Metronom
homepageのトラブルで文章が半分になって、昔々の文章になってしまいました。本来は76Pageの膨大な論文だったのですが、半分に減ってしまいました。でも、未だ残っているだけマシです。

前書き

1章  メトロノームの歴史

Metronomはメルェルがつくったのではない

蛇足ですが、メトロノームの歴史に対しての疑問

MälzelMetronom

BeethovenMälzelの不思議な関係

作曲家の書いたメトロノームテンポの信頼性

 

2章  メトロノームの選び方 

音色と音量

メトロノームの嫌いな子供達

メトロノームは正確にrhythmを刻んでいるのかな?

電子式メトロノーム

 

 

3章  メトロノームの使い方

基礎編

不遇なメトロノームが指導者達からその価値を認めてもらえない理由

 


レスナーへのアドバイス

前書き

初心者へのメトロノームの導入

メトロノームの早期教育

指導のための段階(step)の設定

メトロノームのテンポが見つけられない潜在的な理由

蛇足:指導者が生徒を(自分のレッスンを)客観的に見れるようにするための訓練法
初歩の段階では拍子の音を入れてはいけない

メトロノームのbeatの設定は拍子を設定するものではない

音の粒を出すためのメトロノーム練習(ビッコの矯正のメトロノーム)

拍の読み替えの練習

弾けてはいるのだが完成度のバランスが悪い

初心者に良く見受けられる、弾く事に一生懸命で、メトロノームの音が聞こえない場合の指導法

メトロノーム練習は極端に遅くして練習をしても必ずしも易しくなるわけではない

弾けないからと言って、闇雲に遅く練習しても意味はない

メトロノームは抜き出し練習の場所だけを練習する事

 

応用編

テンポの設定

その曲がその曲であるためのテンポ

一つの曲のなかでの複数のメトロノームテンポの設定

臨界テンポのお話

練習テンポのみつけ方

1小節を1拍として捉える曲

最後の小節に付け足された空白の小節の意味

拍子の弾き分け

メトロノームを使用した練習法の例

奇数のbeat

等分割されないrhythm

phraseによる、等分割されない拍取り

変化する拍の例

rubatoの例

Hemiola(ヘミオラ)

Verschobene Takt(推移節奏)

 

あとがき


前書き

ピアノやヴァイオリンの先生等の音楽を教える先生でメトロノームを使用したことがない、持っていてもほこりをかぶったままで、一度も使ったことがない、それどころか持っていない先生が意外と多いようですが、それは「メトロノームをどうやって使ってよいのか分からない」或いは「メトロノームを子供に使ってみたが、実際にメトロノームに合わせることが出来なくって、子供が嫌がった。指導していて挫折してしまった。」 という理由があるようです。

メトロノームに音楽を合わせて弾く事は意外と難しい。にもかかわらず、現実的には「メトロノームの使い方」、或いは「利用の仕方」という本はまだ一冊も出版されていません。

音楽大学などの先生は、「メトロノームを使用するのは初心者の間だけで、メトロノームは音楽性をだめにしてしまうから、使用してはいけない。」などと真顔で言う先生がいるから困ったものです。日本の音楽大学のlevelは、本当に困ったものです。テレビを見ていたら、某国立音楽大学のヴァイオリンの先生が、「ヴァイオリンは腰をねじって構えるから、腰痛になるのよね!!」なんて、真顔でおっしゃるので、ついつい 「それはあなたの構え方が悪いからでしょう??」といいたくなります。

ヴァイオリンを練習していて腰痛になるようなら、それはプロの厳しい練習には耐えられないと思いますよ。録音の時などは、丸1日缶詰になって、演奏しなければならないことなど、ざらなのですからね。(だって、オペラや、ミサ曲を本番でたった1曲、演奏会で弾くだけで、4時間は弾きっぱなしなのですからね。それで腰痛になるようなら、大学の先生は出来ても演奏家は無理!!

まず、そこのところから、考え方、意識を直していかなければね。

メトロノームの話でも、音楽のプロの世界では、打ち合わせは全てメトロノームを使用します。「早く!」とか「ゆっくりと!」なんて感情表現や情緒表現はプロの世界にはないのだよね。

そんなことをやっていたら、時間が足りなくなるでしょう??

合わせてから、テンポやタイミングを取るのではなく、あらかじめメトロノームでお互いに揺らしのtempoを確認して、練習を済ませてから、合わせるのですよ。

私の友人のオルガニスト(女性だから、本当はオルガニスティンですけれどね)が、目白のカテドラルでパイプ・オルガンの伴奏で日本人の女性歌手の人が歌う事になって、その練習の時です。曲のクライマックスの部分で、カデンツのように自由に歌うpassageが出てくるのですが、そのpassageを彼女は「私の歌を聞いてちゃんと合わせてください。」とオルガニストに噛み付いてきました。彼女は「オルガンは、私がキーを押して、0.5秒後に音が出るので、あなたが、こういう風に歌いたい!と言って聞かせてくれると、私がそれに合うように伴奏をしますから。」 と、とても親切に丁寧に説明をしたのですが、「だってカデンツはそのときの気分だから、そう歌えって言われても・・・!」と頑として、納得しませんでした。さて、どんなコンサートになったことやら??

オルガニストの彼女は 「日本ではこういう演奏家が多いのよね。」と諦め顔で笑っていました。

つまり、音楽を正確に揺らすためには、崩す前の基本のtempoが無ければ、正確には揺らせないのです。

あてずっぽうに感情的に揺らす事はプロの技ではないのです。感情的に揺らすのであれば、毎回の演奏会でも違った演奏になってしまうのであろうし、毎回揺らしが違うという事はそれこそ演奏の水準が毎回違ってしまうという事です。

以前、マルタ・アルゲリッチという女流演奏家の演奏がそうでした。

気分が乗ると、素晴らしい演奏をするのですが、気分が乗らないと、2流の演奏どころではない、それどころか、演奏会そのものすらすっぽかすのです。それをフアンは「芸術家だから・・!」と許容してしまう。

そういったアルゲリッチの演奏スタイルが許せない私は、せっかく人から貰った彼女の演奏会のチケットを人にあげてしまいましたがね。

もっとも、歳を取ってからは、マルタ・アルゲリッチも室内楽を専門に勉強しなおすようになりました。室内楽ではそういった感情的な演奏で演奏するのは不可能ですからね。

 

音楽教室や音楽大学の先生に子供を学ばせている親御さんには、先生がメトロノームを使用すると、「非音楽的だ!」と言って、怒り出す親御さんがいます。それは、そういった先生達の話を真に受けてしまっているからなのです。

メトロノームを使用すると、まずそういった父兄に対して、メトロノームに対する誤解を解く事から始めなければなりません。しかし、誤解を解くためには、結構専門的な話をしなければなりません。

それも先生達にとっては、結構な負担となります。ついつい、めんどくさくなって、メトロノームを使用しないままに、子供達にレッスンを始めてしまう。普通の先生達にとっては、教えている子供達がrhythm音痴になろうと知った事ではないからね。

周りの先生達もそうだから、正確に弾いてくる生徒はいないから、どうせ分かりはしない。

 

メトロノームの話に戻って、一般の人達にとっては、メトロノームはただ単にテンポが揺れる時にそのゆれを矯正するという意味でしか考えられていないようで、それがメトロノームを誤解される元になっています。

勿論、プロ的なMetronomの使用法は、曲の中の微妙なtempoの設定や、揺らし、変則的なrhythmを確実にする事、等々の確定に用います。

メトロノーム自体は単なる動具にしかすぎないので、そのメトロノームの多様な役割と本当の価値を引き出すには、それを使いこなすためのハウツー、所謂、「相当な技術」が必要なのです。

どういう風にメトロノームを使ったら上手に曲を仕上げる事が出来るようになるのか、そして、メトロノームを最大限に使いこなしていけるのか、そういったthemaで、私の経験に基づいてメトロノームの使用する時の方法論を説明していきたいと思います

 

ちなみに心理学の教科書等を紐解くと、「絶対音は、幼少期にしか身につかない。拍子感、rhythm感は原則として、先天的なものであって、絶対音よりも身につける事は難しい。」と書いてありました。

しかし、それは世間一般の音楽教育においては、メトロノームを軽視しするあまり、「絶対テンポ」(今のtempoがメトロノーム幾つであるか?)という概念を、生徒達に指導することがないからなのです。ちなみに、私は脈を2,3秒計るだけで、脈が分かります。脈拍とMetronomのテンポは同じものだからです。(つまり、1分間に幾つ拍動するか、ということなのだからです。)

私のメトードでは、小学生の時迄に教室に入会した生徒は、殆どの生徒が絶対音を身につける事が出来るようですし、拍子感、rhythm感はもっと遅く、中高生になっても充分に身につけることが出来ます。

勿論、rhythmの訓練は私の特別なメトードを使用しますし、その基準として、生徒達は今演奏しているMetronomのテンポを言い当てることが出来るようになります。

メトロノームは道具に過ぎません。道具は使用する人の力量でその価値が決まります。

闇雲な努力だけでは、目標を達成する事は困難です。

 

 

私の書いた箴言集があります。

「ヨージーの法則」というタイトルの箴言集です。

その本のプロフェッショナルについての項では、

「普通のことをやっていたら、普通にしかならない。」

「プロになるには、1%の努力と、99%のプロの考え方をすること」

と私は書いています。

 

プロになるためには、プロになるためのカリキュラムで、プロになるための練習をしなければならないのです。決して、普通に音楽大学に進学するような勉強をしても、その中でプロになれる人はいません。仮にその人が音楽大学に在籍していたとしても、普通にレッスンを受けていたわけではありません。やはり、プロになるための特別な練習をしていたわけです。

 

但し、プロというのは「何を持ってプロというのか?」という定義の問題があります。

演奏会を立派なホールで開いたからと言って、そういった人の事をプロというわけではありません。殆どの自称演奏家の人達が自腹を切って演奏会を開いているからなのです。

私がプロという人は音楽で飯を食っている人達のことです。

しかも、クラシックで・・・!

クラシックで・・というのは、popularやジャズはまたジャンルが違うからです。

そこはそこで、またプロという人種がいます。しかし、どこまでがプロで、どこからがアマチュアかは、私の領域ではありませんので、このお話の中ではパスします。

ジャンルが違えば考え方も、勉強法も全て違います。私の所に間違えてやって来たそちらのジャンルに進みたい学生は全てそちらの先生達にまわしてしまいます。

面倒見切れないからね。

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1章 メトロノームの歴史

 

写真:MälzelMetronom

Metronomはメルツェルが作ったのではない。]

音楽を演奏する上で、テンポをより客観的に表すための試みは、メトロノームの発明よりも随分前からなされていました。

(随分前・・というのは、音楽が人に伝達されるようになった頃からという意味で、有史以前からという意味です。)

メトロノームが発明される以前の古い時代には、一般的にはメトロノームの代わりとしては、人の心臓の拍動,つまり脈拍を基準にして決めていたと考えられています。

健康な成人の安静時の脈拍は1分間に約6080回で、各個人によって安定しているので、基準となったわけです。しかし、人間の脈拍はその時の感情や体調によっても左右されるし、ましてや男女、或いは個人によっても変わります。甚だ、不確定な方法であったといえます。当然、より正確なtempoの指示が求められたわけです。

正確なtempoという事は、言い換えると時間を正しく測定するという事に繋がっていきます。

そのもっと正確な物理的な「正確な時間の測定」という事を研究した人が16世紀末に現れます。かの有名なガリレオ・ガリレイです。ガリレイは「振り子の等時性と振り子の周期の2乗がひもの長さに比例する」という有名な法則を発見しました。これは音楽の分野とは別の物理学の世界の発見でしたが、「振り子の等時性の発見」は、やがてメトロノームの登場に繋がって行く基となる画期的な発見でした。

音楽のテンポを指示するものとして振り子の原理の可能性をはっきりと認識した最初の人はトマス・メイスというイギリス人で、彼は鉛玉状のものを糸につるすことで一定の等時性を保てるということを1676年にロンドンで発表しています。またフランス人のエティエンヌ・ルーリエは、これを改良し、糸を長くしたり短くしたりすることで振り子の異なった運動速度を得ることができるということを1696年に発表しています。

しかし、こうした試みはあまり人々の注目をひくことはできなかったようです。

多くの人によって種々の改良がなされたのですが、いずれも実用性に欠けていたようです。

そのネックになっていたのが、振り子の糸の長さでありました。

たとえば1秒を示すのに1メートル以上の紐を使わなければならなかった、それが日常生活の中での実用性を阻んでいたからです。

というのが、一般的(教科書的)な通説です。

ハッ、ハッ、ハッ!

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[蛇足ですが、メトロノームの歴史に対しての疑問]
しかし、よくよく調べて見ると、この説には、はなはだ疑問があります。

先程も述べたように、メトロノームの原理は時計の原理であり、やはり、必然的に時計の歴史とかぶってきます。

という事で、時計の歴史を調べて見ると、その歴史はとんでもない昔まで遡ります。メトロノームのぜんまい式の前に、メトロノームの原理の一つになっている脱進機の発明ですが、脱進機を持つ時計でまだぜんまいがなかった頃の時計は、ぜんまいの代わりに錘で動いていました。そのタイプの時計は8世紀の中国まで遡る事が出来ます。

それにぜんまい式の懐中時計も16世紀までに遡る事が出来ます。

時計の歴史を紐解くと、一般的な学者先生達の通説である振り子の原理の発見の歴史と、職人の世界の時計の歴史は全く咬み合わないのです。

つまり学問としての振り子の歴史と、産業の発達の歴史とは年代に大幅なずれが生じます。

蛇足ですが、私がMunchenに留学していた頃、お店でとても古い昔の時計を復刻した柱時計が売ってありました。歯車も木作りで5,6枚しかなく、分針が無く、時針の一本だけというのがなんともおしゃれで、錘がそこらへんのごつごつした石を紐で縛った超原始的な時計で、欲しくてたまらなかったのですが、当時、1万円か2万円しかしないその柱時計が、当時は買えなかったのよね。貧しくて・・・・。 今でも、時々、思い出しては、貧困時代が懐かしくなって、その時計をネットで売っていないか調べていますが、そういった原始的な時計は売っていないのよね。(木造のからくり時計の性能の優れた時計は、今でもドイツ製やスイス製で売っているのだけどね。) あの時、お金があったら買って日本にもって帰ってきたのになぁ・・・・!!

 

こういった学者先生達の誤りを調べていく事はとても楽しい事なのですが、(人の不幸は蜜の味・・・・!) 此処ではあくまで、メトロノームの歴史のお話ですから、こういった矛盾点には立ち入らない事にします。それだけで、一大論文になってしまいますからね。興味がある人は「時計の歴史」というthemaでいろいろな文献を調べて見てください。とても、面白いですよ。

 

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MälzelMetronom
という事で、話を元に戻して、現在の振子型のメトロノームの原型は、19世紀の初頭になって初めて現れます。

Metronomは一般的にはJohann Nepomuk Mälzel(ヨハン・ネボムック・メルツェル)(1772年レーゲンスブルグでオルガン製作者の息子として産まれる~1838年)によって制作されたとされています。しかし、それは正しくはありません。

Mälzel(メルツェル)はMetronomの特許を取っただけで、正しくはアムステルダムで活躍したドイツ人のディートリッヒ・ウィンケルが、1812年に、ほぼ現在のメトロノームと同形の機械を発明しました。今使用されているメトロノームと殆ど変わりはありません。

「メトロノーム」という名前は「メトロン」(拍の意)とノモス(規則の意)という2つのギリシャ語から、メルツェルが考案した造語です。

それ以前のテンポを計る機械は、クロノメーターと呼ばれていて、メトロノームとは構造が違っていました。それは、歯車式のテコの仕掛けで木炭をたたくといったものでした。

「メトロノーム」は1816年にMälzelが特許登録をしたときに付けた名前です。

速度表示のMM.」=60などいう場合のMM.は、メルツェルのメトロノームという意味です。

1815年にアムステルダムのウインケルの元を訪れたヨハン・ネポムック・メルツェル(17721838)がこれを模倣し、目盛りを加えるなどのいくらかの手を加え、1816年にいち早くパリで特許をとって、あたかも自分が開発したかのようにして、量産を開始したのです。ですから、特許をとったのはメルツェルですが、実際に機械を作った人はウィンケルであったと言えます。

 

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BeethovenMälzelの不思議な関係]

メルツェルは、ベートーベンの伝記には省くことのできないエピソードをもっている人です。

彼は、耳の聞こえなくなったベートーベンに補聴器などを発明しています。

そのエビソートの一つは、ベートーベンが一時ウィーンを去るということで、送別の宴が開かれました。

 

例:An Mälzel

ベートーベンはこのとき、ふざけてメルツェルとメトロノームをうたったカノンを作曲しました。それがすなわち「クックックッ・カノン」で、後になってそのまま第8シンフォニーの第二楽章、アレグレット・スケルツアンドの主題として用いられました。しかし、これについては、セーヤーも、ノッテボームも、1812年にはまだメトロノームの語を使っていなかった事実を指摘して、これはベートーベンが1817年、一時仲違いをしていたメルツェルと和解したときに、この歌詞をつけて歌ったものだろうという見解をとっています。

この仲違いの原因も、メルツェルの発明が始まりでした。

メルツェルは、パンハルモニコンという機会じかけの楽器を発明しました。これは、トランペット、フルート、オーボエ、太鼓、トライアングルなど、軍隊用の楽器を全部取り入れて、機会によって自動的に演奏される極めて精巧なものでありました。

ベートーベンは、このパンハルモニコンの為に、戦争シンフォニーという曲を作曲しました。

お互いの金銭の貸し借りから、この曲の所有権について争いが起こり、ベートーベンが訴訟を起こす迄に至ってしまったのです。

 

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[作曲家の書いたメトロノームテンポの信頼性]

ベートーベンはメトロノームのことを大変高く評価していました。ベートーベンが耳が聞こえなくなり、「いかに楽譜を正確に書くか」と努力していたときには、楽譜にメトロノーム表示を書いていました。

ところがこれは逆にメトロノーム自身の評価を下げるための一つの主張にもなってしまったのです。

それはBeethovenが楽譜に書いたMetronomtempoは演奏不能のtempoであったからです。

一般的には「その当時のBeethovenは全く耳が聞こえなくなっていて、そのためにMetronomtempoも、頑の中でだけで考えられたtempoであって、実際に音として体で聞き取った音楽ではないから」 とされています。

でも、私達も楽譜読んで調べる時や、checkする時には、実際の音には頼らず目と頭の中だけで音楽を聞いていきます。

しかし、だからと言って音楽が実際の演奏よりも早くなる事は絶対にありません。

もしそうだったら、指揮なんか出来ない事になってしまいますからね。

ですから、BeethovenMetronomtempoの指定が早かったのは、耳が聞こえなくなった性であるとは思えません。

近現代の作曲家であり、耳はちゃんと聞こえていたはずのバルトークのつけたMetronom tempoも、早すぎる場合が多いのですが、それはそんな昔の話ではないので、資料も充分に残っていて、その原因ははっきりと分かっています。

それはBartókが使用していたMetronomの精度が正しくなかったからなのです。

(なんと!!ハッ、ハッ、ハッ!)

 

ましてやBartókよりも100年も150年も前のBeethovenの時代のMetronomの黎明期の機械的な精度はおして知るべしでしょう。

では、どうして、そういった疑問がこれまで出なかったのでしょうか?

それは、繰り返し述べているようにMetronomは振り子の振幅の速度で測るので、物理的に極めて正確であるという風に、科学的なものは絶対に正しいと思い込んでいる人が多いからなのです。

ですから、単なる機械にしか過ぎなかったBeethovenの所有しているMetronomcheckして、もう一度正確なtempoを調べなおしてみようという人がいなかったのです。

しかし繰り返し言うように、実はMetronomというものは単なる機械に過ぎないので、一般の人達が思っているほど正確なものではないのです。

(そのことについては、次章に詳しく述べる事にします。)

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2章メトロノームの選び方

音色と音量

[メトロノームの嫌いな子供達]
レッスンでPianoを習い始めた子供達にメトロノームを使用させようとすると、メトロノームの使用を嫌がる生徒が結構多くいます。

私もまだ中、高生であった頃には、メトロノーム練習はとても嫌いでした。一応やってはいましたがね。

しかし、ドイツに留学してからは、メトロノーム練習は、不思議な事に、ちっとも嫌でもなかったし、苦にもなりませんでした。

ですから、私が日本に帰ってから、いろいろな先生達の教室の生徒のレッスンのcheckを頼まれるようになった頃、私がメトロノーム練習を宿題にしても、ちっともメトロノーム練習をやってこない、メトロノーム練習が嫌いな生徒に質問して見ました。

「君はどうしてメトロノームの練習が嫌いなの?」

「メトロノームの音が嫌いだから!」

「そうなの?じゃぁ、君んちのメトロノームを持ってきてみてよ!」

そのメトロノームは日本製の大手のメーカー品でした。

鳴らしてみると、確かに、音が頭にキンキン来る!

国産(当時)のプラスチック製のメトロノームは、カ・チ・コ・チ・カ・チ・コ・チ・と鳴らすと、その鋭いノイズの音が頭にギンギン響いて、ヒステリックな感じさえしてきます。

ためしに、同じメーカーの一番高価な大型の木製のメトロノームでも、試して見ました。

木製であるにもかかわらず、やはり、カ・チ・コ・チ・と嫌なキンキンした音やノイズが頭にギンギン響いてきます。

私はその生徒に「これじゃぁ、メトロノーム練習をしたくなるのも、うなづけるよね!」と言って、私が使用しているメーカーの(西ドイツ製のWittner社製の)メトロノームを親に買ってもらうように言いました。(というか、親に直接ですが・・。) 当然、その生徒は、それからはメトロノーム練習を嫌がらなくなりましたよ。

つまり、子供たちがメトロノーム練習を嫌がる最大の理由は、「日本製のメトロノームの音のノイズが感にさわって、聞くに堪えなかった。」という事だけの話だったのです。

 

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[メトロノームは正確にrhythmを刻んでいるのかな?]

写真(音は少し小さいが、携帯に便利なメトロノーム:Wittner社製)

 

メトロノームを専門に売る店の人達でも、(日本にはメトロノームの専門店はないようですが)ぜんまい式のメトロノームは時計のふりこ式と同じ機能なのだから、非常に正確だと思っている人達が以外に多いようです。

でも実際にはメトロノームを買うときには、そのメトロノームの精度はあまり信用してはいけないのです。

ぜんまいの力を利用して動いているわけなのだから、どうしても往きと帰りの振幅の幅がずれるのは当たり前だからなのです。

 

もしも、メトロノームに精度だけを求めるのでしたら、現在発売されている電子式のMetronomはぜんまい式のメトロノームに比べて、比較の対象にはならないほど正確です。つまり機械式の(ぜんまい式の)Metronomに、精度はそれほど期待してはいけないのです。

 

勿論、私がドイツに留学していた時代には、まだそういった精巧な電子メトロノームはまだ作られていなかったし、この「メトロノームについて」のお話が書き始められた頃も、まだクオーツ発振のMetronomは作られていませんでした。

 

 

[蛇足]

というわけで、このお話の中に出てくるクオーツ式のMetronomのお話は、今から20年、30年前に書いたワープロで立ち上げた文章を、この1,2年の間にOCRして、(パソコンに読み込んで)pc用に変換させた文章に、そのOCRの作業の過程で、新たに書き加えたものであって、ワープロ時代の文章には入っていません。

当時は電子メトロノームはまだ発売されていなかったからです。

 

当時、ぜんまい式のメトロノームを専門に扱っているWittnerの代理店のような楽器店ですら、ぜんまい式のメトロノームの不正確さを理解している人はいませんでした。

 

私がドイツに留学していた頃、メトロノームを買うために、私がすんでいる村の近くのメトロノームの代理店を訪れました。私が欲しかった型版のメトロノームをそこのお店にあるだけを全て(20台以上ですが)出させてcheckをしました。

お店の人は、最初の間は「メトロノームは物理的な動きなので、どのMetronomも正確で同じですよ。」と文句を言っていたのですが、まず、そのメトロノームのメモリにある一番遅いMetronom tempoで往きと帰りのbeatのずれを量りました。(本来は、ずれのcheckには腕時計の音の回数を利用します。これは昔の調律師がPianoの音を完全に音を合わせた後に、音を平均律にずらして調律するために、うなりの数を正確に合わせるための方法です。)

勿論、その前に、水準器を使って、Metronomを置く台の水平を取っておかなければなりません。台が斜めになっていると、正確な振幅は測れないからです。

という事に注意を払って、正確に往きの数と、帰りの振幅の数を数えると、これが違うんだな!困った事に!!

実際に私がお店でcheckした時には、わざわざ腕時計のかすかな音でcheckをするまでもなく、見ているだけでもそのお店のメトロノームの半数以上がボツ(却下)になったのだよ。

 

Wittnerの店員のおじさんは真っ青になりました。「エ~ッ、そんなに不正確なのか!?」

水準器を手に取って、台が斜めになっていないか、確認をしながら、「20年以上この店で働いているけれど、一台一台が、こんなにずれているなんて、初めて知ったよ!」と驚いていました。

 

しかし、私の厳しいcheckはまだまだ続きます。

次には、Metronomtempo60にセットして、正確に時計の秒針に合わせてMetronomをスタートさせました。

本当は1分間(60回)メトロノームの動かして、そのズレをcheckしようと思ったのですが、殆どのMetronom20秒から30秒経たない内に、秒針とのズレが生じてきました。

殆どの機種がそれでボツになったのですよ。

私のテストの中で、30秒以上経っても、メトロノームの振れが狂わなかった、(ずれなかった)唯一生き残った貴重な一台のMetronomが、それ以降の私のドイツ留学中のピアノ練習の伴侶になった最愛のMetronomです。(写真参照)

プラスチック製なのですが、音はとてもきれいな音がして、鳴らしながらPianoを演奏しても、その音が感にさわる事はありません。

 

写真:Wittner社製のMetronom(私がドイツ留学時代に愛用していた携帯用のMetronom

 

殆どの人達が「メトロノームは時計と同じで非常に正確なtempoを測っている。」と思い込んでいて、実際には、殆どのメトロノームが往きと帰りではタイミングが微妙にずれている、と言う事を知っている人は(売る側も買う側も)皆無だと言えます。

しかも、「同じメーカーの、同じ種類の製品」であったとしても、機会的に微妙に違っていて、当たり外れがあるのですが、それは機械の特性上致し方のないことだと思います。

しかし、こういったメトロノームの選び方(買い方)が出来たのは、私が西ドイツに留学していたからで、日本では同じWittner社の製品を20台、30台も置いてある店は何処にもないと思います。

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[電子式メトロノーム]

勿論、メトロノームの精度を求めるのであれば、現在は日本製の電気のメトロノームが沢山つくられていて、正確さでは機械式とは比べ物にならない程、それは正確です。

しかし、メトロノームを制作する人達がそのメトロノームの音を、どうしてぜんまいじかけのカチコチのいやな音に似せてしまうのかが私には理解出来ません。

もっと柔らかい音で聞き取りやすい音ででも良いのではないでしょうかと思いますがね。

もう一つは、電気式メトロノームの音量はぜんまい式に比べて小さいので、アンサンブルなどで使用するには聞き取りにくいのです。

ヴォリューム調整で音量を幾らでも大きくする事が出来るのだから、音量の幅をぜんまい式のメトロノームより、小さな音から大きな音まで出せるようにすれば、アンサンブルや学校のブラスアンサンブルなどにも使用出来て良いと思いますが、未だにそのようなメトロノームは発売されていないようです。(学校のブラスバンド専用の旧型のハーモニートレーナーは音量が非常に大きな音量まで出せたのですが、新しいハーモニートレーナーは音量が小さすぎて使い物になりません。20万近くする楽器なのだから、わざわざアンプに接続して音量を上げるのではなく、楽器本体の能力で、そういった音量的な許容範囲も欲しいところです。)

 

写真:日本製の電気のMetronom

このハンディータイプのMetronomは、弦楽器のチューニングのAの音が出せることと、簡単な3;2などのrhythmのトレーニングが出来る事や、何よりも、Metronomtempoが二つ同時にセット出来て瞬時に切り替えが出来るので、一つの曲の中で第一tempoと第二tempoを非常に多く指定する私のレッスンでは、とても便利なのでいつも愛用していて、生徒達にも進めていたのですが、残念な事に日本製の他の製品同様に、あまり長い期間は販売されないで、すぐに次の製品にモデルチェンジしてしまいました。次に販売された同型の機種では、そういったこの機種のメリットはもう搭載されていませんでした。(もう一つの、メリットはメトロノームのメモリが1コマずつ上がっていくという事です。)

教室のオケ練習等では生徒達が色々なタイプのメトロノームを持っているので、テンポの設定を一般のテンポに合わせて、80,84,88,92,96,100、という刻みになっています。でも、子供の場合には82では弾けるけれど、83では弾けないと言う事が起こってきます。その82のテンポの事を私は臨界テンポと名付けました。(臨界テンポは後で詳しく説明します。)ところが一般のメトロノームでは82の次は84なので、臨界テンポを一メモリ上げるという、臨界テンポの練習が上手くいかないときがあります。道具が高性能なのにはそれなりの価値があるのですよ。

 

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[不遇なメトロノームが指導者達からその価値を認めてもらえない理由]

私の長い人生の経験では、音楽大学で教鞭をとっている超有名な先生ですら、実際にはメトロノームに合わせて演奏する事が出来ない先生達が多くいました。その先生達が私に弁解した時の定番の言葉は 「メトロノームで練習をすると、演奏が非音楽的になるから・・」という言葉なのですが、その先生達の演奏がMetronomを使って練習していないのにかかわらず、杓子定規で、画一的で、とても非音楽的であるから、メトロノームで直すように、指導をしたのですがね。

「メトロノームで練習をすると非音楽的になるから・・」という事よりも、ただ単にメトロノームの使い方を知らなかったから、メトロノームで練習しなかっただけだと思いますがね。

 

先生が使い方を知らなければ、生徒がメトロノームを使えるようになるわけはありません。

音楽大学の先生がメトロノームを使えないわけですから、その生徒達が音楽大学を卒業して、それから就職して指導している殆どの音楽教室には、最初からメトロノームが置いてないし、当然、その教室の生徒達はメトロノームに合わせる事ができないのですよ。

そこでその教室のオーナーに「何で教室にメトロノームを置いていないのか?」 と訊ねると、「この教室では、音楽的に音楽を指導しますので、情操教育上害になるような、非音楽的になるようなそういった道具は置いてないのですよ!」と自慢げに語ってきます。

しかも、リトミックやrhythm教育をしている音楽教室ですら、同じような答え方をして、メトロノームを置いていないのですから、どういうrhythm訓練をしているのか、疑問を抱いてしまいます。基準になるtempoが最初から無いので、曲のtempoが途中でふらふらと変わるのは当たり前の事で、弾き始めのtempoも一回ごとに違います。それではプロとしては使えない。勿論、人と合わせるアンサンブル等で正しいtempoは取れません。日本のアンサンブルでは、力関係でtempoが決まります。力関係が無いプロの世界では誰かの感情的なtempoに、皆が合わせるというような、情緒的な合わせは絶対にしません。

ですから、皆、打ち合わせにはMetronomを使用して細かい小節ごとのMetronomtempoの打ち合わせをします。

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3章メトロノームの使い方

基礎編

 

レスナーへのアドバイス

前書き

譜例:

 

メトロノームの使い方を解説する前に、言葉を定義しておかなければならないのだが、困ったことに拍子と拍、rhythmと律動の定義はしっかりと決まっているわけではない。その使い分けは音楽仲間達の間の一般的な通説にしか過ぎないのである。「拍打ち」と言う言葉に見られるように、本来的には拍子と拍とrhythmの定義の上で明確な差はない。それではすこぶる困るので、私達は拍節に該当する、定期的なブロックのrhythmの繰り返しを拍子とし、律動を拍とし、不定形の音型をrhythmとすることにした。つまり、拍節は拍子であり、拍節の中の律動を拍と定義するわけである。

この定義は私個人の定義ではなく、広く音楽界すべての共通した定義である。

 

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[初心者へのメトロノームの導入]

メトロノームを使用していないレスナーの方に、「何故、メトロノームを使用しないのか?」とその理由を訊ねると、最初からメトロノームを使おうとしたことがなかった論外の先生達の他に、一度はメトロノームをレッスンで使ってみようと試みたのだが、失敗してしまったレスナー達が多くいました。その人達の話にはメトロノームの使用に対しての共通のmistake(失敗)を見い出す事が出来ます。

その内の最も数多く見受けられる失敗は、レスナーの多くの先生達が、生徒が曲をちゃんと弾けるようになる前から、テンポの揺れやrhythmの矯正にメトロノームを使用したということです。

 

あたかも、パラドックスのような話ですが、私が「ピアノの初心者にメトロノームを使ってはいけません。」 と言うと、「えっ?!rhythmが取れないから、(揺れるから)(不安だから)メトロノームを使うのではないの?」「初心者に使用しては駄目なの?それじゃ?何のためにメトロノームを使うの?」 と、驚いて、質問を返してくる先生が多いのです。「じゃぁ、何のために??」と不思議がっている、先生達の素朴な驚きと、疑問が聞こえて来る気がします。

 

勿論、当然、メトロノームはrhythmを矯正するために使用するのですよ。

 

しかし、自転車と同じで、その前に、子供にメトロノーム使い方やメトロノーム自体に子供達を慣らしてから、使用しないと、逆効果になってしまうのですよ。

自転車だって、子供が怖がっている内に、外に連れ出してしまうと、一生自転車に乗れなくなってしまいます。

自転車に乗れない多くの大人の人が、まず最初に言う言葉は、「子供の時に怖い思いをしたから・・」ですよ。

だから、まず、自転車に乗れるように、自転車に乗るための基本の練習をすること、それを先に勉強しなければなりません。

その順序だての事をsystemと言うのです。

私が子供の頃の時代には、水泳なども、泳げない人をボートに乗せて沖へ漕ぎ出してから、ボートをひっくり返しておぼれさせて、泳ぎを教えるといったような、乱暴な指導法がまかり通っていました。

今では、考えられない指導法なのでしょうが、systemも何も無い、根性論的な往き当たりばったりの指導法ですよね。

 

メトロノームもいきなり、合わせさせるという事ならば、そういった乱暴な指導法と変わりません。そこのstep(順序だて)がないから、子供がメトロノーム恐怖症になってしまうのです。

では、その導入の仕方を説明しましょう。

 

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[メトロノームの早期教育]

自転車乗りと同じで、メトロノームもピアノの学習し始めの早い時期に、慣れることが、正しいrhythm感を育てる意味でとても有利です。

メトロノームを小さな子供達や初心者に指導するには、体感訓練が必要です。

メトロノームの音を聞き取れるようにするには、まずは体にrhythmを感じさせる事なのです。

その為にはまず、メトロノームに慣れることから始めなければなりません。

では、本題に入りましょう。

 

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[指導のための段階(step)の設定]

まず、生徒にメトロノームの使用法を指導するときには、(特に年齢が低い場合には)、レッスンの最初から、いきなりメトロノームを使用してはいけません。

 

Point:生徒がメトロノームに合わせるのではなく、メトロノームを生徒の演奏出来るテンポに合わせるようにしなければなりません。

そのstepは第一段階では、生徒が、ある程度曲を間違えないで弾けるようになってから、先生がその生徒の弾いている曲のテンポを計ります。

それから、そのtempoを生徒に確認して、メトロノームと一緒に弾かせます。

その時に、「そのテンポは生徒が自分で弾いたテンポである」ということを生徒に確認します。つまり、「メトロノームなしでは、ちゃんと弾けたのだ。」という事を本人に確認させるのです。

それはいたずらに生徒がメトロノームに不安感を持つことを避けるためなのです。

 

いきなり、目標のテンポで弾かせるのではなく、その生徒が今弾けているテンポをメトロノームで計り、それに合わせさせるようにします。

このときのテンポの設定には細心の注意を払わなければなりません。

メトロノームtempoが身についていない生徒は、演奏しているtempoが揺れているケースが多いからです。最初の小節を子供の演奏しているテンポに正確に測って、メトロノームのテンポを取ったとしても、子供の場合には2、3小節弾くとすぐにずれてしまう。

 

テンポ設定が遅すぎると子供はテンポを待てないし、速ければ指がついていかず、メトロノームにおいていかれるし、無理やりについていこうとすると、指がばらばらになる(雑な演奏をするような)原因を作ってしまいます。

殆どの先生達がそこのメトロノームのtempoの設定を、間違えてしまうのです。

曲の途中で技術的に演奏が遅くなるのなら、その前からMetronomのテンポを変えて、遅いテンポに変えればよいのです。何も、最初から、一定のテンポで練習する必要は無いのです。子供がどれぐらい遅くなってしまったのか、を自覚できればよいのです。発表会迄の長いスタンスで、一定のテンポで弾けるようになればよいのです。

子供達がメトロノームを普通に使えるようになるためには、とても気長な指導が必要なのです。いきなり、子供達を目標のメトロノームに合わせて練習させると、子供達はメトロノームが嫌いになってしまいます。

 

私達の教室では、先生達が生徒に対して、現在の練習tempoと、発表会等で演奏するときの目標tempoを生徒に指示します。生徒は今現在弾ける練習のtempoを少しずつ、目標のtempoに近づけていきます。そのテンポの細かい指示は初級は勿論ですが、中級ぐらいになっても、先生が細かく設定します。勿論、中級になると生徒が自分自身でも練習のtempoを設定して練習してきます。無理がないように先生は生徒の演奏をcheckし、練習テンポの設定を細かく配慮します。

 

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[メトロノームのテンポが見つけられない潜在意識的な理由]
生徒がメトロノームに合わせられるようにならない原因の多くは、先生達が、「生徒が演奏出来るテンポの設定」よりも、ほんの少し速めに設定するからです。

では、何故、先生達はメトロノームのテンポを生徒の弾けるtempoよりも速めに設定してしまうのでしょうか?

私が先生達を観察している限り、その設定の間違いの根本的な原因は、先生達の生徒への願望であるように思います。

つまり、無意識にですが、生徒に「このテンポで弾いてほしい。」とか、「もう、このテンポで演奏出来ている(はずだ!)。」という、思い込みなどです。

願望となると、そこの部分は先生の指導力の問題なので、私がとやかく言う事は出来ないのですが、私が先生達をlectureする時に、先生が生徒に指示したメトロノームテンポを実際に生徒が演奏可能なメトロノームテンポに訂正して、生徒に演奏させると、殆どの先生達が驚きの声を上げます。

共通のその声は「もっと弾けている、と思っていました。」 という声です。

「だから、それはあなたの願望なのだよ!」

先生が生徒に対して、願望を持つ事はとても大切な事ですが、生徒を観察する時にはちゃんと客観的に見れなければなりませんよ。

 

 

譜例:メトロノームテンポの見つけ方

先ほどもお話したように、ワン・フレーズの抜き出し箇所であっても、詳しくcheckして見ると、下記のように子供の演奏には、微妙なテンポのばらつきがあります。

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初心者の子供の演奏の場合には一つのphrasemelodieラインであったとしても、その中で、上記のようにメトロノームtempoが微妙に揺れているのに、生徒自身はおろか、先生でさえもそれについて気が付いていないケースが非常に多いのです。

ですから、上記のケースの場合でも、子供が家庭学習で「メトロノーム・テンポを86で練習してきた。」といったとしても、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。

ちゃんと遅くなった場所を先生が正しく、正確にメトロノームで測りなおさなければなりません。

という事で、この譜例のケースでは、最初のテンポは86ではなくって、82tempoで練習を開始しなければなりません。(或いは、まず、「抜き出し練習の抜き出し」 で、「82の部分」だけを「82」で自信を持って弾けるように練習させて、それから、少しずつ、一マスづつ(目盛づつ)上げていけばよいのです。) 

82で自信を持って弾けるようになったら、83で練習して、弾けなければ82に戻って、自信がついたら又83に挑戦するというように、弾けるようになるまでその反復練習をするとよいのです。そして少しずつテンポを上げて行って、M.M82でしか弾けない箇所が、86で弾けるようになったら、最初の86の場所まで戻って、抜き出しの全体練習をすると良いのです。

こういう風にお話をすると、とてもめんどくさい練習のように見えてしまうのですが、実際にそういったレッスンをすると、生徒は演奏出来なかった場所が、着実に2,3日もすると、自信を持って演奏出来るようになります。それをめんどくさがると、結果として、何日も何ヶ月かかっても演奏出来ない事になってしまいます。日本の「急がば回れ」の諺のように、最初に丁寧に練習をすると、確実に仕上げていくことが出来るので、結果として非常に早く曲を仕上げることが出来るようになります。だから、こう言ったしっかりとした目的を持った練習をする事は、ただ、だらだらと練習するのとは違って、結果的にはとても早く上達するので、練習の時短になる、効果的な練習法であると言えます。

私達のレッスンでは、生徒がレッスンの時間内に弾けるようになるように、先生が生徒と一緒に練習をして行きます。生徒が一人でも弾けるようになったら、初めて宿題にします。

弾けるようになったら、そこで初めて、「宿題(・・・・)()する(・・)」のですよ!「合格(・・・・)()する(・・)」のではないのですよ!!

 

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蛇足:

[指導者が生徒を(自分のレッスンを)客観的に見れるようにするための訓練法]

お気に入りの生徒や、コンクール等を目指す生徒に対しては、どうしても、先生が客観的に生徒を観察出来ない場合が多いようです。

そのアドバイスとしては、自分が客観的に見る自信がない場合には、lessonをビデオに撮って、23日後で、他の仕事をしながら、(食事の用意をしながら、或いは食事をしながら)自分のlessonを見直してみると良いのです。「~しながら・・」という事には、ちゃんとした理由があります。

テレビの前で、楽譜を準備して、筆記用具等を準備したりすると、どうしても身構えて見てしまいます。そうすると、折角の「客観的に見る」 という事が出来なくなるからです。

一度、観客として漠然と見ておいて、その時点で気がついた所を、改めてcheckする時に楽譜を準備して、パソコンに入力しながら、(楽譜に書き込みながら)見ればよいのです。

日にちをおけば置くほど、かなり客観的に見れるようになりますよ!

 

ビデオで後日checkすると言う事は、とても大変な事のように思われますよね。しかし、あなたが指導している総ての生徒をcheckする必要はないのです。その週の中で、自分が一番自信のない生徒を一人だけピックアップして、checkすればよいのです。一人の生徒が客観的に観察出来る様になったら、他の生徒も客観的に観察出来る様になるからです。

一人でよいのですよ。(それが、不安なら23、人で良いのです。)

 

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[初歩の段階では拍子の音を入れてはいけない]

写真:ぜんまい式のメトロノームの拍子の設定のつまみ

 

生徒が練習してきた曲の演奏テンポを計測したとしても、初心者の間は、拍子を(正確にはbeatといいます。)設定したとしても、まだ何拍子かという、拍を設定する必要はありません。

拍に合わせるという事は、次のstepになるからです。

ですから、初心者の間の拍子の設定(拍の設定)は必ず0拍子でなければなりません。

拍頭が戻ってくるタイミングを待つ必要はないので、レッスン時間や練習時間の短縮になります。

拍子を設定しなければ、練習のpointbeatだけに集中出来るからです。

 

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[メトロノームのbeatの設定は拍子を設定するものではない]

初心者の場合には、まず曲の(拍子ではなく)基本となるbeat(ビート・律動)を設定します。

とは言っても、仮に指導している曲の拍子が44拍子であったとしも、だからと言って、ストレートに4分音符のbeatを設定してはいけません。勿論、曲のbeatの単位が4分音符であれば4分音符のbeatででも良いのですが、殆どの曲は、それよりも、もっと小さな音符の単位で書かれています。ですから、beatの最小の単位は何であるかを、楽譜でcheckしなければなりません。(勿論、曲の中に出てきた最小のrhythmの単位がbeatの単位である、という意味ではありませんよ。)

つまり曲の拍子が44拍子であったとしも、曲の基本のビート(律動)が八分音符であるとすれば、メトロノームの単位は、最初は八分音符の速さをメトロノームの単位に設定にします。

練習が進んで、だんだん上手に弾けるようになったら、メトロノームの拍取りを大きく取るようにします。最初、8beat8分音符を単位にrhythmを取っていたら、上手に弾けるようになったら、次にはテンポを上げる前に、必ず拍の単位を上げて練習します。最初、8分音符で練習していた場合には、今度は4分音符の単位にして練習します。

 

これから先は上級生の練習法になりますが、早い曲の場合には、例え4/4拍子であったとしても、2分音符の単位でメトロノームの拍子を設定します。

つまり、メトロノームの単位が4分音符が80と仮定した場合には、次には全く同じテンポであったとしても、メトロノームの拍の取り方を2分音符の40に設定して、練習すると良いのです。

 

 

結論的に言うと、例えば、M.M=80の曲があるとします。

練習段階のstep1では、(例が4拍子の曲だとして、)拍子の設定のtempoよりも更に小さな8beat160で練習します。そのテンポで演奏出来るようになると、次には楽譜通りの4beat80で練習します。初心者の場合には此処まででよいと思います。

以下のお話は中級の生徒から上級の生徒に対してのメトロノームの設定のお話ですが、曲が早い曲の場合には、早くても落ち着いた感じで(焦った感じにならないように)演奏するために、拍を大きく2beat40にして演奏します。

メトロノームのテンポは拍を大きく取れば取る程、難しくなって行きます。

反対に曲のimage8beat4beat2beatの順に、大きく取れば取る程、落ち着いた感じで演奏しているようになっていきます。

プロの演奏家の演奏のテンポがとても早いのに、実際のテンポよりも遅く聞こえるのはそのテンポの感じ方が拍子の指定よりも大きく採っている性なのです。

 

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[音の粒を出すためのメトロノーム練習(ビッコの矯正のメトロノーム)]

初心者の弾くBeyerの教則本でも、74番の左手のtoriolen(3連音)の練習や101番の右手の16分音符の速い動きでは指がビッコをひいてしまいます。正確な粒粒を出して練習するためには、同じ粒の単位でメトロノームを鳴らすと良いのですが、それはぜんまい式のアナログ型のメトロノームでは出来ません。

ちなみに、74番のtoriolenの課題は右手がmelodieなので、そのmelodiemelodieとして聞けるテンポ(melodieに聞こえるテンポ)はどんなに遅くても、M.M=76ぐらいになります。そのtoriolenの粒をメトロノームのメモリで表すと、228となります。ぜんまい式のメトロノームの一番速いテンポは208なので、当然beat(粒粒を)合わせる事は出来ません。

電子式のメトロノームも一般の安いタイプでは208までしかメモリがありません。しかし、私の愛用している、上記のメトロノームは30から1目盛りずつ250まであります。

しかし、高性能の電子式メトロノームには付属の機能として、rhythmの機能がついていますので、76に設定して、rhythmを3連音をセレクトすると、beatの練習が手軽にできます。

というのは、Beyerの101番は指の回しの練習課題曲ですから、例え初心者であったとしても、最低M.M=100以上では弾かなければなりません。そうすると、粒粒を合わせるのには100×4でbeat400となってしまいます。幾ら高性能のメトロノームであっても、rhythm機能が付いていない限り、それは出来ません。

この場合も拍子を100に合わせてrhythmを16 beatに設定すればよいので、簡単に練習が出来ます。

 

 

rhythmTrainer

本当はそういったrhythmのトレーニング(訓練)が出来るように、メトロノームをもっと高度にしたrhythmの練習用の器具があります。

リズムトレーナーとか、メーカーによって色々な呼び方をします。下の写真は私の愛用の携帯用のrhythmTrainerで、メーカーの製品名もそのままrhythmTrainerです。

残念ながら、左の写真の製品は今現在は生産終了なので、教室や生徒達は別のメーカーの製品を使っています。

 

勿論、以上のお話は合格テンポのお話ですから、練習の組み立て方としては、まず生徒が演奏出来るテンポから練習し始めなければなりません。

 

①まず、びっこをひかずに、きちんと弾けるテンポを探します。

例えばそのテンポが♪=80だったら、拍子を80にセットして、次にrhythmを合わせます。74番の練習曲ならばrhythmの設定をtoriolenにします。101番ならば、16分音符に設定します。

初級の場合にはそれで、メトロノームにちゃんと合わせる事が出来るようになったら合格です。

もう少し、高度なlevelまで指導したければ次のstepに入ります。

 

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[拍の読み替えの練習]

②♪=80のテンポできちんとメトロノームに合わせることが出来たら、次にメトロノームを♩=40にして合わせてみます。実際には♪=80と同じテンポですが、拍の取り方が大きく変わるので、rhythmの正確さが必要になります。そのために格段に難しくなります。

③♩=40ができたら今度は少しテンポをアップして♪=96にしてみます。

それが出来るようになったら、♩=48でもやってみましょう。

④少しずつテンポの設定を上げながら、同じようにして練習していきます。

 

 

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[弾けてはいるのだが完成度のバランスが悪い]

指定された範囲をメトロノームでなんとかちゃんと弾けるようになったのですが、その出来具合が今一つです。どうcheckしたら良いでしょうか?

私が生徒にレッスンをしていたときのお話の一例です。

「メトロノーム練習をしているときに、同じ拍なのに、そのテンポが遅く感じられたり、速く感じられる所があるんじゃあない?」 

「ひょっとして、このメトロノームは速くなったり遅くなったりする!」 などと思ったりして??

 

テンポが、遅く感じる所は、あなたがよく弾けているのか、それとも、或いは気分が急いでしまっているので遅く感じてしまっているのではないのかな?

 

 つまり、メトロノーム・テンポが、速く感じられる所は、メトロノームテンポ通り弾けていたとしても、まだTechnik的に(技術的に)充分じゃあない所、つまりまだ充分には出来ていない所なのだよ。

丹念に抜き出し練習や分解練習などをして、自信を持って弾けるようにしようね。

逆に遅く感じられる所は、あせって弾いているところだから、気持ちを落ちつかせて、よく丁寧にメトロノームの音を聞いて、正確に合わせられるように練習しよう。

曲がだいたいin tempoで弾けるようになったら、ザッと通してメトロノームに合わせ弾いてみて、そういう風に、自分の技術のばらつきがないように、メトロノームのテンポで不安な所、技術の足りない所を捜し出して見る事はとても大切な勉強です。

 

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[初心者に良く見受けられる、弾く事に一生懸命で、メトロノームの音が聞こえない場合の指導法]

初心者や小さな子供の場合には、最初の間は弾くことだけで精一杯なのですから、子供自身が「弾きながらメトロノームの音を聞き取る」と言う事は、不可能に近い事です。

その場合には先生が、生徒にテンポを体感させる為、生徒の肩などを軽くリズムをとって叩いてあげるとよいでしょう。

しかし、よく一般の先生達に見受けられるのは、思いっきり平手で子供の背中をバンバン叩いている先生が多いようです。そういった光景は音楽大学等でもよく見かけますが、大人の生徒であっても、恐怖と痛みで顔が引きつっているように見えますね。

 

ましてや小さな子供達を扱う音楽教室で、幾ら子供にrhythmを体感させるためだと言っても、背中や型などを、強く叩いてリズムを指示してはいけません。

子供は恐怖心から、ますます逆に正しいリズムが取れなくなり、メトロノーム嫌いになる原因となります。

子供への正しいrhythmの与え方(体感のさせ方)は、優しく子供の肩に手を乗せて(というよりも、触れてと言った方が良いのかな??)、人差し指の先だけで、軽くリズムを取るようにします。子供が体感としてbeatを感じるにはこれだけで充分なのですから。

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[メトロノーム練習は極端に遅くして練習をしても必ずしも易しくなるわけではない。]
「弾けなければ、少し遅く弾かせれば良いのでは?」と考える先生も多いと思いますが、それがそれほど単純ではないのです。

第一には、生徒は練習してきたテンポでしか弾けないので、早くしても、遅くしても、どちらも弾けなくなります。

その場合には弾けなくなったpassage(部分)の場所を抜き出して、生徒が弾いているテンポを測り直します。そして、遅くなった部分の所だけのtempoを測り、その部分だけを抜き出しして練習させるのです。

メトロノームのテンポの見つけ方の詳しい説明と、譜例は、前述の「メトロノーム・テンポの見つけ方」を参考にしてください。

 

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[弾けないからと言って、闇雲に遅く練習しても意味はない]

よく、弾けないからと言って、非常にゆっくり練習すると良い、と思い込んで、生徒に非常にゆっくりと練習させる先生がいます。勿論、音を確認して正確に覚えるための練習としては、とても良い練習なのですが、指や筋肉のトレーニングにはならないのです。

 

つまり速い動きの時に使用する筋肉と遅い時に使用する筋肉では場所や力の加減が全く違うからなのです。

速いpassageを練習するには、まず音をしっかり覚えてから、ある程度の、仮に遅いテンポであったとしても、その筋肉が使用される最低限のテンポで練習しなければならないのです。

芦塚メトードでも、勿論、「slow motion練習」 という非常に遅く弾いて練習する練習法があります。

しかし、それは野球選手の「シャドウ練習」 と同じ練習法で、イメージト・レーニングのための練習なので、体全体を使用して演奏をする上級生の動きをcheckするための練習法になります。所謂、初級の生徒が「早くは弾けないから、ゆっくり練習する」という練習とは全く意味が違います。

 

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[メトロノームは抜き出し練習の場所だけを練習する事]

メトロノーム練習は、決して曲全体をメトロノーム練習してはいけません。

それこそ、最初の前書きに音大の先生のメトロノームの批判のように、非音楽的になってしまいます。一生懸命練習したとしても、音楽的に何のメリットもありません。

大切な事は、曲の演奏上の難しいpassage23小節だけを、抜き出してゆっくりと正確に練習することです。速く、指先だけでいい加減に練習する事は、下手になる練習なのです。だから、ゆっくりと確実に確認しながら練習する事が出来るようになれば、最初のメトロノームの導入としては100点満点です。

 

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応用編

テンポの設定

勿論、メトロノームではrubatoはできません。ですが、rubatoには、ゆっくりすれば、その分どこかが速くなるという原則があります。例えば、accelerandoが大きくなればなるほど、後のソステヌートが大きくなる。逆に前に大きくソステヌートをかければ、あとのaccelerandoも大きくしなければならない。だから、テンポの揺らしがあっても全体の曲(あるいはフレーズ)の良さは変わらないのです。つまり、テンポを思いっきりゆっくりしたいと思ったら、その前か後に思いっきり速い部分をっくればよいのです。人間の呼吸と同じで緊張と弛緩が1つの流れなのです。小節の無い、或いは、23小節間のrubatoの場合には、ふくらませたり、あせったり、ちぢませたり、ゆっくりしたりしながらも、小節の頑などのポイントの拍だけをメトロノームに合わせるように練習すると良いでしょう。それがうまくなると24小節ぐらいのrubatoでもメトロノームに合わせられるようになります。

 

rubatoritardandoaccelerandoの違い

rubatoは楽譜には書かれません。定説としてrubatoで演奏することが多いのです。

Rubato(ルバート)

曲の情緒表現としてのnuanceなどによってテンポを揺らすのがrubatoです。

それとは別にウィンナ・ワルツとか、ポロネーズとか、民族音楽としての独特のrhythmで演奏されるものもあります。ChopinMazurka(マズルカ)のように、23Pageに過ぎないのに、幾つものrhythmを多様に表現しなければならないものもあります。(Chopinの一番短いMazurkaで、解説をしようかと思ったのですが、口伝と演奏では簡単にimageを伝達する事は出来ますが、文章に書くとなるとちょっと・・・という事で、諦めました。

Rubatoの原則は、必ず、大きなphraseではテンポのつじつまを合わせるという事です。

Melodieは必ず質問と答えの二つのMotivで成り立っています。まれには質問が2回繰り返されたり、答えが2回繰り返されたりする事がありますが、必ず、phraseはそう出来ているのです。ですから、質問がゆっくりとrubatoされたら、答えが速くなります。質問を速く畳み掛けてすると、答えはゆっくりと安心して返してきます。それがrubatoの原則なのです。

それともう一つ、rubatoは必ず、12小節ぐらいの短い単位で動きます。

曲のつなぎ等のpassageで、短い単位にriten.と書かれていても、それはつなぎのpassageなので、rubatoとは呼びません。

 

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Hemiola(ヘミオラ)

数多くの曲の中で使われる技法で、初心者から上級者まで、いつも演奏しているのにもかかわらず、正しく演奏されない拍取りにHemiolaというものがあります。それこそ、歴史は古くからあって、baroque時代、BachHändelなどの大作曲家達からChopinSchumannなどのロマン派の作曲家達、近現代のBartók等の大作曲家達に至るまで、非常によく使用されてきた技法です。Hemiolaは曲の途中で2拍子と3拍子が交替します。

つまり、2拍子の曲の一部が3拍子になるのです。それを殆どの人達が2拍子のままでsyncopationで演奏しています。

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Verschobene Takt(推移節奏)

この聞いた事の無いような言葉は、実はこの言葉を聞いた事がなくても、演奏では、しょっちゅうお目にかかるphraseです。

拍がずれて演奏される事を言います。

verschobene TaktAgogikと間違いやすいのですが、Agogikは拍子の中で、別の拍節法を取る事を言います。

いずれにしても、syncopationと間違われて演奏されることが非常に多いようです。

 

 

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あとがき 1

Beyerについてやメトロノームについても、過小評価ではなく、その真価が分からない人がけなしているのを聞くたびにBeyerMetronomの身になって、心を痛めています。おお、可哀想なMetronom

芦塚メトードでは音符の譜読みの導入に「市販の音符カード」を使用します。

ある時に、それを見た音楽の先生が「譜読みのメトードは芦塚先生のオリジナルのメトードだと思ったら、市販のメトードだったのですね。」と言っていました。

その人は、メトードが音符カードそのものだと思ったのですね。Beyerは優れた教則本です。でも、Beyerを使用したからと言って、子供が上達するわけではありません。音大の先生達が「Metronomを使用すると、非音楽的になるから、Metronomを使用してはいけない。」と言っているのを聞いて、「音楽のプロと呼ばれる人でMetronomを使用しない人はいないのだけど・・・」と、ついつい可哀想になってしまいます。

つまり、Beyerは教則本に過ぎないし、Metronomはただの器械にすぎません。どのように優れた曲であっても、その演奏に創意工夫がなければそれはただのつまらない曲に過ぎないのです。

教室に見えられた先生が子供の伴奏でDiabelliの連弾をつまらなく弾いていたので、私が「Diabelliは、こういう風に奏くのですよ。」と、説明したら、その先生が「この曲は奥が深いのですね~ぇ!」と驚いていました。子供の曲だからつまらない曲だと思うのは、大変な間違いなのですよ。Beyerだって、Beethovenと同じ時代から、本当に多くの人に支持されてきたのです。それだけ時代を生き抜いてきた曲がつまらない分けが無い。それを理会出来ない音楽家がいたら、その人の演奏はつまらないものでしょうね。

Metronomを馬鹿にする人は、アンサンブルも、いや正確な揺らし(rubato)も出来ないでしょうね。ましてや、ChopinPolonaiseMazurkaを正確に演奏していく事は不可能でしょうね。正しく揺らすには、基準が必要なのです。強弱(fortePiano)でも、tempoでも、基準が会って初めて、自由に使いこなす事が出来るのです。その基準となるMetronomを馬鹿にする人は、きっとMetronomに笑われて、馬鹿にされていることでしょうね。


あとがき 

 

このメトロノームについての論文は、実は今から30年以上前のワープロ時代に書かれたものです。

ですから、昔々、一度、完成した論文は、発表会の時に、生徒父兄の希望者の方達に配られたのですが、その後、ワープロからパソコンへの移動や事務所や私の自宅の引越し等々で、他の論文同様に、フロッピーディスクや完成した原稿、配った冊子が全て失われてしまいました。

というわけで、完成前の反古の紙切れや、やっと見つかったかなり初期の段階で入力されたフロッピーディスクから、OCR(文字認識)ソフトで、ワープロ文章をパソコンに取り込んで、その過程で、譜例や若干の新しい文章を付け加えました。20Pageほどの音楽夜話のお話でしたが、譜例などを加えたために倍近いPage数になってしまいました。

 

というわけで、前半部のよもやま話と指導マニュアルに近い後半の専門的なお話を分けて冊子にすることにしました。

という事で、全くリニューアルされ改定された文章になってしまいましたが、少しは以前の文章よりはましになったかなと思っております。

 

 

 

 

       

 

 

 

2010年6月20

江古田の寓居一静庵にて

一 静 庵 庵 主

芦 塚 陽 二 拝

 


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「『ハイ!メトロノームにあわせてみよう!』 じゃ、誰も出来ないよ!」

メトロノームを使えるようになるにはstepがある。

 

[その曲がその曲であるためのテンポ]

―遅くても、速くても、駄目なものは駄目―

レスナーの中には、「この曲を早い時期に弾かせたい。」という先生の願望、或いは生徒や親の願望から、生徒の技術levelを無視した無理難題の曲を発表会等で弾かせてしまう先生がいます。

そのために、その曲の本来のtempoよりも、どうしようもなく遅いテンポで生徒が曲を弾いたりすることを、良く見受けます。

反対に、コンクール等を聞きに行くと、早く弾く事で、細かい表現を誤魔化して弾いている生徒を良く見ます。

昔々は、確かに中央のコンクールもそうでしたが、さすがに全国大会を持っているコンクールでは、今はそういった評価は少ないようです。

地方予選などではまだそういった評価をされるケースもままあるようですが、本選まで行くとそれはなくなります。

しかし今でも、地方のコンクールなどのlevelの低いコンクールでは、そんな弾き方でも合格する事があるようです。

でも、まったく間違わないで丁寧に演奏出来た生徒が不合格になって、間違いだらけの演奏をした生徒が合格するような、そういったコンクールはごく普通にありますから、コンクールなどの評価は最初から気にしないことです。

曲にはその曲がその曲のimageを表現できるキャパシティのテンポがあります。

その曲のimageで例えば80がベストのテンポであったとしても、76まではその曲のimageがキープ出来るとか、速くとも88までは何とか・・・とかです。

その限界を超えたものは、もう別の曲であって、その曲とは言えないのですよ。

 

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[一つの曲の中での複数のメトロノーテンポの設定]

Sonatinesonate等の大規模な曲になってくると、複数のテンポ設定があります。

ソナタを例に取ると、第一主題のテンポ、第二主題のテンポ、展開部の色々と変化するテンポ等複雑に絡み合います。

(ちなみにTempoⅠ テンポ・プリモは日本語では第一テンポで!という意味になります。)

当然、TempoⅡ テンポ・セコンダ 所謂、第二テンポで!という事もあるということですよ。

という事で私達の教室のオケ練習では第一テンポ、第二テンポ、第三テンポ、等と細かく設定します。オーケストラや室内楽は、生徒達が家で各自練習をしてくるので、全員が合ったときにちゃんと同じテンポで弾けないと練習になりませんからね。

 

先程のsonate等の蛇足ですが、プロの演奏の場合、repriseで第一テンポが再現される時には、演奏会等では、全く同じテンポに再現される事はありません。そうではなく、ほんの少し、1メモリ、2メモリぐらいは早めに設定するのです。

そうしないと、お客さんは再現部が遅くなったような気がしてくるのです。

勿論、教室で子供達に指導する時も、そのように一マス、二マス、テンポを上げて演奏させるのです。

蛇足ですが、先程のメトロノームの例では、最初の主題がM.M=80だとすると、一マス上げるとメトロノーム・テンポは84になり、二マス上げると88という事になります。 一マスか二マスか、そのテンポの違いはとても大きいですよ。

 

いずれにしても、音楽を表現する上で、最初から最後まで同じテンポで弾くという事は、むしろまれな事になります。だからどんな曲でも、その1曲の中でもmelodiepassageに合ったテンポをいくつか設定することになります。

 
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[臨界テンポのお話]

メトロノームのテンポを設定するに当たり、長年の経験上で、間違えないで安定して弾けるテンポと間違える不安定なテンポの間に、「ある特別なテンポ」が存在しているという事が分かってきました。そのテンポを芦塚メトードでは「臨界テンポ」と呼んでいます。

「臨界テンポ」とは、「コントロールされ、しっかりと弾けているテンポ」と、「全く弾けなくなるテンポ」の間に挟まれた、「弾けてはいるがコントロールされていないテンポ」の事です。

いくら指が動いていても、或いは、misstouchをしなかったとしても、演奏する人の意識でコントロールされてなければ、その演奏は本当に弾けたとは言えないのです。

 

コンクールなどでも、その臨界テンポギリギリで弾いている人が結構多いのです。

コントロールされていない演奏は、それは単なる指の体操であって、音楽とは呼べません。

確かに昔の日本のコンクールは、そういったオリンピックの競技みたいなところがありました。しかし、今現在は大分、そういった評価は直ってきたようですが、まだそこの所をかんちがいしたまま、コンクールに出ている生徒達や、そういった風に指導してコンクールに出している先生達もいて、なかなか皆さんに分かってもらえていないようです。

 

学習者はこの「臨界テンポ」の一歩手前のテンポで練習しなければなりません。これがメトロノームの「練習テンポ」の設定です。

「練習テンポ」は遅すぎれば無駄な練習(無意味)になり、速すぎれば(コントロールの取れない)雑な練習になってしまい、練習すればするほど、むしろ下手になってしまいます。

練習をする人が、曲のあるパッセージを練習している時に、その人の「練習テンポ」は、間違えて、たった1目盛り速く弾いたとしても、突然弾けなくなってしまう程、はっきりと存在しています。

 

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[練習テンポの見つけ方]

その曲をキチンと仕上げるためには、曲の練習テンポは1つのテンポだけで行ってはいけません。色々なテンポで練習して、その曲の柔軟性を身につけなければなりません。

又、先程も述べたように、例えばM.M120の曲だからといって、最初から120で練習するというのは効率の良い練習とは言えません。

自分の技術の上達に合わせてメトロノームのテンポを徐々に上げて目標となるテンポに近づけて行く方法がもっとも良い練習です。

 

曲を仕上げた時の目標テンポが120の曲を例にとって説明しましょう。

まだ120で弾けない場合には、思い切りメトロノームのテンポを下げてみましょう。

この時には、前に私が話した、曲想がキープ出来る範囲のテンポ以内でテンポを落とすのではなく、曲のimage(曲想)を無視して、あくまで技術の練習として、極端にテンポを下げてみるのです。

これを私は「スローモーション練習」と言っています。

slow motion練習」 は可能な限り、暗譜でするようにします。「slow motionの練習」 は技術練習、所謂、technical練習というよりも、頭の中の記憶の精度を上げるための練習であると理解してください。

ですから、ちゃんと音が頭で把握できるようになると、この練習の特徴は、一メモリ、一メモリ上げて行く必要はありません。一気に10メモリぐらいづつ、テンポを上げて行っても良いのです。

一気にテンポを上げていくと、ある程度テンポが上がった時点で又、躓きます。しかし、こんどの問題は前回の音楽の理解と記憶の問題ではありません。今度はtechnicalな問題でぶつかったわけなのです。

 

そこで、此処で臨界テンポの話が出てきます。

ある程度、早くすると指がもつれたり、ついていかなかったりします。そこで、自分が不安を感じたり指をコントロールできなくなるテンポが、いったいメトロノーム幾つなのかを探し確認します。

80なら10回弾いても、10回とも確実に間違えないで弾けるが、メトロノーム84だと4回、5回に1回は間違う」というように、安定して弾けるテンポと「このテンポからくずれはじめる」という境界線のテンポを確実に探していきます。それが練習テンポと臨界テンポの境目の正しい練習テンポなのです。

 

くずれはじめる一歩手前の練習テンポを100%確実にすることが、次の練習テンポに繋げていく重要なpointになります。

子供達はどうしても繰り返しの練習(反復練習)をすると、練習の仕方が雑になってきます。そのために、幾ら練習をしても上手にならない。練習すればするほど雑になる、といったどうしようもない状態に陥っている事がよく見受けられます。

 

それを矯正するために私は(集中力を持続するための)ゲームを作りました。

子供達が大好きなオセロゲームです。

このゲームの根本にある理論は、パソコンで一度間違えた情報を入力すると、正しい情報を入力するためには間違えた情報を消去しなければならない。という理論です。

練習も同様に、子供達の練習でよく見受けられる、練習の仕方は10階練習しなければならないとすれば、間違えても正しくても10回練習すればよいと思い込んでいる生徒が意外と多いのです。もっと問題なのは、一回でも正しく弾けると、練習が終わったと思い込んでいる生徒です。

私はその子達にいつも説明をします。

「間違いも頭に同じようにインプットされるのだから、1回、正しく弾けたのと、1回、間違えて弾いたのでは何回練習したことになるのかな?2回?1回?0回?」

「う~ん??あっ!0回だ!!」

「そうだよね!じゃぁ、5回練習しなさいと先生に言われて、5回練習したのだけど、4回間違えて最後の1回正しく弾けたとすると、その日の練習の成果はどうなるのかな?」

「え~?間違いえが4回で、正しく弾けたのが1回だから、う~ん・・・」

「つまり、その日は3回練習していない事になるよね。だから、次の日、3回正しく練習したとしても、0回練習したことになるんだよね。」

「あっ!そうか?」

という事で、レッスン・キットの中から、おもむろにオセロのチップを出します。

 

写真:オセロのチップ

「じゃぁ、今から5回この小節を練習してみよう!

正しく弾けたら白、間違えたら黒だよ!」

1回目は正しく弾けたね~ぇ!はい白チップ1

あれ?2回目は間違えたよね。黒チップではなくって、プラス・マイナスだから、白のチップがなくなるんだよ!

「あっ!そうか?」

あれ?又間違えちゃったね。なら今度は黒チップ1枚だよ!

「あ~ん!!」

 

次の課程では、正しく弾けたか、間違えたかは生徒が自分で判断します。

最初の間は、白のチップを5枚ためるのには、結構大変なので、3枚ぐらいから始めます。

だんだん集中力が身に付いて来るに従って、間違いが少なくなってきます。

最終的には5枚の白チップを5回で獲得できるようになります。

練習の時間や量ではなく、練習の質を上げる事、確実性を身に付ける事が上達への早道なのです。

 

最初の練習テンポが確実に弾けるようになったら1目盛り上げます。

これを単純に繰り返していけば、着実に目標のテンポに近づけていくことができるのです。

そして実際に弾きたいテンポより10メモリぐらい速めのテンポでも安心して弾けるようになったら出来上がりです。

「練習テンポ」を見つけ出すことはとても難しいので、基本的には生徒は無理です。

上級生になって、自分で見つけられるようになるまでは「練習テンポ」を指定するのはレスナーの役目だと思ってください。

生徒に宿題を出すときには、「ここの部分はメトロノーム」=8492の問で練習すること」のように、具体的な数字を指定すると良いでしょう。

 

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[1小節を1拍として捉える曲]

ある超有名な音楽大学の先生が生徒に「音符の単位が短く書かれる曲は速いのよ!」と、まことしやかに生徒達に話ていたそうです。

4分音符に対して16分音符は速くなければならないという勘違いの意味です。

それを聞いた私の生徒が、腹を立てて、「ご注進!」と、私の所にその先生の話を告げ口しに来ました。「私は子供の頃から、芦塚先生からは逆に習っていたから!」 という事なのです。

 

多分、その先生は、「音符の分割と時間の分割」を速度(テンポの問題)と勘違いしてしまったのでしょうね。

実際には、作曲家は曲の速度が速くなればなるほど、音符の単位を大きく書きます。

 

譜例:Mozart Symphonie41 Cジュピター Ⅳ楽章

このMozartのジュピターSymphonieのⅣ楽章のように、非常に早い楽章の場合には、1小節を1拍でとって、4小節間で4拍の4拍子に振る事が多いのです。

指揮をするときにはそのように、拍を大きく取って指揮をします。

それは拍子通りに指揮をすると、指揮棒の動く速度が速すぎて演奏者からは指揮棒が見えなくなってしまうので、事実上、演奏のタイミングを合わせる事は不可能になってしまうからなのです。

(そういった、不可能な指揮を往年の名指揮者であるフルトベェングラーの指揮で見ることが出来ます。フルトベェングラーの指揮の光景は、資料映像として数多く映画にとられて残っています。今日でも、音楽図書館などで簡単に見ることが出来ます。問題の箇所はBeethovenの第九の終楽章の最後のpassageです。)

確かに、フルトベェングラーの理論では、指揮者はオーケストラよりも半分先行して指揮をするという理論があって、いつも、そのように指揮をしています。まるで音声と映像がずれているような、(昔の映画撮りでは、音声と映像は基本的には別に録画録音したので、そういったずれのある映画はざらでした。というか、殆どの映画がずれている。) しかし、それとは明らかに違う一種異様な指揮で、そういったずらしたままで演奏出来るオーケストラは世界広しと言えど、ベルリンフィルしかありませんでした。

超一流のオーケストラのTechnikがあって、初めて出来る業(演奏)でした。

しかし、今お話しているフルトベェングラーの「不可能な指揮」 というお話は、オーケストラが指揮者のタクトをずらして演奏しているという極めて高度な技のお話ではなく、単に第9の終楽章のfinaleの速度が速すぎてフルトベェングラーの指揮棒の速度がBeethovenの第九の終楽章のテンポに付いていかなかっただけの話なのです。

フルトベェングラーは律儀にも、小節の中の拍子をまじめに振ろうとしたのです。でも、残念ながら、老人であるフルトベェングラーが幾ら素早く指揮棒を振っても、第九の終楽章のfinaleのテンポには着いて行けませんでした。それを世界一級のorchestra奏者であるベルリンフィルの人達は、フルトベェングラーの指揮を見るのではなく、彼の演奏したいテンポを感じ取って、指揮とは全く関係のないテンポで演奏しただけのことです。オケの団員のフルトベェングラーに対する尊敬と団員自身の高度な技術に裏打ちされた非常にマイスター的な演奏ですね。

当然、殆どの指揮者は1小節を1拍として、4小節で4拍として、拍子を取ります。

 

またそれとは逆の場合で、作曲家は一般的に、曲の速度が遅くなればなるほど、逆に音符の単位を小さく書きます。そして、拍(拍子)を大きく取るようにします。

 

譜例:Bach 無伴奏ソナタ g moll 前奏曲(直筆楽譜facsimile版)

 

この曲も本来ならば、1小節を二つに分けて、8分の4拍子で書くか、音符の単位を上げて4分の4拍子で書けばもう少し見やすくなるのかもしれません。

確かに、見た目には弾き易いのかも知れませんが、そういう風に拍をとった場合には、この曲は長ったらしい、だらだらした音楽になってしまいます。この曲が4分の4拍子であるから、生き生きとした流麗な音楽であるのです。

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[最後の小節に付け足された空白の小節の意味]

譜例:Beethoven Pathetique 1楽章の最後の12小節

 

この譜例はBeethovenPathetiqueとして知られるPianosonate c mollのⅠ楽章の最後の12小節です。不思議な事は最後の小節に音符がまったく書かれていない全休符に、しかもご丁寧にfermataまでくっついた小節が追加されている事です。

 

私がまだ、高校生の頃この曲を勉強していた時に、先生にこの素朴な疑問を質問したのですが、先生は「これは余韻を表しているんだよ!」とまことしやかに答えてくれました。純朴な高校生の私でも、納得の行く答えではありませんでした。

同じ質問を音楽大学時代にも教授の先生達を捉まえてしてみたのですが、全く同じような答えしか返って来ませんでした。

その後、私は私なりに、色々な文献を調べて見たのですが、その疑問に対する明確な答えはどの本にも載っていませんでした。

 

実は、このBeethovenPathetique(パセティツク)のⅠ楽章に限らず、バロック時代から近現代に至るまでこのように最後の終止の書かれた和音の次の小節に、1小節まるまる休止符が書かれただけの小節が付け足されている曲はたくさんあります。極端な場合には、さほど例は多くありませんが、3小節で3拍子を表す曲の場合には、最後の小節の後に、2小節も休符の小節が付け足される事があります。

 

何故、そのように書かれているのでしょうか?その意味は作曲家が「1小節を1拍取りしなさい」という指示をしているのです。

 

例えばベートーベンの場合でも、1小節を1拍にとって、2小節目を2拍目としてとり、2拍が1つのセットとして感じるようにします。だから、1小節が終わったからそこで終わるのではなく、2拍目としての2小節目がわざわざ書かれているのです。休止の弱拍の小節(2拍目)までしっかりと感じとらなければいけません。これもメトロノームを使って1小節を1拍として練習していくと良いでしょう。

いろいろな曲を勉強するようになると、このように曲の最後の小節に完全なお休みの小節が付け足された曲を沢山見る事が出来ます。

 

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[拍子の弾き分け]

拍子の問題で言えば、日本人は次の弾き分けが苦手です。

8分の6拍子と8分の3拍子の弾き分け、C4分の4拍子)と¢(2分の2拍子)の弾き分けなどです。8分の3拍子の曲は3拍子の曲ですし、8分の6拍子は3連音の2拍子といえるので、基本的に2拍子の曲です。しかし、その弾き分けの違いをちゃんと指導出来るレスナーは、日本では非常に少ないのです。

 

 


譜例:1. Beyerlectureされなければならない3拍子と6拍子の違い。

この曲はBeyerの48番の冒頭の4小節です。

 

譜例:2. この曲はBeyer52番の冒頭の4小節です。最初の2小節は同じmelodieですね。同じテンポの同じmelodie3拍子と6拍子に弾き分ける事がこの曲の課題なのです。

 

同様に次の譜例はソナチネ・アルバムの1巻に載っているHaydnC DursonateのⅠ楽章です。

この曲をアラブレーベ(所謂、2分の2拍子)で弾かせるように指導しているレスナーを見たことがありません。皆さん4分の4拍子で指導しています。

明らかに違うのにね。

 

 


次の曲はChopinÉtude Op25 Nr.2 です。この曲の右手は3連音なのですが、音楽大学などでは、正しく演奏されたことを聞いた事はありません。

 

音楽大学などで学生が演奏しているのを聞くと(先生も含めて)、上記のような複雑なrhythmではなく(それじゃぁ、ChopinÉtudeではないだろう!!)間違えた、簡単なrhythmで演奏しています。

 

譜例:間違えたrhythmによる演奏

それで、私が正しいrhythmでゆっくりと演奏してあげると、皆、「えっ?!そんなに難しい曲だったの?」と驚いてしまいます。

 

実はロマン派の時代は両手の独立と音符の粒粒を生かすためにこういった風な複雑なrhythmを組み合わせて演奏することが多かったのです。

 

次の曲はみんなによく知られている仔犬のワルツです。

この曲を弾いている生徒達は、この曲の本来的な難しさを意識しないで弾いているとは思います。

しかし、譜面に注意して、曲をよく分析して見てみると実に複雑なrhythmで作曲されていることが良く分かります。

ロマン派の曲ではChopinの曲に限らず、同時に二つの拍子が平行して流れて行く曲をよく見かけます。

そういった拍子の事を、ポリリズム(複リズム)複拍子といいます。

 

譜例:複拍子の例  Chopinの仔犬のワルツ

 

 

[メトロノームを使用した練習法の例]

中級クラスからは色々な練習法を覚えていきます。

その練習法は基本的に

Rhythmvariation

Articulation練習

③分解練習

variation練習

等の練習法があります。

 

学習者は各グレード毎に多様な練習法を学びますが、此処でその全部の練習法をお話するのはページ的に不可能なので、メトロノームに関係する(というか、rhythmに関係する)練習法の中で、①のrhythmvariationを例にあげて説明します。

 

①のrhythmの練習法の中で、まず初心者の子供達が最初に習う基本的な練習法はskip練習です。skip練習には8分音符を基本の単位にしたもの、16分音符を基本の単位にしたもの、さらに、3連符系のskip練習一覧等があります。

勿論、それをノートに書き表すと大変な量になりますが、それを曲の難しいpassageの性格に合わせて、セレクトして練習をさせます。

一例として16分音符を単位としたskip練習一覧を載せておきます。

 

譜例:16分音符の基本的なskip練習一覧(Beyer101番のskip練習法)

①のrhythmの練習法には、6連音のrhythmの練習があります。この練習は上級になってもよく練習しなければならない大切な練習法です。

譜例:6連音のrhythmの分割練習(Czerny30番教則本より、)通常のskip練習とは別にrhythmの分割練習をします。

先程も述べたように、BrahmsSchumannChopinなどのロマン派の大作曲家達の両手や音の粒をクリヤーに出す一般的な方法として、単純なrhythmをわざわざ複雑に演奏させる事によって、声部を独立して浮き立たせるような作曲法を使用しました。そういったロマン派の演奏技法に慣れておくためにも、初期の段階からそういったpolyrhythmを練習しておくと、高度な音楽を演奏する上でとても重要です。

 

譜例:ChopinÉtudeOp10Nr10複雑な拍取りの例

Czerny 30番ぐらいの、levelから色々なrhythmの訓練やarticulation練習をしていると、こういった曲の演奏はさほど難しくはありませんが、いきなりChopinÉtudeから複雑なrhythm(拍取り)を練習しようとすると、超絶技巧的に難しくなってしまいます。

 

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[奇数のbeat

奇数の拍子

近頃のメトロノームは拍子の設定も1拍子から9拍子まで、1刻みで拍子の設定が出来るようです。しかし、5拍子や7拍子等は、裏拍の拍取りは、5拍子の場合には、3+2、若しくは2+3と取る、両方の場合があるのです。同様に7拍子も4+3拍の場合と34拍の場合があります。

 


譜例:5拍子の例:チャイコフスキー シンフォニー第62楽章

この曲は2+3の例である。

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[等分割されないrhythm

音楽が始まって以来、等分割されないrhythmはごくごく、普通に見受けられる。

しかし、ゆっくりと丁寧に分割されない音符の粒粒を出す事は意外と難しい。

私はよく、子供達に言葉を当てはめて、声に出させながら演奏させる。

6連音ならば「新幹線」とか、3連音が2個の6連音ならば、「白いうさぎ」とかである。

次の譜例はLisztの三つの演奏会用練習曲より第3番「ため息」の冒頭のpassageである。

 

 

譜例:Lisztの三つの演奏会用練習曲より第3番「ため息」

この曲の冒頭の前奏は指定はないのだが、8分音符の点描されるmelodieportatoで蛍の光が点滅するように、浮かび上がるimageで美しく柔らかく伴奏のfigurationから浮かび上がってこなければならない。だから、伴奏部のpassagePpianissimoから膨らまして、せいぜいmezzo P辺りまでの膨らましであろう。と言うわけで、最初の8小節は延々と7連音のpassageが美しく演奏されなければならないのだが、7連音の粒粒を綺麗に出すことが出来ないので、力任せにすごい速度でfortissimoで弾き捲くる無神経なピアニストが多くて困る。

7連音はゆっくりと美しく「きれいな音で、ピアノを弾こう。」と、お話ししながら、言葉に合わせて演奏すれば、自然に美しく粒粒を出す事ができるようになる。

 

7連符 9連符、5拍子、などの奇数のリズムの練習は、言葉を当てはめて練習すると良い。

 

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phraseによる、等分割されない拍取り]

言葉を当てはめると、良い結果を生み出すのはrhythmに関する訓練だけではない。

Beyer教則本の実に早い段階でも、phraseを指導している。

譜例:Beyer教則本18番 不定形のphrase

Beyerのこの課題曲をBeyerの意図通りにphraseを子供に指導している先生を見た事はない。もし、この段階で、子供に指導するのが無理だと思うのなら、phraseに合わせて子供が喜びそうな歌詞を作って見ると良い。無理なら親に作らせても良い。phrasephraseの間がちゃんとブレスになるように歌詞を作るのが基本である。

 

よい言葉の選び方

拍頭を表す言葉は、力行、夕行などの発音がはっきりしている言葉を選ぶとよい。

逆にサ行とかナ行のように、言葉にアクセントがない単語は、リズムがとりにくくなります。

 

より高度なrhythmの例は幾らでも探す事は出来る。それはその都度練習していけばよい。

 

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[変化する拍の例]

ritardandoaccelerandoなどの拍を揺らす記号の例

メトロノームではritardandoaccelerandoが出来なません。

今の技術ではそういったメトロノームを作る事は簡単に出来るはずなのに、まだそういったメトロノームが発売されていないので、大手のメーカーに、私が「揺らしの数式」を持ってMetronomを作ってくれるように頼みに言った事があります。

その時のMetronomの大手メーカーの人の返事は、「クラシックの世界ではMetronom自体があまり売れないし、ポピュラーの世界では、シンセサイザー等の自動演奏を使用するので、揺らしはしない」のだそうです。ですから、私が自分lessonで生徒に推奨していた、rhythm trainerすら、売り上げ不振で販売中止になったのだそうです。

だから、世界初のritardandoaccelerandoの出来るMetronomの製作は諦めざるを得ませんでしたが、それは使い方次第で幾らでもカバーすることが出来ます。

 

私が生徒に指導する場合には、rit.の始まる前のphraseから正確なメトロノームテンポで練習して置き、次にその到着点(accelerandoritardandoが終わった所)から、その目標のテンポでメトロノーム練習しておきます。

そして、そのつなぎの部分をちゃんと目標のテンポに収まるように練習しておけば正確にrit.accelerandoをかける事が出来るようになります。

 

この練習は、もしアンサンブルに興味がある人や、管楽器、弦楽器の人達にはきわめて重要です。ピアノを勉強している人も、アンサンブル(ピアノトリオ、ピアノカルテット等)が好きだから、とか言う理由ではなく、本当に正確な演奏を勉強する上ではとても大切な事なのです。

 

弦楽器や管楽器の人達は、常にアンサンブルをしているので、テンポに対してとても敏感です。他の人達との、兼ね合いがあるからです。だからritardandoaccelerandoの勾配や目的のテンポに対してもとても正確に、演奏する事が出来ます。ところが、一人天下のピアノの人達は、その日、その時の気分で弾くたびに、揺らしの加減が違うことが多いのです。

 

揺らしの加減が違うという事は、当然、テンポの勾配が違う分だから、目的(揺らした後の結果)のテンポも変わってきます。そのために演奏会などでは思いもかけない破綻をきたすことも、間々あります。

ましてや管楽器や弦楽器との伴奏合わせや、Pianotrioなどの室内楽をする時には、気分でrit.accelerandoをしていると、練習にならなくなって、喧嘩になってしまいます。

音楽大学等では、よく見受けられる光景ですがね。

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[rubatoの例]
②rubatoのメトロノームの合わせ方
勿論、メトロノームではrubatoはできません。ですが、rubatoには、ゆっくりすれば、その分どこかが速くなるという原則があります。例えば、accelerandoが大きくなればなるほど、後のソステヌートが大きくなる。逆に前に大きくソステヌートをかければ、あとのaccelerandoも大きくしなければならない。だから、テンポの揺らしがあっても全体の曲(あるいはフレーズ)の良さは変わらないのです。つまり、テンポを思いっきりゆっくりしたいと思ったら、その前か後に思いっきり速い部分をっくればよいのです。人間の呼吸と同じで緊張と弛緩が1つの流れなのです。小節の無い、或いは、2、3小節間のrubatoの場合には、ふくらませたり、あせったり、ちぢませたり、ゆっくりしたりしながらも、小節の頑などのポイントの拍だけをメトロノームに合わせるように練習すると良いでしょう。それがうまくなると2~4小節ぐらいのrubatoでもメトロノームに合わせられるようになります。

③rubatoとritardando,accelerandoの違い
rubatoは楽譜には書かれません。定説としてrubatoで演奏することが多いのです。
Rubato(ルバート)
曲の情緒表現としてのnuanceなどによってテンポを揺らすのがrubatoです。
それとは別にウィンナ・ワルツとか、ポロネーズとか、民族音楽としての独特のrhythmで演奏されるものもあります。ChopinのMazurka(マズルカ)のように、2,3Pageに過ぎないのに、幾つものrhythmを多様に表現しなければならないものもあります。(Chopinの一番短いMazurkaで、解説をしようかと思ったのですが、口伝と演奏では簡単にimageを伝達する事は出来ますが、文章に書くとなるとちょっと・・・という事で、諦めました。
Rubatoの原則は、必ず、大きなphraseではテンポのつじつまを合わせるという事です。
Melodieは必ず質問と答えの二つのMotivで成り立っています。まれには質問が2回繰り返されたり、答えが2回繰り返されたりする事がありますが、必ず、phraseはそう出来ているのです。ですから、質問がゆっくりとrubatoされたら、答えが速くなります。質問を速く畳み掛けてすると、答えはゆっくりと安心して返してきます。それがrubatoの原則なのです。
それともう一つ、rubatoは必ず、1、2小節ぐらいの短い単位で動きます。
曲のつなぎ等のpassageで、短い単位にriten.と書かれていても、それはつなぎのpassageなので、rubatoとは呼びません。


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Hemiola(ヘミオラ)
数多くの曲の中で使われる技法で、初心者から上級者まで、いつも演奏しているのにもかかわらず、正しく演奏されない拍取りにHemiolaというものがあります。それこそ、歴史は古くからあって、baroque時代、Bach、Händelなどの大作曲家達からChopinやSchumannなどのロマン派の作曲家達、近現代のBartók等の大作曲家達に至るまで、非常によく使用されてきた技法です。Hemiolaは曲の途中で2拍子と3拍子が交替します。
つまり、2拍子の曲の一部が3拍子になるのです。それを殆どの人達が2拍子のままでsyncopationで演奏しています。

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Verschobene Takt(推移節奏)
この聞いた事の無いような言葉は、実はこの言葉を聞いた事がなくても、演奏では、しょっちゅうお目にかかるphraseです。
拍がずれて演奏される事を言います。
verschobene TaktはAgogikと間違いやすいのですが、Agogikは拍子の中で、別の拍節法を取る事を言います。
いずれにしても、syncopationと間違われて演奏されることが非常に多いようです。

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あとがき
Beyerについてやメトロノームについても、過小評価ではなく、その真価が分からない人がけなしているのを聞くたびにBeyerやMetronomの身になって、心を痛めています。おお、可哀想なMetronom!
芦塚メトードでは音符の譜読みの導入に「市販の音符カード」を使用します。
ある時に、それを見た音楽の先生が「譜読みのメトードは芦塚先生のオリジナルのメトードだと思ったら、市販のメトードだったのですね。」と言っていました。
その人は、メトードが音符カードそのものだと思ったのですね。Beyerは優れた教則本です。でも、Beyerを使用したからと言って、子供が上達するわけではありません。音大の先生達が「Metronomを使用すると、非音楽的になるから、Metronomを使用してはいけない。」と言っているのを聞いて、「音楽のプロと呼ばれる人でMetronomを使用しない人はいないのだけど・・・」と、ついつい可哀想になってしまいます。
つまり、Beyerは教則本に過ぎないし、Metronomはただの器械にすぎません。どのように優れた曲であっても、その演奏に創意工夫がなければそれはただのつまらない曲に過ぎないのです。
教室に見えられた先生が子供の伴奏でDiabelliの連弾をつまらなく弾いていたので、私が「Diabelliは、こういう風に奏くのですよ。」と、説明したら、その先生が「この曲は奥が深いのですね~ぇ!」と驚いていました。子供の曲だからつまらない曲だと思うのは、大変な間違いなのですよ。Beyerだって、Beethovenと同じ時代から、本当に多くの人に支持されてきたのです。それだけ時代を生き抜いてきた曲がつまらない分けが無い。それを理会出来ない音楽家がいたら、その人の演奏はつまらないものでしょうね。
Metronomを馬鹿にする人は、アンサンブルも、いや正確な揺らし(rubato)も出来ないでしょうね。ましてや、ChopinのPolonaiseやMazurkaを正確に演奏していく事は不可能でしょうね。正しく揺らすには、基準が必要なのです。強弱(forte、Piano)でも、tempoでも、基準が会って初めて、自由に使いこなす事が出来るのです。その基準となるMetronomを馬鹿にする人は、きっとMetronomに笑われて、馬鹿にされていることでしょうね。

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あとがき

このメトロノームについての論文は、実は今から30年以上前のワープロ時代に書かれたものです。
ですから、昔々、一度、完成した論文は、発表会の時に、生徒父兄の希望者の方達に配られたのですが、その後、ワープロからパソコンへの移動や事務所や私の自宅の引越し等々で、他の論文同様に、フロッピーディスクや完成した原稿、配った冊子が全て失われてしまいました。
というわけで、完成前の反古の紙切れや、やっと見つかったかなり初期の段階で入力されたフロッピーディスクから、OCR(文字認識)ソフトで、ワープロ文章をパソコンに取り込んで、その過程で、譜例や若干の新しい文章を付け加えました。20Pageほどの音楽夜話のお話でしたが、譜例などを加えたために倍近いPage数になってしまいました。

というわけで、前半部のよもやま話と指導マニュアルに近い後半の専門的なお話を分けて冊子にすることにしました。
という事で、全くリニューアルされ改定された文章になってしまいましたが、少しは以前の文章よりはましになったかなと思っております。




       



2010年6月20日
江古田の寓居一静庵にて
一 静 庵 庵 主
芦 塚 陽 二 拝



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