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先生達の演奏会に、くっついて行って、蘊蓄を話たりしていると、「現代のviolinとbaroqueのviolinでは、何が違うのか?」と一般のお客様から
質問されることがよくあります。

確かに見た目的には、baroque violinと言っても、ネックの長さが少し短い事と、ネックの幅が少し広い事と、ネックのカーブが緩やかな事ぐらいでしょうかね。
後、見た目的に分かる事と言えば、弦がガット弦を使用する事や、肩当てや顎当てを使用しない事ぐらいかもしれませんね。

つまり、見た目には、現代ヴァイオリンとbaroqueのヴァイオリンの違いは、余程、楽器を見慣れていないと分からないと思いますよ。


でも、実は、violinはストラディバリウスやアマティ、シュタイナー等の名工達がヴァイオリンを作っていた頃の楽器は全部baroqueviolinだったのですよ。

・・・というと、先ず驚くのは、一般のお客様よりも、ヴァイオリニスト達です。ハッ、ハッ、ハッ!

最初から、ストラディバリやアマティや、ガダニーニ等の楽器製作者が現代の自分達の演奏している楽器を作った、と、信じて疑わないのですからね。

しかし、本当の本当は、当時の時代のviolinはbaroque仕様だった・・・・、
・・・・・それが、当たり前の話ですよね。

それが、時代が下るにつれて、音楽が段々民衆の物になってきて、大きな演奏会場で演奏されるようになってきた時に、それまでのヴァイオリンに改造を加えて、より大きな音が出るように工夫をしたのです。

より強い張力を持つ弦に楽器が耐え得るようにviolinの内部には力木という添え木が付け足されました。ネックもより長くして強い張力を出すように改造しました。
しかし、力木は、音の響き(共鳴)を抑えてしまいますから、baroqueの豊かな響きは当然失われて、引っ張って強引に響かせた音になってしまいます。
つまり、baroqueviolinとmodernviolinでは、音の響きそのものが違うのですよ。

現在私達が使用している楽器は、殆ど全ての楽器に対して、そういった改造がなされています。
例え、ストラディバリウスが作った歴史的な名器であっても、今日までに、色々な改造がなされてきた、あくまでも現代violinなのです。
というか、今現在私達が目にするヴァイオリンは殆どの楽器がモダン仕様に改造されたものであって、通常、baroque仕様のヴァイオリンを目にする事はないでしょうね。

という事で、一般的の解説では、ストラディバリの製作した楽器をこんにちの技術を駆使して、改良して、今の名器になった、と堂々と宣ふ人がいて困ってしまいます。

私は生徒に何時も言う事があります。
私の箴言です。
それは、「一つを得るためには、一つを捨てなければならない。」ヨージーの法則です。けだし、名言でしょう??


という事で、ストラディバリも、より大きな音量を得るために、繊細な美しい独特の音色を失いました。

・・・・とは、言っても、大きな音量に耳慣れてしまった現代人は、その繊細な美しい響きを聞いても、頼りない弱々しい音としか、思わないのかもしれません。

弦楽器や管楽器の同種類、同族の楽器はとても美しい純正の響をもたらします。
しかし、有りとあらゆる楽器の集合体であるフル・オーケストラでは、たった一つの音を同じpitchで演奏する事も難しいのです。

F菅であるホルンにとっては、オーケストラのtuning toneであるAの音はF調の第3音になります。
しかし、B菅のクラリネットでは、Aの音はtuning不可能なBDurの導音の音になるのです。
つまり、B菅の楽器をAでtuningすると、B♭の音は正しく取れる事は有り得ないのです。

オーケストラには、その他にEs菅の楽器やetc.・・・etc・・・!!という事で以下省略・・・・!!

「はい!皆でドの音を出してみましょう!」  
勿論、いきなりは無理ですよね。
学校オケ等では、ドの音を揃えるだけで、1時間掛かって・・・・も、揃わない事の方が多いのですよ。
先生の方が諦めたりしてね。

「ああ〜!今日のドの音はいつもよりも高めか・・・!??」  てな感じかな??
詳しくは、ホームページの別のページにも少し書いてありますので、参考にしてください。

baroqueviolinとは、運良く、まだ何の改造もなされていない楽器か、baroque時代の様式のそのままに、現代に新しく作られた楽器か、或いは、今の楽器を元のbaroque様式に戻したviolinの事をいいます。

もっと、ややこしい事は新しく現代に作られたviolinをモダンヴァイオリンと呼び、古い100年以上前に作られたヴァイオリンをオールドヴァイオリンといいます。

つまり、ストラディバリラディの楽器でも、現代のヴァイオリンに改造されたものは、単なるオールド・ヴァイオリンであり、baroque時代に作られたからbaroqueviolinと呼ぶわけではありません。

また、当たり前の事ですが、baroqueviolinとして、現代に作られたヴァイオリンは、baroqueviolinであっても、モダンヴァイオリンなのです。
(つまり、モダンとかオールドというのは、作られた時代を指す分けで、baroque仕様だから、オールドとはなりません。言葉の定義が違うという意味です。)


地味で目立たない楽器ですが、この楽器もbaroqueviolinです。

baroqueヴァイオリンでの演奏と現代のヴァイオリンでの演奏の一番大きな違いは、勿論、ガットの弦と柔らかな弓の醸し出す美しい柔らかな音色かもしれません。

しかし、演奏のスタイルの方が全く今の解釈とbaroque時代の解釈では違います。
まづ、先程もお話したように、和音が純正調の響きで美しいです。

きらびやかな装飾音を付けて演奏したり、演奏者のその場での即興等、同じ曲でも演奏者が違ったり、演奏の時間が違うと同じ演奏者でも全く別の解釈をします。全く別の曲のようになってしまうことも、めづらしくはありません。
それが当たり前の演奏なのです。


そこも全く同じ解釈を要求される現代の演奏のスタイルとは違います。
baroqueの音楽には、失われてしまった音楽の原点(ルーツ)があるのです。


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2014年迄に新たに購入された芦塚先生のbaroqueviolinの色々

                

  

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