通常、私達が演奏している楽器は、baroque楽器と比較して、通常は、modern楽器と呼んでいる。
baroquecelloやbaroqueviolinに比べて、細かい違いが色々とある。
勿論、楽器本体だけではなく、弓にも色々と多くの違いが見受けられる。
現代の弓は、強い張力を作るために、弓が逆に反っている。
そのために、弓の毛が、演奏している弦ではなく、他の弦に触れないように、楽器本体の駒のRがきつく、駒の高さもbaroqueの駒に対して高く作られている。
通常、弦楽器は、その楽器自体がbaroque時代に作られた楽器であったとしても、現代の音量に対応できるように、色々な改造がなされているので、楽器が製作された年代で、baroque楽器と呼ぶ分けではない。
baroque時代に作られたviolinであったとしても、現代仕様に改造されていれば、その楽器はmodernviolinであるし、逆にbaroque時代の楽器の復刻として、作られた楽器であれば、現代に作られた楽器であってもbaroqueviolinなのだよ。
それに、一度、modern仕様に改造された楽器を、また再び、baroque仕様に直す事もある。
楽器にとっては、いい迷惑なのだがね。
上がbaroquebowで、下は比較のための現代bowです。
この上のbaroquebowは特別に古いTypeのもので、(とは言っても、このtypeの弓の方がorthodoxなのだが、現代のviolin奏者のように、3点支持で、強い圧力を弓に掛ける演奏法では、一瞬でこのtypeの弓は折れてしまう。
日本のviolin奏者のみならず、3点支持の弓の持ち方をする世界の弦楽器奏者では、この弓を弾くことは出来ない。
そのために、Tartiniが開発したというTartinibowで演奏するのが普通である。
(でも、Tartiniがこの現代bowを開発したという証拠はないし、時代考証的にもう少し後世にならないと無理である。)
上は先程と同じ種類のbaroquebowである。
下は所謂、Tartinibowといい、長さや張力も殆ど、現代bowに近いものである。
だから、こんにちのviolin奏者やcello奏者の強い3点支持の奏法にも対応が出来る。
baroqueviolinや、baroqueのviolincelloでは、楽器の駒のRは、自然ななだらかなRのままだし、弓も逆反りではなく、自然な反りなので、楽に無理のない重音奏法が出来る。
寧ろ、よく現代の弦楽器奏者がよくやる、力を込めて圧力を掛けて、重音を弾く方が難しい。
だから、baroque楽器では、重音は、柔らかく美しく響く・・・はずなのだが、こんにちのviolin奏者やcelloの奏者は殊更に、力を込めて重音を弾く。
現代violinの、そういった癖が身に付いてしまって、取れなくなってしまっているのであろうが。
2弦を同時に弾いて、圧力の変化だけで、音の移動を表す奏法がある。
こういった特殊な奏法を弦楽器では、legatoのbowing(バリオラージュ)《⇒シゲッティによると》・という。
Cembaloの場合にも、そういった奏法に近い奏法があって、その奏法をfinger pedalという。
こういったpreludeに見受けられる和音のような演奏法は、baroqueの弦楽器の独特な奏法なのだが、先程も言ったように、改造されたモダン弦楽器でそれを演奏するのは難しい。
Bachの無伴奏チェロによる組曲の第1番 G のpreludeは、そういったlegatoのbowing(バリオラージュ)のオンパレードで作られているのだが、その奏法で演奏する奏者は皆無である。
私達が音楽大学に在籍していた頃は、未だ、Rundbogenとはどういうものか?という事は、全く知られていなかった。有名な医学者であり、音楽学者であり、且つ、Organの奏者でもあったSchweitzer博士も、Rundbogenに関しては、間違えた記述をしているのだが、それは、実際の音楽博物館によって調査して得た知識ではなく、昔の論文を鵜呑みにした誤った解釈から来た誤解である。同様に、Munchenの音大の教授でもあったOtto
Buchner教授の間違えた解釈で自ら製作したRundbogenの演奏もある。
無伴奏のviolinの曲が、あたかもOrganのように響いて、それはそれで、素晴らしいのであるが、教授は、自ら製作したこの弓で無伴奏を全曲制覇する予定だったのだが、演奏が難し過ぎて、半分の曲も演奏出来なかった。
無知の時代のあだ花であろうか・・・。
legatissimoの奏法の譜例