弦楽器の「楽器選び」
紹介料
選定料
鑑定料
PianoやKeyboardの「楽器選び」
巷の音楽教室の先生の場合
私がPianoの紹介をしなくなった理由
Keyboardについて
中古の楽器を選ぶ場合のお話
特定の楽器に対してではなく、中古という考え方についてのお話ですが、
参考までに:
音楽を学ぶ人達の常識として、このPageで予め知っておかなければならない事があります。
それは、「楽器選び」という考え方は、弦楽器の場合と、PianoやKeyboardの場合では、全く別の考え方であり、それは、同じ「楽器選び」という言葉で、一括りにする事が出来ない・・という事なのです。
Pianoを習いたいという人達の場合、多くの人は家にPianoを持っているcaseが多いので、Pianoを先生に査定して貰うという事は、あまりありません。
Pianoを学ぶ場合でも、家に楽器(Piano)があるから、習うというパターンが殆どなので、楽器を選ぶという事に、価値観を感じる事はないのです。楽器(Piano)を買い換えるにしても、丁度、車の機種を買い換えるimageと言った方が良いもかも知れません。
PianoやKeyboardの場合には、「楽器選び」は、メーカーの型番の中から選ぶのであって、基本的には、色々な楽器の中のbestchoiceの一台をselectするという意味ではありません。
また、Pianoを買う場合には、その種類(rank)で、ある程度の値段が決まります。Pianoの場合のrankは、弦楽器のそれとは全く違って、Pianoその物の種類に依る、という意味です。
Pianoの種類は先ず大きくuprightPianoとgrandPianoに分かれます。
uprightの購入を希望する人達では、お金を出したとしても、基本的には100万以下を選ぶだろうし、音楽の専門家を目指して、憧れのgrandPianoを買うとしても、通常は、200万を越す事は少ない。
同じ専門家でも、proという職種を目指して努力する人達は、Pianoであっても、steinwayやBosendorferのPianoになるので、500万超にはなります。
反対に、趣味で、安くても、ちゃんとしていれば、中古のuprightPianoでも良い・・という事なら、、50万以下で、普通に買える。
ということになると、紹介料という考え方も、選定料という考え方も成立しない。
中古のPianoの場合には、餅は餅屋で、私は調律師の人に任せているので、私が紹介をする事も選定する事もない。
弦楽器の場合には、もしお父さんお母さんが昔習っていて、楽器があったとしても、サイズが違ったり、メンテナンスが出来ていないので、新しく購入した方が良いというcaseが殆どです。そういった所でも、「楽器を選ぶ」という価値観が全く違うのです。
それに、Pianoの場合の楽器の選び方と、弦楽器の選び方は、全く違います。
弦楽器の場合も、大別すると、Pianoと同じような、rankがあります。
見た目的には、殆ど分からないのですが、一番安いviolinは、ベニヤ合板でプレスして型どりをしたviolinがあります。
2番目は、殆ど同じrankの楽器なのですが、ベニヤ合板を機械で削り出したviolinです。
それから、板はちゃんとした板になりますが、削り出しはコンピューターで器械で削って、仕上げだけを職人がするという、所謂、コンピューターviolinのrankになります。
これぐらいでも、100万円までのrankです。
こういった楽器をお稽古用のviolinという事で、一般的には、student-violinという言い方をします。
100万〜120万ぐらいから、所謂、手作りのviolinになります。
つまり、手作りのviolinの値段は100万から27億ぐらいまでの範囲になります。
には、楽器に掛かる費用はPianoとは全く違うし、楽器に対する考え方も違う。
趣味としても、その入口がより専門的なのだよ。
子供が弦楽器を始める場合には、当然、安い楽器を「お試しset」で買い与えて、それで、音楽教室の先生に入会すれば良い、と思うのが普通かも知れない。
という事で、ネット等で、超安い楽器を購入して、それを持って音楽教室を訪れる。
しかし、それは全くの無駄であり、勘違いでもある。
本当の意味ではPianoでもそうなのだが、弦楽器の場合には、特に、メンテナンスが必要なのだ。
ネットで買った弦楽器をメンテナンスしれくれる所はないし、あったとしても、ちゃんとした楽器のメンテナンスよりも高くつく。つまり、半年、1年もしない間に、ちゃんとした楽器を購入した方が、安くつくのだよ。
教室で楽器屋を紹介するのは、(楽器屋を通じて楽器を購入するのは)購入した楽器店のメンテナンスがしっかりとして、信頼のおけるお店だと、信じているからであって、そこには楽器店との相互信頼があるのだよ。その長年の信頼関係を崩すようなトラブルメーカーの生徒が入会した場合には、入会をお断りする事もあるのだよ。
勿論、弦楽器の場合も、音楽を趣味として捉える場合には、50万以下の楽器でも、やぶさかではない。
値段ではなく、その価格で良い楽器に巡り会えれば、それで充分だろう。
しかし、弦楽器の場合には、100万以下の楽器は、趣味の楽器にしか成りえず、専門家としての使用には耐ええない。
音楽大学やproを目指す生徒の場合には、500万以上、1000万以上のクラスの楽器を購入する事も珍しい事ではない。
学生オーケストラの学生も、150から200ぐらいの楽器を、自分でバイトして買う生徒もよくいる。
しかし、その値段は、趣味にしては高価だし、音楽大学を目指す生徒達にとっては、中途半端に安い楽器となってしまう。学生オーケストラの生徒が、幾ら、頑張っても、音大生の楽器には届かないのも現実で、そういった楽器は学生オーケストラの世界では、取引の可能性はあるが、音楽を目指す人達には、練習用の楽器としても、難しい。
また、弦楽器の場合には、楽器自体もハンドメイドのために、一つとして同じ物がない・・、その楽器の一つ一つが個性的であり比較も難しいという事も、楽器選びのネックの一つであります。
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日本人の場合には、楽器を先生に選んで貰うという事に、然程(さほど)の、価値観を持っている人は少ないようだ。
しかし、弦楽器の場合には、生徒が先生に生涯の楽器を選んで貰う場合には、生徒父兄は、先生に対して、かなりの高額なお礼を払うのが常識である。
この名目は、紹介料であったり、選定料であったりする。
生徒や父兄が師匠に渡すお礼であるのだが、勿論、この両方を兼ねての「お礼」なのだがね。
この金額には、暗黙の了解というか、決まりのようなものがある。
通常は、楽器の値段の、1割であったり、2割であったりする。
という事で、もし、violinが600万であった場合には、その2割は120万にもなる。これは幾ら何でも法外だと思うのだがね。そこには、上限と下限の常識(音楽界の常識が一般の常識とどれだけ通用するかは分からないとしても)は、それなりにある。
しかし、一般常識からすると、かなりの高額になるは、否めない事実ではあるのだが。
という事で、私も音楽教室を作る前は、音楽の世界に進む生徒達だけを指導して来たので、そういった音楽界の暗黙のルールには従って来た。当時は、結構な身入りになったものだ。
しかし、音楽教室を開設してからは、一般人を対象にして、音楽を指導するので、流石に音楽界の常識は趣味の人達には、通用はしないので、この「紹介料」や「楽器選定料」は、やめてしまった。
という事で、今は交通費(所謂、顎足)だけを頂いている。
それに、上限は、音楽の世界に足を踏み入れる分けなので、ある程度の音楽界の常識の範囲だとしても、下限はそうは行かない。
もし、「初めてset」が15万なら、音楽界のルールでも、お礼が1割という事は、1万5千にしかならない。
私の住んでいる江古田は、どこの楽器店であったとしても、1時間内で行く事が出来るので、交通費も往復6千円程度で済む。という事は、顎足にギリギリ、セーフだよな??
でも、他の先生達を見ると結構、遠くから、楽器選びに来ている。
「初めてset」であるとすれば、顎足も出ない事になってしまう。
音楽教室の先生も職業であるので、社会奉仕は良くない。
この金額の楽器を私達が査定に行く事は、基本無い。
私達の教室では、この程度の楽器に対して、先生が査定に行く事はないとしても、極めて真面目な先生は、初心者の「初めてセット」のviolinを、10台ぐらい並べて、一台、一台checkをしていたのを、何度か見た事がある。
「真面目な先生だな!?」と、感心したものだ。
しかし、それは、それだけの意味があるのであろうか??とは、思うよ。
安い「初めてset」のviolinは、ベニヤ合版のプレスで作ったり、削り出しであったとしても、コンピューターと機械で削る量産品なので、一台一台の違いは、選定をする程の違いはない。
「でも、楽器の当たり外れはあるんじゃあないですか?」
それは、もっともな質問ですよね。
でも、そのために、信頼の出来る楽器店に頼むのですよ。
送って来た楽器が、ほんの少しでも、問題があれば、即、交換してくれるし、勿論、送る前のcheckは、私達よりも、(そこは、《餅屋の》・・業者の目なので)、厳しいですよ。勿論、信頼をして送ったとしても、私達の目が厳しい事は重々承知の上の付き合いなのでね。
高額の選定料を払って、師匠に楽器を選んで貰うのは、師弟関係の尊厳以上に、そんなに意味があるのだろうか?という疑問があるかもしれない。
そこで、選定料と紹介料という言葉にして、楽器選びのノウハウの説明をしたのだよ。
選定料というのは、分かり易い。
同じような楽器が何台もある中から、bestchoiceを選び出すのは至難の技であるからだ。
勿論、有名な東京都のorchestraのコンマスの奏者ともなると、楽器選びを、師匠に頼む事は、もうない。
という事で、自分の楽器が気に入らないから・・と言って、楽器屋に、自分の楽器を売るように委託して、自分は楽器探しに専念をしていた。
その楽器は、見るからに、顔が悪い。・・・色も茶系で、輝きがないし、音も今三である。
という事で、楽器屋が「このままでは売れないから」と言って、色は黒にニスを塗り直して、調整を施して、して、陳列棚に展示した。
そのコンマスの人が、再び楽器店を訪れた時、「この楽器は良いなあ!」と、感心して喜んで買っていったよ。
そのコンマスの人は、未だに、自分の弾いている楽器が、昔、自分が弾いていた楽器である事は知らない。
オケの団員は、全員その事を知っているのにね。アハッ!
それに対して、紹介料というのは、分かりにくい。
楽器店を紹介して、勝手に行って買えば良さそうなものだから、楽器店を紹介するのに、お礼がいるのかよ??・・と、なってしまう。
そこは、チョッと違う。
名のある楽器店に、超大金持ちの学生がviolinを買いに行ったとしても、それは「一見(いちげん)の客」に過ぎない。
京都辺りの料亭では店にも入れてはくれない。
それなりの値段を出せば、それなりの楽器はちゃんと出してくれるかもしれないが、掘り出し物の楽器を出す事はない。(まあ、出したとしても、分からないだろうがね。)
芸大の教授ともなると、毎年一人は、一千万クラスの楽器を生徒の誰かが購入する。
そうなると、年間1千万の売上のお得意さんなのだよ。 だから、少々のわがままには付き合ってくれる。
私達の教室は、巷の音楽教室に過ぎないのだから、そんな高価な楽器を買う人は極めて少ない。
それこそ、何年か(2,3年・・)に一人の割合かもしれないね。
しかし、(薄利多売の法則で・・)塵も積もれば、なんとやら・・で、私達の教室の売上も、年間の売上に換算すると、芸大の教授に遜色のないぐらいの売上があるのだよ。
だって、芸大の教授が、楽器を売り上げるのは年間一人でも、教室の生徒の売上は、かなりの人数になるからね。
それで、紹介料や選定料等々を貰わなくても、楽器店からは、色々と配慮して貰える。(もっとも、先生にはお金は入らないのだがね。)
結構、みんなわがままを言っているのだが、それがまかり通っているのだからね。
芸大等の、有名教授に師事して、その先生の元で、紹介料を払って楽器を買ったとしても、結果的には、一見(いちげん)の客よりも、随分、安く楽器を買う事が出来るのだよ。
つい先日も、教室の生徒で、私の選んだ楽器を買った親が、ネットでその楽器の値段を調べていて、「200万以上安い」と、驚いていた。(それくらいの高額の楽器になると、外国のカタログにその楽器の略歴が載っているからね。100年前、200年前と、履歴を調べて行く事が出来るのだよ。そこがPianoとは全く違う世界だな。)
しかし、ここで、疑問・・!!
どうしてカタログの値段よりも、200万も安く買う事が出来るのか?
だって、カタログは、業者価格ではなく、利ざやの無い実際の価格なのだからね??
じゃあ、どうして??
勿論、これには理由がある。
小さな楽器商人の場合には、楽器を購入する時には、オークション等でも、一点買いをする。
それでは、楽器の値段は高くなるし、転売しても利潤は少ない。
だから、小さな店で状態の良い楽器を購入すると高めになってしまう。
勿論、それは、大手の楽器商の場合だが、億を単位にオークションや、取引をする楽器商は、買取は基本、倉庫買いである。一点買いをする場合には、その楽器が億単位の場合だけなのだよ。
つまり、Stradivariのような、名器を買う時だけだよ。
これは美術商も同じなのだよ。
オークションに出かける前には、現金が欲しいので、売れ残った物を安く放出する事もあるが、その場合には、良い楽器は既に売れた後の売れ残りになってしまうので、美味しい話は少ない。
お店と親しくなって、取引が何十年も続いていると、クライアントのワガママで、「お金はこれぐらいしかないけれど、非常に良い楽器が欲しい。」と無理難題を吹っかけても、機嫌が良い時には、時々、「これ、持って行っていいよ」と、掘り出し物をくれる。
「どうして、そんな事が出来るの??」って??
つまり、楽器は倉庫買いなので、その楽器を安く売ると、その瞬間、他の楽器の値段が上がるだけなんだよ。
つまり、「倉庫全体で幾ら」なので、私が安く楽器を購入すると、他の楽器の値段がその分、上がるのだよ。
でも、楽器の値段が上がると、その楽器は売れにくくなる。
だから、そこが、長年の取引上の信頼の関係なのだよな。
勿論、安く買ったから、その分厳しい約束事がある。
安く購入したのだから、他の店に下取りに出してはダメなのだよ。
ちゃんと、元の店に戻すのが、当たり前でしょう??
ある店と長年の取引があると言っても、、音楽大学の教授達とは違って、教室では、一つの楽器店と契約を結んでいる分けではない。
その理由は、生徒達には、楽器を初めて買う生徒もいるし、趣味の生徒もいる。
音楽大学を目指したり、proを目指す生徒では、楽器の値段が、月とスッポン、笑える程違う。
その生徒の将来の目的に応じて、求められる楽器の値段、種類はそれぞれまちまちであるからだ。
楽器店は、同じ弦楽器の専門店でも、それぞれ、取り扱っている楽器のrankが違う。
また、その楽器のrankに合わせて、そのお店のメンテナンスの金額や、下取り等の条件が変わって来る。
proを相手にしている楽器店でも、鈴木のviolinを買う事も出来るし、「初めてset」も買う事も出来るのだが、残念ながら下取りはない。
そういったお店では、鈴木のviolinを下取りしてオーバーホールしたとしても、利潤は出ないからだ。
初心者や趣味、或いは、学生オーケストラの学生を対象にしているお店では、鈴木の楽器でも、ちゃんと下取りをしてくれる。
オーバーホールをして中古の鈴木も売っている。
だから、私達の教室では、一つの楽器店に依存している分けではなく、三つの楽器店と取引をしている。
勿論、三つ、とは言っても、それだけの楽器店だけ・・という意味ではなく、良い楽器があれば何処にでも行く。
そういう風に、色々な楽器店と取引をしているのは、楽器の種類やrankによって、それを扱うお店が違うからなのだよ。
proの演奏家達が来る専門店には、練習用の楽器は、基本は、売っていないからだよ。
それぞれが専門分野なのだからね。
それにproを対象にしているお店に「初めてset」のメンテナンスを頼んだとして、仕事が幾ら丁寧で完璧でも、「初めてセット」の楽器に、高い修理費、メンテ費を請求されたら、父兄はビビってしまうだろうからね。
音楽大学の教授ともなると、選定料も半端ではない。
基本、その楽器の値段の1割である。
つまり、100万の楽器を生徒が買うと、10万の謝礼が必要になるし、1000万の楽器を購入した場合には、100万の謝礼が必要となる。
でも、その楽器で職業とするのだから、その金額も当然かもしれない。
amateurとproの世界の金銭感覚の落差なのだよ。
まあ、我々、音楽教室に取っては、天文学的な数字だなや。
選定料という言葉が、よく勘違いされるのは、鑑定料という言葉だ。
音大生達が高価な楽器を購入する場合には、「その楽器が正真正銘の本物である」という証明に、楽器の鑑定書を付ける事がある。
この「鑑定料」は世界的に決まっていて、楽器の価格の1割になる。
つまり、楽器の価格の1割で「その楽器が正真正銘の楽器である」という事を専門の鑑定士が証明する訳なのだ。
多くの音大生は、楽器を購入する時に、必ず、この鑑定書を付けさせる。
しかし、世界に誇るスイスの政府の鑑定で鑑定したStradivariの多くが、偽物であった、という事が後に分かって、鑑定の真実が揺らいでしまった事もあるのだから、私的に言うと、鑑定書はあてにはならない。
・・というか、全く信じてはいない。
何処かの大手の宝石店が潰れた時に、その宝石の価値が二足三文であった・・という事が、社会問題になった事があった。
でも、保証書と言うのは、そのメーカーが保証する訳であって、それが社会的に通る分けではないのは、当たり前の事だと思うがね。