5. 抜き出し練習とそのpoint
Beyer教則本やBurgmullerの教則本を学ぶ時に、抜き出し練習の躾をしなければなりません。
Pianoの技術が上達するにしたがって、曲数も増え、1曲1曲の長さも長くなり、練習するpointも増えていきます。ですから、通し練習ばかりしていると、練習時間が足りなくなってしまうばかりでなく、練習そのものも、上手く成り行かなくなってしまうからです。
生徒によっては、全く抜き出し練習をしてくれない生徒もいます。私はそういった生徒には曲を渡す時に、最初は曲を渡さずに、抜き出し箇所だけを渡す事にしています。
子供達が間違うところは曲によって大体決まっています。修道尼モニカの3eme Couplet の16分音符の所は、むしろ指使いで引っかかっています。正しい指使いを覚えればそんなに難しくはありません。
一般的には、ロンド形式のように、たくさんの独立した曲が集合して出来ている曲の場合には、子供達は、それぞれのドウブルのカデンツ(終始句)の所で引っかかってしまうことが多いようです。
修道尼モニカの場合には、繰り返しを除くと、6種類のカデンツが出てきます。
Couperinの多くの小品のkadenzは、メトロノームのように正確なrhythmでやると演奏出来ないpassageが往々にして、出てきます。
ちょうど、俳句の字余りのように、拍の中に収まらないpassageがkadenzのphraseには、よくでてきます。
その部分は、拍子として、メトロノームや拍の中に強引に収めるのではなく、拍子を無視しても、曲としてのphrase感を優先させて、正確に、且つ丁寧に、終止のmelodieを終止句として、歌わなければなりません。
また、Couperinの特徴として、(下記の譜例もそうですが)phraseのような、長い一つのカッコ括りではなく、最後の8分音符だけを、ふくらませれば、終止が上手く行く場合もよくあります。この場合は、単にkadenzとしてのrit.ではなく、膨らまし、として、さり気無く演奏すると、rococoのお洒落な感じが出て良いでしょう。
この曲に関してはあらかじめカデンツ(終始句)をキチンと予習させておくと、子供達は問題なく弾けるようです。
譜例:themaのカデンツ(終始句)
後は以下、ドウブルごとに、カデンツを抜き出して、そこの部分だけをあらかじめlessonしておくと良いでしょう。初めての生徒やまだ抜き出し練習に慣れていない生徒の場合には、抜き出し箇所を作る時には、楽譜をコピーをして、切り張りして、スクラップブックを作らせても良いでしょう。
そういった練習法に慣れてきたら、自分で抜き出し箇所を見つけさせるようにします。
6.ドウブルごとの性格の奏き分け
ロンドでもっとも大切な事は、themaとドウブルが1本調子にならないように演奏することです。修道尼モニカでは三つのCoupletが出てきます。その一つずつの独立した曲の性格を三者三様に弾き分けることがとても大切です。 それが上手に弾き分けられたときに、themaに戻った時の安堵感がロンドの醍醐味なのです。
後の注意事項はピアノのlessonの一般的な事項になってしまいますので、修道尼モニカの解説で述べる必要はないでしょう。
Baroque時代の音楽やrococo時代の音楽特有の装飾音の演奏法の導入の手助けになればと思っております。
芦 塚 陽 二 拝
江 古 田 の 寓 居
一静庵にて
2009年9月3日脱稿
追伸:
この文章の反故はメモとしては最も古い反故から立ち上げたものです。このメモの最初の草案は35年以上も前の、音楽教室を創設するよりももっと前の、大学講師時代のものに属します。ですからこの草稿は折に触れてtapeからメモ起こし、ワープロ文章から、パソコンのOCR操作を経てやっとワード文章として、書き起こされたものです。勿論、その都度、文章の変更や修正がなされて、元のtapeの文章とは見ても、見間違う程の改定がなされてきました。いずれにしても、この古い文章が残っていた事すら、奇跡的なことですけれどね。 アハッ!?