っかかってしまう子供が多い。
それは46小節目に出てくるgisの音のせいである。その音のために47小節目の半音階の指使いと混乱してしまうのである。私はそこで混乱している生徒に正しい指使いを指導するために、最初はgisの音を省いて練習させている。レ♮は1の指なので、そこまでの指使いは1-3-1の場合と1-2-3-1-3の2種類しかない。その2種類のいずれかを選択すれば、47小節目からの半音の指使いとは、混乱しないで弾けるようになる。
譜例:
Tempoの設定の説明
auftakt+33小節目からは、最初はゆっくり始めて徐々に早くしていく。
最初のStollen(8小節)が終わる39小節目から40小節目にかけてrit.をしてもとの開始したtempoに戻す。
41小節目から、又、全く同じように少しずつ早くしていく。
46小節目から48小節目にかけては、少しdecrescendoをしながら遅くしていく。
Bの前半部分が終わりだからである。
強弱の注意
構造式は極めて単純にb(8小節)+b` (8小節)が2回繰り返されるだけである。
しかし、このfigurationは1回目はmezzoforteであるのに対して、2回目の49小節目からはpianissimoであることを忘れている人が非常に多い。
手首の抜きと回転
61小節目から64小節目までは、fade-out(フェードアウト)するように演奏しなければならない。特に64小節目の手首の抜きはfade-out(フェードアウト)を表すために、とても大切な奏法である。
手首の話をすると、この右手を演奏するには、手首の円の回転で演奏しなければならない。
手首の柔軟性(円運動)がこのfigurationの命である。
Sequenzをより複雑に聞こえるようにするkleinigkeit
蛇足ではあるが、Chopinは左手のBassführung(ベースのmelodie)は、全く同じSequenzを4回繰り返すだけという実にシンプルな作曲法を使用した。
勿論、そのままではkinderei(幼稚っぽい!)である。
しかし、1回目33小節の和音が2BhからÁVhへの進行なのに対して、2回目45小節目の和音はN6(ナポリの 6)から、°mへの和音になっているので、ベースの動きは全く同じSequenz進行であるのだが、それが全く別の動きに感じてしまい、子供達にとっては暗譜を混乱させたりする。
全く同じSequenzとしての動きが、その単純なちょっとした和音の変化によって、全く別のものに聞こえてくる、つまり 2Bhの和音がN6の和音に変化するという、所謂、kleinigkeit(小さな変化)が、楽譜上では、Bassführungの極めて単純な動きを、複雑なものと思わせている。
譜例:1回目37小節目と2回目の46小節目の和音のkleinigkeitな変化に注意をする
[中間部]
65小節目からの変二長調の中間部も小節数は他のStollenと同じく32小節単位である。
全体の構成として、一見すると
A(32小節)B(32小節)C(32小節)B(32小節)A(32小節)B(32小節)で、前半部がA+Bの64小節、後半部はB+A+Bで96小節で、はさまれた中間部のゆっくりした部分が小節数が少なすぎて、曲全体のバランスが悪いように思われるが、実際にはA、Bいずれのpassageも、非常に早いfigurationで演奏されるので、一見短く見える、Cの32小節でも時間的なバランスはとてもよい。
下降しながら階段を上がって行くような、点のmelodieのcrescendoに対して、ベースの和音も半音階の上行進行をして、徐々に気分をsteigerung(高揚)させていく。
このpassageを覚えにくくしているのは、連符の絡み合わせ(拍にどのように絡んでいくか?)という事と、複雑な多声部書法で書かれているからである。
というわけで、参考までに、拍で割り切れないmelodieを本来のrhythmで書き表し、多声部を分けて記譜した譜面を作って見た。
まず、この譜面で正しく理解出来、演奏出来たら、Chopinが書いた通りのmelodieのmelisma(メリスマ=装飾的旋律書法)を勉強すると良い。
事実上はこれで、譜読み(練習)は終わりである。後は全く同じ繰り返しにしか過ぎないからである。
くどいようではあるが、Cの部分はまじめに32小節練習したとしても、Aは23小節、Bにいたっては12小節を練習するので充分である。都合、67小節練習すれば、この曲は完全に練習した事になる。
ハッ、ハッ、ハッ!
譜例: