最後の4小節はすごい早いtempoで弾きまくる人が多いようですが、chopinはrit.と指定しているし、たぶん、連桁の24と言うことで、passageのように思い込んでいる人達が多いのではないでしょうかね?でも、最後の2小節の右手の動き(拍)は決まっているので、連桁は本当はその前の2小節に18個しかありません。と言うことは、言い換えてみると、ただの3連音で、decrescendoでrit.でと言う収めにしか過ぎないのです。
ですから、そんなに早いわけではなく、やさしく丁寧にだんだんゆっくりと収めるように弾いていって、最後に本当の終わりを表すために、少しcrescendoをして終わります。
譜例:
最後の2小節は右手と左手の絡み合わせは、確定しているのです。
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この2小節目の左手がお休みになって、しかも右手はoctave上から3連音で下ってきただけなのです。音楽の基本となる型は、まったく変わっていないのです。連桁をものすごいスピードで惹かれると、音楽のimageが全く別のものになってchopinの意図したものとは、違ったZirkus(サーカス・曲芸)的なものになってしまいます。中にはスピードだけでは物足りないらしく、力任せにffで叩き付けるように終わる人もいて困ってしまいます。
[pedal]
こういったtempoが非常に早いタイプのワルツでは、tempoをスイングさせることが出来ないので(曲が早すぎるために、微妙なAgogikが出来ないと言うこと)rhythm的には通常の3拍子のリズムになります。だから、ペダル操作も通常のスイングしないpedal操作になってしまいます。
日本人のピアノの指導者や学生の場合、ワルツを演奏するときに1拍目から3拍目まで、pedalを踏みっぱなしにする人が多い。そのpedal操作について、私が音の濁りを指摘すると、多くの先生や生徒が「楽譜にはそういう風に書いてあります。」という。
確かに、日本で出版されている楽譜は殆どの楽譜がそういう風に書いてある。日本で権威のある超有名なピアノの指導者の校訂による楽譜ですら然りである。
上記の文章はchopinのワルツh mollのときに書いた文章ですが、これは一般論なので、あえて転載しておきます。特に「仔犬のワルツ」は、曲の速度が速いので譜例のようにpedalingをすると、粒が濁ってしまい、いったい何を弾いているのか分からなくなってしまいます。しかし、不思議なことに世界中で印刷されているchopinのワルツのpedalingはすべてそのように書いてあります。
譜例:
この最初の音符に書いてあるstaccatoは際立たせのstaccatoと言います。あたかもstaccatoのように短く切ると言う意味はなく、むしろ、accentかsostenutoを表します。
このままpedalを守って弾くと、右手のmelodieはにごって何を弾いているのか判らなくなってしまいます。ですから、際立たせのstaccatoを生かした(少しsostenutoが買って聞こえるように)accentpedalを使用して演奏するとよいのです。
譜例:
しかし、どうしてそのように演奏不能な(或いは不可思議な)pedalが書かれていて、何故、今日の有名な校訂者の人達が、そのpedalを訂正しようとしないのでしょうか?
それには大きく、二つの理由があります。
そのうちの一つは、chopinが愛用していたピアノはsingle actionのプレイエル・ピアノで、現代のピアノとは違っていて、殆どMozart時代のforte-pianoの延長線上のピアノであったと言うことです。
Mozartの音楽を聞いても分かるように、forte-pianoは音の伸びがあまりなく、pedalを踏んだとしても、今日のピアノのようには音が濁らなかった、と言うことです。またそれ以外のエラールピアノ等のdouble actionのピアノであったとしても、当時のピアノは今日のピアノと比較するとそれは比べ物にならないように音が伸びませんでした。
以上は「仔犬のワルツ」が作曲された当時のピアノのお話です。
また、そう言った事とは待った区別の話ですが、今日のピアノでも、ピアノはメーカーやその他の色々な条件でpedalの効き具合から、高音域の音の伸びなどが違います。
また調律師にそうお願いして、ある程度は好みに応じて高音域特性を変えることが出来ます。ピアノのメーカーや種類(アップライトかグランドか、或いはそのサイズ)によってpedalingは微妙に変わるので、殆どの先生が生徒達には「耳でpedal操作をしなさい。」と指導します。実はそれは私も同じなのです。
ちなみに、同じsteinwayと言うメーカーのピアノでも、アメリカ系のピアノは高音域特性を短めにする傾向があります。(また音もカンカンと、現代的な明るい開いた音がします。)私は自身は古いtypeのsteinwayが好きなので、ハンブルク(ヨーロッパ系)のsteinwayのくすんだような音色の方が好みです。
つまり、この仔犬のワルツが弾かれた当時には、それぐらいのpedalingをしても、今日のようには濁らなかったと言うこと、またpedalingは書くものではなく、自分の耳で音が濁らないように、無意識に操作するものなのです。
ですが、それは耳とpedal操作が連動している演奏家の場合だけなので、先生(指導者)としては、やはりピアノを学び始めの生徒達には細かくpedalingを付けてやらなければなりません。
たとえ、生徒の家のピアノのpedalと先生の家のpedalの伸び具合が違ったとしても、まず基礎になるpedal操作は覚えていかなければなりませんからね。
[中間部のペダル操作=踏み変えpedal]
「仔犬のワルツ」の中間部はとても優雅でスローなワルツです。ですから、pedalingは比較的踏みっぱなしの傾向があります。通常の出版された楽譜の場合、殆どの楽譜は次のようなpedalingになっています。(日本で出版されているあらかたの譜面もそのようなpedalになっています。)
譜例:
グランドであっても小型のピアノや現代的なピアノ、或いは音の伸びの悪いピアノでは、あまり問題にはなりませんが、高音域特性の優れたピアノ(特に発表会等で弾く大型のコンサートグランド)等は、melodieの上にある音が下の音を邪魔をするという傾向があります。(下に響きこむ音は上のmelodieの音を邪魔することはありません。Melodieの上に来た音が、次に来る下の音を邪魔をしてしまうのです。
つまりこのpassageを上記のようなpedalingで弾こうとすると、常に3拍目の音が、前のmelodieの音の下に来るので、melodieが邪魔されてしまうのです。
pedal操作には、色々難しいpedalingがありますが、Burgmüller等の教則本でまず最初に教えるpedalingは踏み代えpedalとaccentpedalです。
と言うわけで、こういった曲では私達は通常踏み代えpedalというのを使います。
譜例:
参考までに、私の教室の小学校6年生(12歳)の女の子の演奏を載せておきます。
演奏会の場所は千葉県八千代市総合生涯学習プラザの多目的ホールで主催も同じです。
http://www.youtube.com/watch?v=XxrRVaLitZE
こんな小さな女の子でも、2対3の奏き分けは、極普通に出来るという事なのですよ。
頑張ってください。