花園教室の私たちが「黒ピアノの部屋」と読んでる部屋には古びた傷だらけのアップライトピアノがあります。子供達が「いやだー!このボロピアノ鍵盤も黄色く薄汚れているよ。」
しかしこの古ぼけたピアノが芦塚先生を音楽大学に入学させて、しかもミュンヘンの国立音楽大学まで連れていってくれた最愛のピアノなのです。それだけではなく、芦塚音楽研究所で使用している無数の楽器の中で一番高価な楽器でもあります。
古ぼけたピアノの中は、レンナーのハンマーとレスローの弦が張ってあって、これは音楽家たちのあこがれのピアノであるスタインウェイのアクションと全く同じものです。子供達に評判の悪い「薄汚れた黄色の鍵盤」とはお分かりのように今日では使用することが禁止されてしまった象牙の鍵盤です。
教室で子供たちが使っているため、傷だらけになってしまった黒いニスは、何と宇和島の七回塗りの塗装であります。この塗装だけでも相当高価なものです。弦長はグランドピアノ並みに長く、そのために高さは通常の大きなアップライトピアノの高さとほぼ同じですが、横幅は鍵盤に15センチほどプラスして長くしてあります。そのために重さはグランドピアノと同じぐらいの450キロにも達します。(通常のアップライトピアノは重たいものでも250キロぐらいしかありません。)
このピアノは、まだピアノが非常に高価で、庶民には手が届かず街に数台しかピアノがなかったころ、畑1反とほぼ同額の値段で特別注文で作らせたハンドメイドのピアノです。
(とか子供たちに話すと「おお、すごい!」とか言って尊敬の念でピアノを見つめます。はっ、はっ・・・!)