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それに対して演奏者の入りは、勿論、拍頭の前で入る場合と、拍頭に合わせて入る場合と、ぶつかって跳ね上がったpointで合わせる場合があります。この指揮法を業界用語では「しゃくり」といいます。「しゃくりあげた所であわせる」からです。この「しゃくり」で合わせるのは、そんなに珍しい物ではなく、よく見受ける事が出来ます。
通常の死点を作る指揮でも、この3っつのpointの使い分けがあります。

それに対して、柔らかな音楽の表現の場合には、拍頭(死点)を作らない事が多いので、合わせのeinsatz(指示)は寧ろ、melodieの変わり目とかの所に指示をしなければなりません。
その場合には指揮棒だけでは当然表現できない場所も数多く出来てしまいます。だからオケのmemberは指揮者の体のモーショを盗んで、自分が入るタイミングを図ります。弦楽器に堪能な指揮者の場合にはそれこそ、弓の動き(弓を操作する体の動き)を体で表現することもあります。私の場合にも、中級クラスや初級クラスでは、かなりオーバーな体の揺らしをして、弓量が小さく縮こまらないように、子供達にアピールする事もあります。言い方を変えると、柔らかい表現でも、体の動きは結構重労働なのだよね。

その割りに痩せないんだな!不思議だ!

 

弦楽器に限らず管楽器ですら、音の立ち上がりは微妙です。
弓や息の出始めでまだ音になっていない場所でpointを取るか、それをノイズとして、音が立ち上がった所をpointにするかは、一人一人感覚が違います。
ですから、ぴったりと立ち上がりが揃うオケは世界的にも稀なのです。そして更にそれが指揮者の感覚とも合わなければなりません。

とはいっても、ここまで行くとベルリンフィルかどっかの世界一級のオケの話になりますから、一般のプロのオケでは関係のない話かな。

しかし、面白い事に、同じ、世界一級のorchestraとは言っても、ウイーン、フィルは、立ち上がりや音のタイミングにはまるで無頓着です。


練習風景なのですが、超怖いベームおじさんが指揮をしているMozartなのに、弦のpizzicatoがバラバラと入ってくる。

「え〜!?それはないだろう!」でも、ベームおじさん、何も注意しないんだよね。「そんな事、知った事ではない!」って事か??

それはウイーン人の気質かもしれないので、それこそ、私の知った事ではないっちゃ!

 



[1] 感情的に体を揺らす人は、上半身が揺れている。この場合にはその揺れが直接音に影響して、不安定な音になってしまう。「正しい揺らし」は、お臍から上は水を入れたお皿の上に乗っているように地軸に対して垂直に安定していなければならないのです。弓や楽器の支えが常に地軸に対して垂直であれば、音は芯のあるしっかりとした音になります。揺らした方が逆に音が安定するのです。正しい揺らしで下半身を揺らす場合には、足の位置は肩幅なので、揺れている範囲は肩幅の範囲で揺れているに過ぎません。オーバーに揺れているように見えても、実際にはあまり揺らしてはいないのです。腰が動くので、スカートが揺れるのでオーバーに揺れているように見えるのです。、間違えた揺らしの場合には腰が動かないので、相当に揺らさないと、揺れているようには見えないのです。

[2] 指揮者の指揮するタクトのpointや、楽器の弾き始めの「音の立ち上がり」というのは、微妙に違います。だから、実は指揮に合わせるという事は、「指揮をよく見て、指揮棒が下のpointにあたったら弾けばよいのだろう!?」という風に簡単なものではありません。という事で、脚注では説明できないので、このお話の最後にPageを増やして少しだけ触れておきます。