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余談ですが、私が留学時代に住んでいた Furstenfeldbruck村にあるアザム教会はドイツの誇る国宝の教会で、その教会には、OrganのStradivariと言われるジルバーマンのOrganがあって、誰も触れる事は出来なかったのですが、教会からの依頼で、その門外不出のOrganで演奏会をするchanceがあって、そのOrganで演奏をする事が出来ました。

J.S.Bachのpassacaglia等の名曲を演奏したのですが、passacagliaの低音がその鍵盤よりも低く、本来なら演奏は出来ないのですが、実はこのSilbermannOrganも、実は、その低音域がshort・octaveでしたので、問題なく演奏出来ました。

しかし、アザム教会のジルバーマン・オルガンのshort・octaveは、とても複雑なキー配列で、覚えるのはとても大変でした。

本文に戻って、Hennry purcellのChaconyの最低音のシ♭ですが、つまり、H(シ)の音をshort・octaveで、B(シ♭)にtuningをするのです。
これは、Kontrabassの場合も、scordaturaと言って、最低弦のミの音をレにtuningして弾くのと同じ事です。






basso continuoのoctaveは、わざわざoctaveにしなくても、8feetに16feetのregisterを入れれば、後は単音を弾いても8+16feetの合わさった音がして、それで良いのですが、baroque時代の大型Cembaloでは、木の枠がそれだけの(16feet)の荷重を支えるだけの力がないので、楽器全体に歪みが出てしまい、大型のCembaloでも、一般的には16feetを加える事はありませんでした。
modernのCembaloでは、16+8と8+4という各鍵盤、二列ずつの音列(register)が当たり前なのですが、baroqueのperiod奏法としては、16feetをプラスする事は、基本的にはありません。
勿論、16feetを持っている超大型のharpsichordもあるにはありましたが、それは、とても珍しい例外の楽器になります。

いいね! ・ 返信 ・ 10月10日 10:08

通常は、baroqueのpitchは435ぐらいから425ぐらいまでが相場です。
それ以上下げると、弦楽器にとっては音の鳴りが悪くなるからです。
という事で、この椎名町のspinetは426に調律されている事は、以前お話しましたが、A=443の演奏会pitchの「なんちゃってbaroquepitchの418にpitchを下げるにあたって、椎名町のspinetは、baroqueでしか使用しないので、先生達がmasterclassとして演奏するだけなので、どうせtuningをし直すのなら、という事で、meantone temperamentで、調律する事にしました。

J.S.BachのWohltemperirte Clavierは、本来の意味はWohl(完全に)temperirte(調律された)Clavierという意味で、平均律という意味ではありません。
だから、一般的には、BachのWohltemperirteClavierの曲集は、ヴェルクマイスターの調律か、meantone temperament(中全音律)の調律をして演奏した・・とされています。

ミーントーンで調律された、Mozartの演奏や、Bachの演奏はとても美しいですよ。
是非、一度聴いて見てください。
 残念ながら、発表会では子供達が普通のpitchで演奏するので、平均律のtuningになっています。

・・と、思ったのですが、明日のオケの曲の調性を先生に聞いたら、aが1曲と、dが2曲と、gの調だそうなので、急遽、meantone でtuningする事にしました。
小さな変更なので、会場の舞台での微調整でtuningが出来ると思います。
何かしら、難しいお話になってしまっているようなので、難しさついでに説明しておきますと、曲のmelodieをmeantoneで演奏する事は出来ません。
melodieはピタゴラス音律に近い型で歌う方が美しく聞こえます。
しかし、ピタゴラス音律では、3度は濁って汚いので、和音には純正を使用します。
melodieと和音は別の音律を使うのですよ。
シ⇒ドやミ⇒ファをかなり狭目に取りますが、それを本当はピタゴラス・コンマと言います。
教室では私は、説明するのが難しい(高校生以上じゃないと理解不能な)ので、「導音処理」と(簡単に)言っていますがね。

いいね! ・ 返信 ・ 10月14日 12:03 ・ 編集済み

雨の中を発表会の持ち込んだので、楽屋を余分に借りて貰って、午前中からmeantoneのtuningをしました。
しかし、舞台袖に置いている間に弦がまた狂ってしまい、もう一度お昼休みに完全にtuningをし直しました。
baroque-violinも湿気で鳴らないので、困っていたら、子供達が
「violinが鳴らない!」と文句を言っていました。
勿論、前日の95%の湿度の性もありますが、舞台のgrandが442にpitchが下がっていたので、楽器を442にtuningした性もあります。

一応会場は空調で湿度は65%に調整されていたのですが、楽器は微妙で困ります。
だって、前々日は湿度25%で湿度注意報が出ていたのですよ。
天候の差だけでなく、湿度の差も酷いのですよ。
楽器だけでなく、私のような湿度に影響される人間にとっても、この天候の激変では体が付いていけないよね。
この天候は、天候の変化というよりも天変地異と言った方が良いぐらいで、やっぱりそろそろ地球の終わりですかね〜ぇ??

いいね! ・ 返信 ・ 10月14日 12:10 ・ 編集済み


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Veracini violin-sonate-versionより抜粋 

Cembaloの調律の練習風景

10月21日 15:58 ・ 編集済み ・

以前に掲載していたHennry purcellのChaconyのshort・octaveについての補足説明です。

右の写真は、生徒達のCembaloのtuningのlecture風景(練習風景)です。
このCembaloは、花園教室に置いてあるspinetで、下の音がCまでしかありません。
今現在、椎名町に置いてあるspinetよりも、低音域はキーが1個少ないのです。(勿論、高音域も少ないのですがね。)

前のHennry purcellのtriosonateのChacony gのbasso continuoは、b(♭)が最低音なので、この場合には、c(#)の音が使用されないので、short・octaveでは、C(#)をb(♭)にtuningするか、C#をCにして、Cをb♭にtuningする2通りの方法があります。

私の場合には、tuningが面倒くさいので、c#をb♭にtuningしてしまいますが、もう一つのc#をcに、cをb♭にする方が一般的です。

右側のCembaloの写真は、東京の教室に置いてある同型のspinetです。但し、鍵盤数も全体のサイズも、こちらのspinetの方が大きく、最低音はCではなく、Hまであります。
このspinetの場合には、Hの音をBにtuningすればよいだけなので、楽です。

後でも書きますが、H⇒B⇒Aまであると、大概の音は縮小鍵盤で演奏する事が出来るので、音域的には殆どの曲の低音をoctave上げなくても演奏出来るので、非常に楽になりまです。

Cembaloやspinetの場合には、violinやcelloと同じように、演奏の度にtuningをするので、1個、2個の音を、変える(scordatura)のは問題はありません。

但し、pitchをbaroquepitchからmodernpitchに調律しなおすのは、楽器にとって、良くないし、tuningをしても音が安定しない原因にもなります。
という事で、スライド鍵盤というものが、20世紀の終わりの頃に考案されました。
(つまり、baroque時代には、そういった利便性の物はありませんでした。・・というか、modernpitch自体が無かったので、必要はなかったのですよ。))

それから蛇足ですが、別のコンテンツでも書いているように、今回の10月の発表会では、tuningを平均律ではなく、純正律のmeantoneのbaroqueの調律法で調律しています。

古典調律の話

このお話を真面目に説明しようとすると、まるで、数学の論文のような数式の羅列になってしまいます。
私の古典調律のメモ書きのPageだけでも、100Page以上あって、数式を消して、簡単な説明が出来るように努力はしているのですが、難しい理論を簡単に説明するのは、並大抵の事ではありません。
という事で、print outすらしていない、未だにパソコン上のdataとしてしかなっていません。

先ず、基本的な古典調律のお話として、「どういった調律法があるか?」だけは抑えておかなければならないのですが、その調律法の説明(調律の違い)を説明するだけでも、並大抵の事ではないのですよ。

調律法の色々

 (1)Pythagoras音律
 (2)純正律
 (3)中全音律(アロンのmeantone)
 (4) Kirnbergerの第3調律
 (5)Werckmeisterの調律法
 (6)平均律

「一般的に有名な調律法として」、だけでも以上の調律法があります。
しかし、この調律法の一つ一つも、一つの調律法ではなく、更に、色々な調律があるのです。

その中でも有名なものは、meantoneで言えば、meantone E♭や、meantone D#があります。
何故、そんなに沢山の調律法があるのか?と、いう事ですが、純正の3度を美しく響かせるように調律すると、必ず、何処かの音にしわ寄せが出て、その音を含む和音が合わなくなって、凄い唸り(Wolfton )を上げてしまいます。
そのために、演奏出来る調性を増やすために、二つの調律法を作りました。

私の場合には、Aを基準にして、meantone E♭という調律をしますので、Wolfton はE♭と、A♭に集まります。
その場合には、Asの和音は使用不能になります。

という事で、Hennry purcellのChacony g のU度の和音(N♭6=ナポリの6)の和音は使用不能になります。
meantone E♭は、#三つの調性までと、♭二つまでしか使用出来ません。

そう言った、meantoneのWolfton を避けるために考案されたのが、 Kirnbergerの調律法です。
純正の3度の美しさは失われていますが、その分、調性を選ばなくても良くなっています。

Werckmeisterは、 J.S.Bachの弟子であるKirnbergerよりも古い人ですが、不思議な事に、より平均律に近い調律法になっています。

Cembaloの調律のためには、基本の調律法がありますが、Wolfをある特定の(その曲で使用しない音)に寄せるために、アナログで調律をする事はありますが、普段は、古典調律が出来るtunerを使用して調律します。
私は調律師ではないので、その方が楽なのです。
しかし、特定の調の曲をmeantoneで演奏する時には、Wolfton をズラす必要が出て来るので、仕方がないので、耳で調律をして、Wolfton をズラします。

Pythagorasと音楽の関係は、中々面白い物があります。
音を数学として捉えたので、自然界の理論上の説明が多いのは当然です。
一般的に良く知られているのは、弦長と音の関係です。
弦長の半分にすると、octave上の音が出るし、3分の1では、・・等々です。
先程、出て来た調の時計ですが、その中で直角3角形を書くと、長三和音と、短三和音が出来ます。

しかし、Pythagoras音律とは、そんな単純なものではなく、Pythagoras・kommaと呼ばれる修正の音律を持っていて、melodieとしては、とても美しく響きます。しかし、残念ならが和音としては美しくはありません。
3度が純粋に響かないからです。

https://www.youtube.com/watch?v=FpRYWtDT4oA
今度、教室で購入したRolandの電子harpsichordによる、音律の比較です。
こういう風に演奏されると、結構、分かりにくいのですが、全ての三和音で比較すると一目瞭然に分かります。

https://www.youtube.com/watch?v=fx3PwP6UP5s

響きを純粋に聞くのならこちらのsightの方が良いのでは・・と思います。

https://www.youtube.com/watch?v=DcgAB7oVGmc
Pythagoras音律によるChopinのEtude、「革命」です。

(1)Pythagoras音律
(2)純正律
(3)中全音律(アロンのmeantone)
(4) Kirnbergerの第3調律
(5)Werckmeisterの調律法

(6)平均律

その後(15年11月以降では)、古典調律の種類をもう一つ増やして、Vallottiの古典調律を今は教室の標準の古典調律にしています。
通常、教室で使用する調律は、勿論、平均律を除いたら、古典調律では、meantoneとVallottiの調律の二種類を使用しています。



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古典調律(Facebookからの転載)

pitchのお話のまとめ

話が混乱してくる大きな原因の一つに、ベルサイユピッチというものがあって、結構そのpitchを信奉している人達が多いからです。ちなみに、このVersailles・pitchでは、A=392Hzの低いpitchになっています。
但し、このVersailles・pitchという言葉は、フランス語にも英語にもないそうですから、文献としての信頼性はないので、気を付けてください。

イタリアのorgelではA’=464の高いpitchもあります。
A=440とした場合には、平均律ではA#は466.16 になります。
いちいち説明するのは、面倒だし、netで調べても中々出て来ないので、一応、一覧表を掲載しておきます。
但し、これは音楽のpitchであって、音響学上の標準pitchではないので、注意しておいてください。

一番低いとされるVersailles・pitchは、基準音のGを、一般的なbaroquepitchはGisを、例外的なイタリアのorgelのpitchはA#を、取ることでpitchの利便性を出しています。

教会のpipeorganのpitchが、その町や村の標準のpitchだったのですが、それでは隣の村との演奏も出来なくなってしまうので、ヨーロッパとしての統一のpitchが求められて、1859年のパリでの会議、1885年のウィーンでの会議で、A = 435 Hzを標準として定められました。
今でも、ヨーロッパのrecorder製作者は、パリとウィーンで定められたA=435のpitchを守ってrecorderを製作しています。

AとG#の間のpitchですが、G#までpitchを下げると、弦楽器にとっては、音の張りがなくなってブヨブヨしてしまうので、435辺りのpitchは、弦の張りや撥弦も良いので、歴史的に考えてもそれぐらいのpitchの方が良いのでは??というのが、私の考えです。
教室では、baroqueの演奏は、418のpitchで演奏していますが、教室の標準pitchが443Hzなので、G#は415ではなく、418になってしまうという、単なる便宜上のお話で、主義主張とは無関係なので悪しからず!!


C : 261.6 C# : 277.2 D : 293.7 D# : 311.2 E : 329.7 F : 349.2 F# : 370.0 G : 392.0 G# : 415.4 A : 440.0 A# : 466.2 B : 493.9
C : 523.3 C# : 554.4 D : 587.4 D# : 622.3 E : 659.3 F : 698.4 F# : 740.0 G : 784.0 G# : 830.7 A : 880.0


ちなみに、歴代の音楽家のpitchを参考までに掲載しておきます。
ヘンデルの音叉はA=422.5Hzだった。
Steinの使用していた音叉 はA=421.6だったことから、この値がモーツアルトの使っていたピッチと想像されている
カラヤンの録音された曲のpitchはA=446Hzだったという。これが、いわゆる「カラヤン・チューニング」である。
ストラディヴァリは、A=432Hzで最適の共鳴スペクトラ ムを出したという。他のストラディヴァリも同じ結果が出たそうである。もちろん、ヴァイオリンの経年変化を考慮に入れる必要はあるが、数十年に渡っ て作成されたストラディヴァリウスの最適値がA=432Hzであった

ちなみついでに、現代のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では A = 444?445 Hzが基準とされている

日本の音楽大学の受験のための標準pitchは、A=442で、日本のorchestraの標準pitchとされているのだが、実際上、演奏会場のgrandpianoのpitchは、殆どの場合には、A=443であり、このpitchを日本の演奏会pitchと呼ぶ人もいる。
但し、日本の教育機関である教育大学や教育会館等では、文部省の厳しい締めつけで、未だに440を厳守している。
教育会館の大ホールの場合には、、pitchを443にtuningした場合には、演奏会が終わった後で、440にtuningし直さなければならない。その時間も含めての時間である。1日ホールを借りても、tuningに4時間も5時間も失ってしまうのでは、金額的にも利便性としても無理である。
本当、学校とは困ったものだ!!


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