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G 実技試験(主科試験、専攻試験)
いわゆる主科(専攻楽器)の試験です。学校によっては、主科を、一次試験、二次試験というふうに、分けて実施する学校があります。この場合は一次試験に不合格 の場合は、二次試験が受けられません。また音楽の一般教科(@〜F)の合格者のみが、実技試験を受けることができるという学校もあります。
試験は通常
音階(ハノンより)
エチュード (ツェルニー5。番、ショパンのエチュード等)
バッハ (平均律より)
課題曲 (ショパン、リストなどの技巧的作品数曲)
の四部分から構成される場合が最も多く、その総合の得点で実技試験の評価をします。
また、エチュードのかわりにベートーベンやモーツァルトのソナタなどを課題に出す学校もあります。
ヴァイオリンや声楽、作曲なども、上記のピアノと同程度の難易度の課題が出題されます。
(’96年度東京芸術大学 ピアノ科)
第1回
(a)J.S.バッハ:平均律ピアノ曲集(1巻および2巻)より任意の■1曲(プレリュー
ドおよびフーガ)
(b)ショパン:練習曲Op.1。およびOp.25より2曲選択
〔注〕演奏はすべて暗譜とする。繰り返しは省略する。時間の都合で演奏を一部省略すること もある。曲順は各自の自由とする。
第2回
下記(a〉および(b)により,それぞれ選択する。
(a)下記のソナタ群より1曲選択(全楽葦を準備のこと)
ハイドン:(1)c−moll,Hob.XVI/20,〈2〉F・dur,Hob.XVI/23,〈3〉h・moll, Hob.XVI/32,〈4〉As−dur,Hob.XVI/46,〈5〉Es−dur,Hob. XVI/49,(6〉C−dur,Hob.XVI/50,〈7)Es・dur,Hob.XVI/ 52 .
モーツァルト:KV284〈205b),309(284b〉,311(284c),310(300d),33(300h), 331(300i),332〈300k),333(315c〉,457,533/494,570,576
ベートーヴェン:Op.2,7,10,13,14,22,26,27,28,31,53,54,57,78,81a, 90
(b)下記の(イ)(ロ)の作曲家群の作品より1曲または数曲を組み合わせて15分 程度のプログラムを提出する。
(イ)シューベルト,ウェーバー,メンデルスゾーン,ショパン,シューマン,リスト, プラームス
(ロ)フオーレ,ドビュッシー,ラヴェル,スタリャービン,ラフマニノフ,プロコフイエ フ
〔注〕演奏はすべて暗譜とする。繰り返しは省略する。時間の都合で演奏を一部省略するこ ともある。〈b)の曲順は各自の自由とする。
(’96年度東京芸術大学 ヴァイオリン科)
第1回
(A) 音階 Carl Flesch:ScaleSystemより
ト長調(G dur) ホ短調(e mOll) ニ長調(D Dur) ロ短調〈h moll)
イ長調 〈A Dur) 嬰へ短調(fis moll)
以上六つの調より一つの調を試験日程掲示日に掲示により指定する。演奏範囲は下記のとおりである。
第5番全部(J=104〜120以下),第6・7・8・9番を冒頭の4小節のみ,第10番は 全部(」=50〜60以下)
すべてレガートとし,リズムやスラーはC durに準ずる。ただし,重音のスラーは 1拍ずつとする。音階のフィンガリングは自由とする。
〔注〕指定された速度の範囲を厳守すること。指定したテンポの範囲を守らない者に対しては,弾きなおしをさせる場合がある。
(B) N.Pagallini:24Capricesのなかより,第2,11番、以上2曲のなかより1曲を試験日程掲示日に掲示により指定する。
(C)L・v・Beethoven:Romance F・dur Op.5。〈初めから第33小節まで)
〔注〕すべて暗譜とし,繰り返しなしとする。時間の都合により一部を省略させることがある。楽 譜は何版にても可
第2回
(A)次のうち,任意の1曲を選んで演奏する。
M.Bruch
Violin Concerto No.1 g moll Op.25
A.Dovorak
Violin Concerto a moll Op.53A.GlazunovViolin Concerto a mollCadenzaの終わりまでE.LaloSymphonie espagnoled moll Op.21F.MendelssohnViolin Concerto e moll Op.64N.PaganiniViolin Concerto No.1 D Dur Op.6Cadenzaの前までC.Saint−SaensViolin Concerto No.3 h moll Op.61J.SibelitlSViolin Concerto d moll Op.47P.TchaikovskyViolinConcerto D Dur Op.35Cadenzaの終わりまでH.VieuxtempsViolinConcerto No.4 d moll Op.31H.VieuxtempsViolinConcerto No.5 a moll Op.37Cadenzaの前までH.WieniawskiViolin Concerto No.1 fis moll Op.14Cadenzaの前までH.WieniawskiViolin ConcertoNo.2 d moll Op.22
(B)J.S.Bach:無伴奏パルティータ第3番 BWVlOO6より,Preludio(=104〜116の範囲とする)
〔注〕すべて暗譜とし,繰り返しなしとする。時間の都合により一部を省略させることがある。(何版にても可)
以上が音楽大学受験に必要な科目ですが、上記の全教科が各大学で出題されるわけではなく、それぞれの大学によってどの教科が出題されるかは異なります。
各学校の出題傾向とその対策、およびその他の細かいご質問は直接音楽教室の先生にご相談ください。
まとめ
以上のように各々の音楽大学によって、試験内容が異なるので、早めに受験したい音楽大学を決め、その受験内容に即応した受験勉強をすることが望ましいと思います。一般大学のように受験の直前に希望校を変えることは、音楽大学では大変むづかしいことだとおもいます。だいたい受験校を決めるタイム・リミットは受験一年前ぐらいだと思います。
(課題曲は、入学試験の半年前ぐらいに発表されます。)
3. 受験カ リ キュラム終了後の科目
これまでに述べてきた科目の他に、受験を助ける教科があります。直接には受験科目にはないけれども、その他の教科を勉強することによって、入学試験のためだけではなく、一般社会にでてからの後にも、音楽生活に役たつというばかりではなく、大変必要になる科目です。
以下に、その教科を列挙します。
a.音楽史
b.音楽概論
c.和声学
d.対位法
e.ゲネラル・バス
f.オーケストレーション
g.スコアー・リーディング
h.チェンバロ奏法(ピアノ科のみ)
以上は、受験カリキュラムを終了した生徒が学ぶ次の教科になります。
当教室でソリストをめざす人や、教室のインストラクターをめざす人は、上記の科目はマスターしなければなりません。
3. 音楽高校受験について
一般的には音楽大学受験するよりは音楽高校から受験した方が楽だといわれているようですが、音楽高校の入試課題では、一般高校と同じ一般科目(数学、国語、英語、理科、社会等)が含まれ、それらに付け加えて音楽関係の科目(楽典、聴音、新曲、コールユーブンゲン、実技等)が行われます。しかも、楽典等は基本的な問題なので、難易度ははとんど大学のものとかわりません。その為に勉強しなければいけない教科が大学を受験するときよりも増えてしまいます。
一般科目に自信のある人は音楽高校から受けた方が有利ですが、その場合でも前記の音楽の科目数は音楽大学と変わりません。そのため音楽高校の受験生は、他の一般高校を受験する子供たちと同じように塾に適ってしては、音楽の科目が受験に間に合わなくなってしまいます。その為に音楽高校を受験する生徒は、一般の塾に行く事もなく、(楽典、聴音、新曲、コールユーランゲン、実技等を各先生方に習うとしたら一週間が殆ど塞がってしまい、肝心要の主科の勉強をする時間を捻出することも難しくなります。そして各教科の勉強をするとしたら、学校の勉強をする時間は全く無くなってしまいます。ましてや塾などとはとても考えられません。しかしながら不思議なことに、全く学校の勉強をする暇もなく音楽の科目に専念しているにも係わらず、音楽高校大学を受験する生徒の一般科目の成績は非常に良いのが常です。なぜ一般教科を全く勉強しないにも係わらず、音楽を受験する生徒は学業の成績も良いのかということについては、別の教育論文「ピアノと成績」の中で詳しく述べていますので、そちらを参照してください。結論としては一般科目に自信が無い人は、大学から受けた方が有利だと言えます。
前述のように音楽大学の入試課題の一般科目は、たいていの学校は国語と英語だけにとどまります。しかも内容は教養問題であって、どちらかというと就職試験の課題に準じている所の方が多いようです。
専門教科となる聴音、楽典、新曲の内容は学ぶべき範囲が限られているので、どんなに難しい問題を考えようとしても、ひっかけ問題として出題の仕方をひねるぐらいのことしかできず、内容的にはその範囲を越えることはなく、より難しくすることができません。
真面目に勉強をきちんとやりさえすれば、確実に得点がとれる科目です。
又、聴音や新曲についても、一旦できるようになってしまえば、それ以上難しくなることもありません。その為、聴音、楽典、新曲に限って言えば、音楽大学入試の得点は勉強をしっかりしてきた生徒とそうでない生徒の得点がはっきりと分かれてしまいます。
勉強してきた生徒にとっては、専門教科となる聴音、楽典、新曲などは全て得点ですが、そうでない生徒の得点は各教科の平均が40点を切るような惨憺たる得点です。
実技では百点と言う得点は絶対に出ません。いろいろな先生方が審査をするので、ある先生が90点を付けたとしても、別の先生が60点とかで結局平均されたありふれた得点にしかならないのです。ある教授が「こういう風に弾けば絶対に得点を取れる。」と言ったとしても、別の教授は「そういう弾き方は絶対に間違えている。」と言います。これが大学です。いろいろな解釈があって良いのですから。(コンクールなどでもある先生が90点を付けると別の先生は必ずといっていいはど60点を付けます。全部の先生が80点をつけることはまずありません。)教授神話はここでも崩れます。大学受験の秘訣は一般教科や音楽の実技以外の確実に百点を取れる教科で得点を取っておくことなのです。
そして実技を及第点を取っておけば確実に大学に合格することが出来ます。
受験生へのアドバイス
受験生に「一点の大切さ」と言うことを良く話ます。
受験生の得点の分布図があります。相関グラフとなります。
図を見て分かるように合否のボーダーラインは一番人数の集中する少し上になります。
例えば65点がボーダーラインで、定員が200名だとします。65点以上の受験
生が195名いました。定員に5名足りません。64点の所を見ますと50名います。
私立大学ではこの50名の家庭に電話をします。「大学に幾ら寄付をして頂けますか。」寄付の多い順に5名入学させるわけです。これは裏口入学でも何でもありません。正規の話です。
たった一つのケアレス・ミスを無くせば不必要なお金です。64点を65点にすればよいのですから。
入学試験は落とすための試験です。選別するための試験とも言えます。ですから汚い文字や不確実な音符などのどちらか判断に困る場合は間違いの方に判断します。ですから、五線紙などはみ出した音符などの無いように、見やすく丁寧に書くことが大切です。