砂時計のお話
[前書き]
私の自宅の部屋には、結構たくさんの砂時計が飾ってあります。
しかし実は、自宅だけではなく、それぞれの教室にも砂時計が置いてあります。
・・・・などとお話をすると、まるで私が砂時計のコレクターのように聞こえるかもしれませんが、実際には私にそういう趣味はありません。
あくまで、「必要に迫られて」集めたものなのです。
「必要に迫られて・・」というと、誰でも「自分の仕事用に・・」と思われるかもしれませんね。私の場合には、教室での生徒のlessonや先生方への指導のように相手がいる場合と、自分の部屋に閉じこもって作業する論文等の原稿書きの仕事や、本来的には事務所でやるべき仕事なのですが、自宅に持ち帰って出来る仕事は、事務所ではやらないで自宅に持ち帰って作業をすることにしています。
大概の場合には持ち帰った教室の雑用と自分の仕事を同時進行でします。複数の仕事を同時にこなしていくわけなのですが、その時に私が使用するのは、勿論、砂時計ではなくって、最新式のデジタルタイマーです。
下の2個のタイマーはストップウォッチの役もします。
勿論、私が所有しているデジタル式のタイマーも上の写真のタイマーだけではありません。
私が仕事に行く事務所やlesson室等の各部屋にも、もっと色々な種類のタイマーが置いてあります。それも私の趣味のコレクションのように勘違いをしている人もいますが、これは以前、何度もお話した私の作業を時短するために、仕事を同時進行するために使用するためのタイマーなのです。
例えばlessonvideoをDVDに焼く作業などはDVDレコーダーの機械がやってくれます。
また、パソコンで仕事する時なども、パソコンを作業させようとすると、とても時間がかかってしまう場合があります。そういった時間のかかる作業をパソコンにさせる時には、一台のパソコンにその時間のかかる作業をさせて、別のパソコンで他の仕事をするのです。わざわざ、待っている必要は無いからね。
しかし、ダビングの作業などのように、ダビングが終わっても、映像が終わらない時には無駄な画面を延々と録画してしまう事などもあります。ダビングが終了する前に、終わるタイミングを見計らって、録画をストップさせなければなりません。
そう言った作業のときには、機械にまかせている作業が終わる、5分から3分前には、その機械の前でスタンバイできるように、タイマーをセットしてから、他の作業をするのです。
そのために幾つもの仕事を同時に平行して作業をするときには、自宅のパソコンが3台とも稼動するときがよくあります。
一番奥のパソコンのモニターは、本当はテレビです。AV機器のモニターや
パソコンのディスプレーとして、1台、3役も4役もして活躍しています。
またlessonなどの時間の制約がある場合には、部屋中にある時計や携帯のアラームが作動して、タイムリミットが近づいている事を教えてくれます。時計も部屋に何台あるのか数えた事はありませんが、やはり忙しいときにはフル稼働します。
こういうことを言うと、私が典型的な団塊世代の仕事人間で、いつも大忙しで大変な量の仕事をこなしているように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これまでも何度もご説明しましたように、私は非常にぶきっちょで、一つ一つの仕事を進める事が非常に遅いので、一般の人と同じ速度で仕事をこなせるようにするために考え出した方法なのです。
また近頃は、歳のせいか、病気のせいか、鬱があまりにも酷くなったりして、仕事を全くやりたくないときも往々にしてあります。その時には、自分で仕事をしなくても機械が勝手にやってくれる作業を機械にさせて、自分はワインでも飲みながら、テレビでも見ながらパソコンやAV機器が勝手に仕事をしてくれるのを待っています。
楽なものです。
[時間の把握]
仕事を上手にこなすには、時間をうまくコントロールできなければなりません。
そのためには、その仕事をこなすのには、どれぐらいの時間がかかるのかという事を把握出来なければなりません。しかし、作業にはエンドレスの作業もたくさんあります。特に、私達が普段やっている音楽の勉強等ではこれで終わりという事はないのですから、「今日はここまで」、という「自分自身で納得の行く」までの練習をするには、「どれぐらいの時間が必要か?」という見積もりも大切です。あてずっぽうで練習をしていてはいけないのです。
学校の宿題などの子供の勉強を時間で決めている家庭が殆どではないかと思いますが、実はそれは、時間が正しく把握できるようになってからの話なのです。宿題が10分で終わったとします。後50分の時間が余っています。そしたら、すぐに次の課題に移れますか?それとも、予習とかしてだらだらしているのではないですか?「この宿題は、何分かかるから、先にこの課題と、この課題をこなしてから、最初の課題をしよう。」とか、時間の計算している子供は正しい勉強の仕方、時間の扱い方をしています。
そしてそのためには、時間を正しく把握できる必要があります。
時間の把握も、訓練によってかなり正確に把握する事が出来るようになります。
[時間を把握するための訓練]
さて最初の「砂時計の話」に戻って、何のために「たくさんの砂時計があるのか?」ということですが、砂時計でなければならないという理由は後で改めてお話するとして、まずたくさんの砂時計を教室においている理由は、時間という概念を子供達に教えるためなのです。
子供達の勉強力を育てたり、音楽力を身に付けさせるためには、まず子供達の集中力を身に付けさせる事がもっとも重要なのです。子供達が集中力を身に付ける前に、まず必要な事があります。
それは時間の把握です。まず1分、3分、5分という単位の時間の大切さ、重要さを知る事が必要なのです。
つまり、1分という時間の中で、どれだけたくさんの事が出来るのかということを、子供自身が知る事こそ、子供の集中力を育てる上でのpointになってくるのです。
これは余談ですが、昔々、私が大学の先生をやっていることのお話です。その頃は卒業生の小学校の先生達にアフターケアーとして、教育指導のadviceをしていました。その頃、若い先生達から聞いたお話なのですが、「授業をしていると、子供達が15分単位で落ち着かなくなる」というお話がよく出ました。
それはお分かりのように、テレビのドラマ等でのコマーシャル・タイムのせいなのです。
テレビでは15分おきに1分間、若しくは3分間、5分間の休憩が入ります。
普段からテレビを見つけていて、テレビが日常生活の一部になってしまっているテレビっ子達は、無意識にでも、そのインターバルが身に染み付いてしまうのです。
「それが何故、問題なの?」
実は教育的には、テレビっ子の抱える問題点は、数多くあります。
例えば、先程の授業の例ですが、子供の場合には、大人の場合と違って一度失われた集中力を取り戻す事は、殆ど不可能に近いのです。大人の場合には5分間の休憩を挟んだとしても、仕事に戻ると、すぐにもとの集中した状態に戻る事が出来ます。しかし、子供の場合には全く最初からもう一度集中させる事を、やり直さなければならないのです。
本当はテレビっ子達は、とても恐ろしい問題をたくさん抱えています。しかしそれは心理学の領域になるので、ここでお話をする事は控えて起きます。
[目を瞑ると言う事]
子供達のオケ練習のときに、まだオケを始めて間もない子供達に目をつぶらせて[1]、「30秒経ったと思ったら、手を上げて。」というゲームをします。
練習の時に、「何分で仕上げるか?」 という時間の把握をさせるためと、集中力を身に付けさせるためです。
最初は30秒という単位でも(或いは、全く訓練されていない子供達では、10秒という単位でも)なかなか出来ないのです。
基本の単位は1分と3分です。5分間、子供の目をつぶらせて置く事は基本的には無理です。
「目をつぶらせる。」という事も、訓練しない状態では、とても出来る事ではありません。
私の生徒達は、音楽に集中させるために、目を瞑らせたままで演奏させる事がよくあります。
そういった訓練された子供達は5分間や10分間でも目を瞑ったままで居る事も平気です。
普段のピアノの練習が、そのまま集中をするための訓練になっているからなのです。
私が子供のピアノを指導していると、時たま「暗譜」がとても苦手な生徒来ることがあります。
その場合には、私はよくその子供に「暗譜はしなくてもよいから、目を瞑って弾こう。」といいます。そうすると子供は安心して、目を瞑ったままピアノを弾きます。暗譜は苦手でも、目を瞑って演奏する事は難しい事ではないのです。(・・・・???)(私は暗譜の苦手な生徒には、小学3年生ぐらいまではよくこの手を使います。それ以上の年齢になるとだませないからね。)
それとは別に中級から、上級になるとアイ・マスクを付けさせて演奏させる事がよくあります。全く、目を開いて演奏しているときと変わりません。(ヴァイオリンの生徒には、基本的にやらせません。ヴァイオリンの場合には、立って演奏するから、ふらついたら危険だからです。)
[砂時計のお話]
ここで再び砂時計のお話に戻りましょう。
先程もお話したように、訓練されていない子供達には時間という概念がありません。
1分でも、3分でも、所詮は感覚的なものであり、嫌な事ならとてつもなく長い時間だし、好きな事ならどうしようもなく短い時間です。(子供というよりも、大人も同じかもしれませんね。)
先生が、ある箇所を子供に3分間で弾けるように練習させるのには、本当はその前に3分間という時間の持つ長さを体感させる必要があります。
そのために使用するタイマーは、デジタルのタイマーの方がより正確で良いように思われるかもしれませんが、3分間という時間の単位を認識させるのには、秒単位で正確である必要はないのです。
それよりも、砂時計のように時間がだんだん等間隔で減っていく・・・というその事を目で見る事が出来ると言う事が大切なのです。
ですから、初歩の生徒を指導する時には、「3分間あなたにあげるから・・」とか言って、3分の時間が減って行く様子を目で確認できるように、砂時計を子供の目の前に置いて見せてあげる事が大切なのです。
砂時計ならば、子供が時間の単位を目で感じる事が出来るからです。(デジタルではそういった感覚が身につきません。一度頭の中で時間を換算するという事は、幼い子供ではまだ出来ないからです。)[2]
「目に見えないものを、見えるものに変えて指導する」と言う事は芦塚メトードの原則論なのです。