Seitz concerto Op.15 

               付録 Landlerの形式について


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前書き
・・・・・・・studentconcerto(学生協奏曲)というgenreについて

・・・・・初歩の教材としてのVivaldiのviolinconcerto a moll Op.3Nr.6についての問題点

余談(芦塚音楽研究所の生い立ち)

Vivaldi・methodeからstudentconcerto・curriculumへ

finaleとPrintMusicの困ったお話

orchestraversionのSeitzについて




laendlerのお話


Friedrich Seitzの生涯



前書き(初歩の教材に対しての意識)
日本人に限らず、音楽家は初歩の教材を小馬鹿にする傾向がある。
Beyer教則本等は、その最たるものであろう。
でも、曲が簡単に作曲されているからと言って、内容がつまらないという事では、ないのだよ。
そこは、やはり100年、200年の風雪に耐えた音楽なのだから、それ相応の中身は詰まっているのだよ。

という事で、一般的には、教育教材としての価値しかないつまらない音楽としての、Diabelliの連弾曲集や、Burgmullerの曲集、果てはCzernyのEtudeにしても、初歩の教材を馬鹿にしない音楽に対しての意識が誠実なプロの演奏家が演奏すると、ビックリするほど実に素晴らしい曲なのだな!!
日本人では、昔、私と一緒の高校の同級生である三角氏が、後ろ盾をやっていたピアニスト(ピアニスティン)の神谷郁代さんが、彼女のエッセイに同様の話を書いている。是非、引用したいのだが、著作権の関係で差し控えておく事にする。

Pianoの曲集では、初級終了時から中級への導入としては、古典派のsonatineというgenreの曲が、無数と言っても良いほどに、優れた作曲家の手によって作曲されている。
MozartやHaydnのsonateやBeethovenのsonateを演奏する前の、準備のための教材として、のみならず、古典派の演奏法の学習のために、ある程度、初歩の段階から学習出来る素晴らしい申し分のない教材ではある。

「・・・ではある。」という含みを持たせた表現の意味は、Pianoを指導する指導者が、sonatineを古典派の教材の導入として、「正しく古典派の様式とその奏法を指導すれば・・」という、含みが残されているからである。
それ以前に、sonatineやsonateを、子供の学習用の簡単なイージーな教材としか思っていない日本人の音楽家の場合には、古典派の奏法と言っても、時代考証や理論が理解出来ているとは思えないのだがね!?

という事は、将来、演奏家を目指す音楽の学習者が、国際Pianoコンクール等を目指す時に、予選の課題曲がChopinやRakhmaninovからの曲の場合には、日本人のKandedat(出場者)は、殆どの人が問題なく予選を通過出来る。
しかし、国際コンクールの中には、もっとacademicな音楽コンクールも数多く存在する。
出場者が、正しい音楽の基礎の論理的な理解と表現を要求するために、予選の課題曲に、MozartやHaydnの曲を出題するコンクールがある。
そのようなコンクールでは、不思議な事に、日本人のコンクール出場者は、総崩れをするのだ。
sonatineやsonateの曲を、馬鹿にして来た、当然の結果なのだが、本人達にとっては、HaydnやMozartのような古典派の曲を、・・・技術的に簡単な曲を・・・どう演奏すれば、評価が得られるのか、全く分からないからである。
Pianoの評価が技術のみであるという日本の音楽界の拙さが暴露された一瞬である。
「音楽は技術だけではない!」というと、途端に、情緒論や感情論になってしまって、「人間性・・云々」という話になってしまう。両極端なのだよ。まして、人間性はコンクールの評価の対象にはならないのだよ。当たり前だけどね・・!
音楽の演奏の技術(所謂、Technik)は、表現する内容を伝達するためにある。古典派の奏法は古典派の技術の上に成り立つのだよ。古典派の演奏表現をするためにそれに対応したTechnikを駆使するのだ。
そこの所が日本人の指導者には分からない。
困ったものだ!!

ヨーロッパで勉強している我々にとっては、日本人の音楽に対して抱く幼さはlacherlich(お笑いである!)としか、思えないのだが・・・??!!


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studentconcerto(学生協奏曲)というgenreについて
Pianoの教育教材として、古典派の優れた作曲家達によるsonatineが無数にあるのに対して、violinの教材では、そういったsonateやsonatineの教材は殆どないし、しかもその内容的にも、初心者用のlessonの教材とはなりにくい。
具体的にいうと、古典派の奏法に必要な技術を網羅していないのだ。そういった意味では、violinやcelloのsonateは、演奏会用の曲であって、初心者用の教材とは成り得ない。

そこは、やはり良くしたもので、時代は少し下るのだが、ロマン派の時代から近現代に至る時代になってからは、弦楽器には、studentconcertoという独自のviolinconcertoとしての教育用の教材がある。
所謂、studentconcertoという弦楽器独自のgenreがあるのだ。
(勿論、Pianoのsonatineの量程数多くある分けではないにしても・・・、である。)

ただ、Pianoの場合には、MozartやHaydn、Beethovenに至るまで、優れたsonatineの教材を残しているのだが、ロマン派では、弦楽器の作曲家は、少し寂しくなってしまう。それは、時代的なものであるから、致し方ない。

その分、ヴァイオリニストや優れたcelloの指導者等が、とても優れたstudentconcertoの教材を残している。
教室でお世話になっている作曲家のstudentconcertoの楽譜や資料等の教材は、総て椎名町の事務所に置いてあるので、私の自宅には、資料はない。
だから、取り敢えず、頭に浮かぶ(思いつく)だけのstudentconcertoの作曲家の名前を列挙してみよう。
先ずは、有名どころの作曲家からであるが、少し難しい曲ではあるが、・・・
ビオッティ
ベリオ
シュポアー
クロイツェル

少し簡単な曲になると
ジット
ポルトノフ
ハブ
キュッヒュラー
日本のヴァイオリンの教材の楽譜に掲載されている、リーディンやアッコーライ等の作曲家も勿論、入れなければならない。
リーディング
アッコーライ
簡単なのだが、エキゾチックでオリエンタルな雰囲気の曲の
ドルドラ

studentconcertoの範囲を越してしまうかもしれないけれど、
ビュータン
等の作曲家がいる。


勿論、当然、genre的にはSeitzのstudentconcertoも同じ教育教材(studentconcerto)の作曲家の括りに入る。
勿論、思いつくままの、名前の列挙だから、落としはあるかもしれないが、それは悪しからず!
上記に列挙したのは、あくまでviolinのstudentconcertoであって、celloやKontrabassのstudentconcertoは掲載してはいない。
celloは、celloで、優れた指導者が、素晴らしい教材を残している。
ここでは、studentconcertoというgenreの説明がメインなので、そこの部分は省略します。

Pianoのsonatineも同じではあるが、そういった初歩のversion(教育教材)の曲は、有名な演奏家の手による演奏をCD等で聞く事は基本的には出来ない。

ただ、非常に例外的にパールマンを含めた数人の名演奏家が、数曲、録音していたので、参考までに、何曲かを下にlinkさせて掲載しておきます。

私が持っているCDと同じ演奏が、You Tubeにも、アップされていたので、linkさせて、聞けるようにしてお来ました。

You Tubeで、このSeitzの曲を検索してみると、世界中で演奏された膨大なSeitzのstudentconcertoがヒットがするのだが、その殆どがスズキ・メトードの幼い子供達の演奏で、プロの演奏は、先ほどのパールマンの演奏を除いては皆無である。

僅かににヒットしたオーケストラ伴奏の演奏にしても、solisteは、当然の如く子供で、例外的にhitした大人の演奏も含めて、violin教室の先生としての立場で見聞きするとすれば、可愛くって、癒しにはなるのかもしれないが、いちaudienceとして、曲を聴く・・音楽として聴く・・という意味で、その演奏に接するとしたら、とても音楽としては、聴き難く、許し難く、耐え難いものがある。
例外的には、パールマンの演奏がhitした。


両方とも、パールマンの演奏です。
アッコーライとリーディンのviolinconcertoです。studentconcertoの作曲家です。
J.B. Accolay Violin Concerto in A minor - Itzhak Perlman

Itzhak Perlman plays Rieding Violin Concerto in B minor op.35

G. B. Viotti Violin Concerto No. 22 I.Moderato - Itzhak Perlman
https://www.youtube.com/watch?v=qJpgs7RhCHs

Perlman plays Vieuxtemps Concerto 4 (1/4)
https://www.youtube.com/watch?v=rK7WH-unvQk

大変珍しい、往年の名演奏家であり、大作曲家でもあるクライスラーのビオッティのconcerto22番の演奏である。
Kreisler plays Viotti Concerto 22 (Complete)
https://www.youtube.com/watch?v=l3NR7Rkj3GY

私達と同じ、1点支持でベルギー派の演奏で知られるグルミヨーのビオッティの演奏があった。
各楽章毎に独立してupしてあるのだが、
You Tubeは以前は時間の制限があったので、多分、当時は各楽章を分けなければup出来なかったのかもしれない。
Grumiaux plays Viotti Concerto 22 (1/3)
https://www.youtube.com/watch?v=OyfyMe-ViEo 
Grumiaux plays Viotti Concerto 22 (2/3)
https://www.youtube.com/watch?v=OyfyMe-ViEo  
Grumiaux plays Viotti Concerto 22 (3/3)
https://www.youtube.com/watch?v=iJP9SGGjoLc
あまり知らない演奏家ではあるが、参考までに
Giovanni Battista Viotti - Violin Concerto No. 23 in G major
https://www.youtube.com/watch?v=NXF0gVWiOA8
公開日: 2013/04/12
ldo Sisillo, conductor  Accademia I Filarmonici
Mauro Ranieri, violin
Giovanni Battista Viotti - Violin Concerto No. 23 in G major
I. Allegro II. Andante   III. Allegro

後は、その気になって調べると、キリがないようなので、興味があったら自分で調べてください。

参考までに
これはとても可愛い10歳の女の子の演奏です。マジに上手い!!可愛いだけではないようですな!
10 Y.O. Manami plays Viotti Violin Cto No. 22 in A Minor!
https://www.youtube.com/watch?v=NgbAHJlo7KU  

アップロード日: 2007/10/06
Going back in time a little, but Manami was among the winners of a concerto competition at her school. She was 10 years old at the time. 




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ここまで、一流の演奏家がstudentconcertoを演奏しているのを見ると、studentconcertoも問題なくYou Tube等で聴く事が出来るように思われるかもしれないが、それはstudentconcertoの作曲家でもかなりmajorな作曲家の場合に過ぎない。

本当の初歩の教材の作曲家と思われているSeitzともなると、幾ら検索条件を変えてapproachしても、世界中の鈴木メトードの子供達しかヒットしくって、proの演奏は全く出て来ない。

仕方なく、少し検索条件を緩くして、検索のsearchの言葉を「student concerto」としてのみで検索して見たら、今度は、検索が曖昧過ぎたのか・・「Vivaldiのa moll」等・・・迄の曲が検索されて来て、子供達の演奏の中に、何とパールマンのVivaldiのOp.3Nr.6のa mollの演奏が入って来た。

初歩の教材としてのVivaldi a moll Op.3Nr.6の問題点
「それは、それで・・!!」という事で、喜んで、「世界の名演奏家であるパールマンなら、間違いはなかろう」と、さっそく聴いてみると、これが、な、な、な、なんと!聴くに堪えない!!

orchestraのみならず、パールマン自身の演奏もキンキンキャンキャンと、何処かの音楽教室の生徒達の演奏のように鋭く、いかなパールマン・フアンとしても、耳に障る演奏なのだよ。

パールマンの演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=eTPiZup0QmM

教育教材としての演奏なら、それはそれで良いのかもしれないが、バロックの音楽の演奏を正しく伝えなければならないproとしての立場では、少々いただけない。
「これが世界のパールマンの演奏かい??」と思って、その話を教室の先生達にしたら、「パールマンは年をとって、やたらと、Bachや、Brahmsや、baroqueの音楽等の、重厚な音楽に挑戦しているのだけど、パールマンのお得意のgenreというか、専門の分野が違うから、音や解釈が違うから、芦塚先生は聴かない方がいいと思うよ。」と言われてしまった。

確かに、言われてみれば、そりゃぁ、そうだよなぁ??誰しも、得意分野と不得意な分野はあるのもだからね。

パールマンの名誉のために敢えて付け加えておきますが、パールマンはbaroqueや古典派の作曲家がお得意ではないのであって、簡単な作品を小馬鹿にしたり、ナメたりするような不遜で、不誠実な演奏をするヴァイオリニストではありません。楽しい曲をとても真摯にapproachして素晴らしい演奏を私達に提供してくれます。
教室としても、「是非、聴くように!」と推薦している数少ない演奏家の一人でもあります。

余談ー寄り道ー道草(芦塚音楽研究所の生い立ち)

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