ピアノの椅子の高さのお話
前書き
[いきさつ]
「ピアノの椅子の座り方」と言うのは、ピアノのlessonとしてはまず最初に教えなければならない事なので、インストラクターのための論文として「書かなければならない」と、言う事は、あまりにも当然・・というか、必然・・な話なので、今の今まで私自身は、かなりの数の論文や書きかけの反古の文章などが、ちゃんとした資料として教室に保存されているものと思っていました。
しかし、今回改めて探してみると、私の「ピアノの椅子の座り方」に関する原稿類は、その大半がワープロ時代のものであったために、パソコンに移動するときに、失われてしまって、現在それを探すことはすこぶる困難な状態になってしまっていました。
ということで、いまさら原稿を必死になって探すよりも、全く新しく、もう一度文章作り直すことにしました。
[親と子供が、(或いは姉妹が)同じピアノを使用するときに]
毎回のlessonででも、生徒の椅子の高さを注意しているのに、いつまでたっても直らない、と言う事で、担当の先生が、生徒の母親に送ったメールです。
mailより、引用・・『 一つ気になったのは、ピアノ弾くときの椅子の高さと位置が**ちゃんとあっていないことです。多分お母様が弾くときの椅子の高さと位置で、それを直さないままに、**ちゃんが弾いているのだと思われるのですがいかがでしょうか?』
勿論、回答は、直さないままで練習をしていた・・という事です。 しかし、子供が椅子の位置や高さを直さなかったのには、ただ先生の言う事を聞かなかった(守らなかった・・・)と言うわけではありません。
それが、難しくなった原因は、椅子自体に原因があります。
この生徒の家庭のピアノ椅子は、とてもおしゃれな背もたれのないタイプの椅子でした。
一般的な背もたれのある椅子は、結構子供さんでもすばやくピアノの高さを変えることが出来ます。
それに対して、おしゃれな背もたれのないタイプでは、ハンドルを回して椅子の高さを調整しなければならないのですが、ハンドルを回すのが結構子供にとっては重くって、しかも何回も回さなければならないので、意外と大変です。また、椅子の位置を直す事も、結構重くて大きくて大変です。
背もたれのあるピアノ椅子
背もたれのないタイプ
[ピアノの椅子と譜面台の位置]
ピアノの椅子がかなり低く設定されているので、譜面を見るのが結構辛そうです。
音を小さくするために、グランドピアノのふたを閉めた状態でその上に楽譜立てを持っていくとそれだけでも、譜面の位置は、さらに10cmぐらいは高くなってしまいます。
ピアノのふたを閉めて、更に譜面台をその上に載せておくケース
完全にピアノのふたを塞いでしまうと、音はかなりこもってしまって、モゴモゴとした感じになってしまいます。
Mozartのようなきらきらとした輝くような音の感じは望めないでしょう。反対にドビュッシーのような、常に霞のかかったような曲には適しています。
近所に対しての、音漏れがどうしても気になるようでしたら、私は使用したことはありませんが、次のような小物も売っています。
グランドピアノ用補助譜面台
勿論、アップライトピアノは譜面台の位置が低いので、
補助譜面台は必要はありません。
[何故、鍵盤の高さが高いのか?]
グランドピアノは西洋の男性(180cmぐらいはあるかな?)の身長に合わせて作られました。
ですから、キャスターなどがついていない状態ですら、日本人の一般女性には鍵盤の位置が高すぎます。(今の若い女の人は、身長は170cmぐらいでも普通らしいですが・・・?)
しかしその後、部屋の中を自由に動かせるように利便性を考えて、キャスターを取り付けたので更に、10cm位は高くなっています。
(キャスターがついているからと言って、畳の部屋では、全く動きませんし、フローリングでは、床にかなり疵が着きます。自宅で動かすときには、業者に任せた方が良いでしょう。)
グランドピアノのキャスター
日本の場合には、音が近所に漏れないように消音機能を持ったお皿があって、消音ゴムとお皿で直接床に振動が伝わるのを防ぐようなものがあります。オーバーな言い方をすると、グランドピアノを宙吊りにするようなものですから、当然また5cmほど高くなってしまいます。
また,日本家屋で畳の部屋などにピアノを置く場合に、畳の上に木の板などを敷いて畳がへこむのを防ぐことが多いようですが、それでも2、3センチは鍵盤の位置が高くなります。
インシュレーター:標準型
中空のインシュレーター
何もしない状態でも、日本人の場合には、成人女性でもピアノの鍵盤の位置は少し高めになってしまう、というお話はしましたが、学校やホールなどでピアノを弾く時になんとなくピアノの鍵盤の位置が低く感じられるのは、ピアノが床に直接置いてあり、家庭のように、お皿や台の上に乗っていないせいなのです。
また、ヨーロッパの過程にある普通の椅子は当然ヨーロッパ人の体型に合わせてあるので、かなり高めです。それにヨーロッパでは家の作りのために音が下にもれると言う事はあまり無いので、お皿自体使う事はほとんど有りません。
私も日本に帰ってきてから初めて、家の根太の強度の問題や、いわゆる生徒達の家での防音の問題、音漏れの問題に興味を持つようになりました。
[日本人の音楽指導者の考える椅子の座る高さの誤り]
ピアノを演奏する上で椅子の高さは非常に重要な位置を占めます。
ずいぶん昔から、私は日本人の音楽指導者の考えるピアノの椅子の高さの誤りや、座り方について、公開講座(lesson)やホームページ上でも、何度も、何度も、お話しをしてきました。
しかしながら、いつもいつも、(特に子供の指導の経験のない音大を出たばかりの若い先生方を)面接するときに、まず最初に、子供の椅子の高さの決め方で、私達の教室の指導法と、若い先生方が子供の頃から習って来たピアノの椅子の座り方で、真正面からぶつかってしまいます。面接をするたびに、何故椅子の座り方が間違えているのか、それからどういったことが引き起こされるのか、そういった同じ話を無限に繰り返さなければならず、ほとほと困ってしまいます。
[どうして誤った椅子の高さが日本人の音楽指導指導者の間に定着したか?]
日本人のピアノの指導者が一般的に考える、「正しい椅子の高さ」と言うのは、日常生活の中での普通の正しいイスの座り方を基準にして考えているからなのです。
つまり、膝を折った位置に、椅子をすべりこませた高さが、その人の椅子の高さとしているのです。
正しいと言う事だけで言えば、工業規格に準じて作られているので、本当は家庭の椅子よりも、パイプ椅子の方が日本人の体格に合わせて、椅子の高さは作られています。
しかし、日本の日常生活の場合においても、現実的にはテーブルの高さはその用途においてまちまちです。
応接ソファー用のテーブルであったり、食卓のテーブルであったり、勉強机の高ささえも、微妙にその高さが違います。
実はそういったテーブルの高さ(用途)に合わせて、すべての椅子の高さは、違っているのです。
それと全く同じ事なのですが、いつも私が先生達や生徒たちに言っていることは、まずは「ピアノというものは西洋人の男性の身長に合わせて作られたものなだ」ということを忘れてはいけないのです。
と言うわけで、身長は180センチぐらいで、それぐらいになると、手の大きさも、とても大きくなります。
そのサイズに合わせて、鍵盤が作られるなど、全てがそういった標準的なヨーロッパの男性を対象にして、全ての寸法が決められているのです。
それだけならまだしも、その後、家の中でもピアノを自由に移動出来る様に10センチ以上もあるようなキャスターが取り付けられ(西洋の家屋は石造りやフローリングですから疵はついたとしても、可能性はあるとしても・・・。)、さらに日本の家庭ではインシュレーターというゴム状のお皿や、畳を受け付けないようにするための丈夫な板などを使っています。
極端な場合には15センチ以上、鍵盤の位置が高くなっている場合もあります。
それなのに、ピアノの椅子の高さは、相変わらず膝の折れる位置で高さを決めている先生が多いのです。
変ですよね!
そのために子供達の場合、極端なぶら下がり弾きになっているケースを数多く見受けます。
そういった理由で、子供だけではなく、成人の、特に小柄な女性は、ピアノを弾く時に、弾くというより、押さえるタッチになっています。
同様の理由からピアノを学ぶ数多くの子供達が、間違えたタッチ(押すタッチ)で弾いていますが、先生が一生懸命touchを直しても、子供がtouchを直す事が出来ないのは、その根本の原因が、椅子が低すぎるからで、それを直さない限り、今度は別の所に問題が移っていってしまうだけなのです。
(教室ではそういったぶら下がって弾くtouchのことを「幽霊弾き」と呼んで戒めています。)
[正しい押さえ込むtouchのお話]
正しい姿勢で弾かれた「押さえ込むtouch」は演奏会場では、遠音が効かないので(到達力に欠けるので)、芦塚メトードでは「音殺しのtouch」と言って、chopinなどの夜想曲等で、melodieと低音に対しての内声部(和音の部分に対して、)バックグラウンド(背景)を表す為のtouchとして使用します。
またピアノの椅子が低すぎるもう一つの原因に、椅子に対して深く腰掛すぎるということが挙げられます。
深く椅子に座った例
日常の軽作業するための椅子だったとしても、作業するためには体が作業台にある程度の体重がかかってなければならないのです。
勉強するために人間工学的に考え出された変わった形の椅子がありますが、それの作業しやすいように前傾姿勢をキープ出来るような設計になっています。
ピアノの椅子の正しい座り方は椅子の前半にちょこんとお尻を乗っけるような座り方が理想的です。先生がいくら注意しても直らないことが、とても多いようです。では何故。子供達は椅子を深く座りたがるのでしょうか?
バーのカウンターに止まり木といわれている椅子があります。足をバーにつかないととても不安になる椅子で、酔っ払った連中がよく落っこちています。(この話は冗談ですが、)ピアノの椅子を目一杯上げてしまうと、足がぶらぶらして椅子から前のめりに落っこちそうになって、とても不安な感じになってしまいます。
足が届かない。
とてもよく練習する子供ですが、如何したわけか、いつまでたってもなかなか集中力が身に付かない、という子供が居ました。不思議に思ってよく親から話を聞いてみると、何年も足台の重要性の話をしているのに、必要性を感じなかったらしく、家での練習では、足台を使っていなかったそうです。「足台なんて、昔はりんご箱でも良かったのですよ。ちゃんとした足台を買うのが嫌なら、電話帳を積み上げて高さを調節すると言うのは、どうですか?」といって、足から床までの足りない寸法を測りながら、「教室にコントラバスの椅子があるので、座ってみますか?」と言って、ちょうど、子供の足りない高さまで椅子を高くして、お母様に座ってもらいました。親は、とても驚いて「足が床に届かないと言う事は、こんなに不安なのですか!」と言って、「直ぐに足台を買います。」と言って帰りました。勿論、次のlessonからは、練習時間も集中力もずいぶん、伸びましたよ!
正しい椅子の座り方
椅子にちょこんと座るような型です。
この場合は鍵盤がないので、きちんと座った型ですが、
鍵盤があれば、少し前傾姿勢になります。
写真では分かりにくいかもしれないので、いつもの丸チョンの絵です。
背中が丸くならないように気をつけます。
教室では、いろいろな年齢の生徒が居ますので、子供の身長に合わせて、すばやく足の高さを調整できるように、無段階式に高さが調整できる、Aのタイプのものを使用しています。もうちょっと年齢が幼くって、このタイプでは足が届かない生徒には、Bのタイプのものを使用しています。勿論、他のタイプの足台もそろっています。どれが生徒に合うのか、併せてみないと、分からないのでね。
タイプA タイプB
このBタイプのペダルつき足台は種類によっては、大人でもペダルを踏むのに力が掛かりすぎて、実用性の無いものも数多く見受けられます。足台のペダルは、実際には、この足台を使わせなければならない身長と年齢の子供には、ペダルが重すぎて実用的ではありません。ペダルのないタイプのほうが金額的にはかなり安いので、何か「どうしても・・。」必然的理由がない場合には、ペダルなしのタイプでも良いと思います。
背の高い外人の男性のピアニストがイスに深々と腰をおろして弾いているのをよく見かけますが、彼らの場合には逆に鍵盤に体重がかかり過ぎるとピアノの音が歪んだりするために、逆に椅子にふかく座ることで、鍵盤に体重が掛かりすぎて、音が割れる(歪む)のを避けているのです。
[何故、ヴァイオリンのように、分数のピアノがないの?]
本当の事を言うと、私達日本人が、自然な体勢で椅子に座って、その正しい体勢のままピアノを弾くためには、ヴァイオリン同様に、体に合ったサイズの分数のピアノが必要です。
ではなぜ、日本人にあった分数サイズのピアノが作られていないのでしょうか?
そういった疑問を持たれる方は、昔からたくさんいました。
そういった人の一人で、「雪の降る街」で皆さんにもおなじみの中田よしなお先生が日本人にあった分数のピアノを作ろうという運動を提唱をされていましたが、現実的には一般には受け入れられず、中田先生が作った分数のピアノだけでした。
世界的に言えば歴史的名ピアニスト ミケランジェリが弾いている8分の7のコンサート・グランドピアノが有名ですが、彼は世界中で演奏会を開くために、そのピアノを持って旅をしなければなりませんでした。(我々は演奏旅行の事を、旅といいます。)
先程の「何故?」という質問に戻りますが、ピアノを作る時には、六千個ものパーツが必要ですが、ピアノが安くできているのは(勿論、ピアノはとても高価な楽器ですが、それでも安く出来ているのです。)世界中の統一規格で、ピアノのパーツを作っているからなのです。だから現在の価格で手に入れることが出来るのです。
特注で作るとなると、その六千個ものパーツを、全て手作りで一個、一個作らなければなりませんので、今から40年前の中田先生の時代でも、1台当たりの分数ピアノの値段は500万近くしました。
当時の値段だったら、steinway pinoよりも高かったかのかも知れません。
そのようなわけで、ピアノの場合には分数のピアノというのは、もし作ったとしても、非常に高価な特注品になりますので、一般の方がお子様のために手軽に買い求められると言う事は無いと思います。
ですから、当然、椅子の方で、その高さを調整し手、間に合わせなければなりません。
それは子供の場合には、かなり不自然なピアノの椅子に対する座り方だとは思いますが、ピアノの足を切るか否かですので、それなりの選択が必要です。
家具屋さんにいえば、ピアノの足ぐらいは、簡単に切ってもらえますよ!
どうしても正しい椅子の高さでと言うのなら、仕方がありませんね。
(しかし、お子様が大きくなった時に、そのピアノに「足を継ぐ」という事は、多分不可能でしょう。
で、それで、鍵盤の高さが調整できたとしても、鍵盤の幅や、鍵盤の重さは変わったわけではありません。所詮は、大人用の楽器を子供が無理をして弾いているのですから。
[肱の位置]
ピアノの足を切るか、椅子の高さをあげるかで、姿勢を整えたら肩から自然にたらした腕をそのまま持ち上げた時に、肱がピアノの鍵盤よりも1、2センチ上に来るように椅子の高さを設定しなければなりません。
肱と鍵盤の位置
こうして腕全体の重みが指先を通して鍵盤にかかるようにしたときの音が、mfになります。
つまりmfとは手首や指の力を完全に弛緩した状態で、腕の重みだけで指先で弾いた音の強さを指します。これが基準となる音量です。
[手首の位置]
私はその時に手の甲と腕の上の部分が並行になる事を、高位置、1の指(親指)と腕の下の部分が並行になる事を低位置と呼んでいます。低位置より低くなるとぶら下がり弾きと呼んで、高位置より腕が上がる事を幽霊弾きと呼んでいます。
手首の基本の位置
高位置と低位置
間違えた手首の位置
幽霊弾き(肱や手首の位置が高すぎる)
手首が下に折れ曲がる
ぶら下がり弾き(肱や椅子が低すぎる事によって惹き起こされる)
手首は上向きに折れ曲がり、親指は常に鍵盤の端っこをtouchする
これはあくまで基本姿勢なので、手首を使って演奏する手首の回転運動の時には、勿論当て嵌りませんが。
[成長期の椅子の高さとペダル]
椅子の高さとペダル
小学生のときの椅子の高さは、小学4,5年生位になってかろうじて、ペダルに足がつくようになったときに、椅子の高さとペダルに乗せた足が一直線となったりするので、ピアノの近くにイスを引き寄せたり、逆におもいきりイスを下げたりして、せっかく今まで培って来た正しい前傾姿勢が、一気に崩れてしまうことがままあります。
ピアノの技術が身に付いて、ロマン派などの曲や近現代の曲を数多く弾くようになると、ペダル操作を指導しなければならないことは必然となります。体が成長しきらないうちに、ペダル操作などを指導しなければならないことはいろいろな問題を数多く含んでおりますが致し方のないことだと思います。
足台を使っても椅子が近すぎたり、やっとペダルに足が届くようになって、そのために椅子がピアノに近すぎると、上体が反り返るだけではなく、肱や肩の位置が逆転します。
肱が体の後ろに行った例です。
ヨージーの法則より(芦塚陽二の箴言集)
「間違えた出発点から出発すると、どのように努力をしたとしても、目的地に辿り着く事は無い。」
@ 鍵盤と肱の位置を正しい位置に合わせる。⇒(足がぶらぶらになる。⇒不安になる。集中力が身に付かない。)
A A:⇒椅子を深く座る。)⇒鍵盤に手が届かない。⇒ピアノに対して、椅子が近すぎる。⇒両手の独立が阻害され、touchが押すtouchになってしまう。(体が後ろに反ってしまう。)⇒etc.
一つを直せば、次に別の欠点が出てくると言った、こういった悪循環を際限なく繰り返していきます。
これは、本の一例にしか過ぎませんが、たった一つのことがたくさんの間違いを惹き起こしていく典型的な例でしょう。
蛇足:
[0x年y月z日 MM先生クラスのvideolessonに対してのlecture mail]
Tkちゃんの姿勢自体はそんなに悪くは無いのですが、やはり上体が少し後ろに反って、弾いていますね。椅子の位置ですが、先週も注意したばかりなのですが、椅子を離して、ちょこんと腰を掛けるような感じで、少しだけ前傾姿勢気味になるように気をつけてあげてください。椅子が近すぎるのですから、後ろからいくら背中を押して前傾させようと思ってもそれは無理ですよ。
[ギュスタフ レオンハルド先生の日本での公開lessonでのお話し]
これは古典楽器センターのチェンバロの製作者である佐藤さん本人から直接、聞いた話ですが、私達のmethodeがピアノの座り方にかなりの神経を使っているということを、教室の発表会や先生方の演奏会をお手伝いしていただいて、実際に見られていた佐藤さんが、私に話してくれました。
[ギュスタフ レオンハルドが日本で芸大生Cembalo科の院生達の公開レッスンをしたときに、佐藤さんも通訳兼調律師として公開講座に付き合ったそうです。
しかし、その10回以上行なわれた公開レッスンは、1回目から、一度も、そして一人もCembaloを弾かせる事は無く、椅子の座り方を延々と指導するだけで、やがてCembalo科の学生達は、『何で、私達が椅子の座り方なんかを、習わなければならないの?!』とその不満は、頂点に達していたそうです。
佐藤さんは、ギュスタフ レオンハルドが言っている「正しい椅子の座り方やチェンバロを弾くときの正しい姿勢がなければ、正しいチェンバロの音が出せることはない。」と言う主張は、全く同感で、一生懸命椅子の座り方を指導しているギュスタフ レオンハルドに対して、彼の言っている事を理解しようとしない芸大生たちの不満を冷ややかに、私に語っていました。「日本人は全く・・・」 ・・・と。]
チェンバロの弾き方と同様に、ピアノを学習する一番初期の段階で、正しい椅子の高さを身に付けないと、いくら練習しても、正しいピアノのタッチ(正しいピアノの音)を作る事が、出来なくなってしまいます。