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[3:2の弾き方]

49小節目にはそのものずばり、3;2が出てくるのだが、右手のbowslur、強弱、強弱、強弱、と手首を柔軟にして演奏しなければならないのだか、左手の3連音につられて、右手がビッコを引いたり、左手が不自然にあったりする。(これは当たり前の注意事項だがね。)

2:3の弾き方と練習法


テキスト ボックス: 譜例:2対3の最初の練習法
2:3の練習は積み上げが必要なテクニックである。自転車と同じで、一旦出来ると実に簡単なテクニックなのだが

初心者の間は、非常に遅いtempoの場合には1,2ト、3のように6等分して練習する。

そこで2:3の割り方が理解できたら、今度は3連音符だけを弾いて、そこに2つ割の音符を入れるようにする。きれいに入るまでちょっとでもビッコを引いたら、左手のtoriolenだけにする事が大切である。

片手がちゃんと3連音のbeatになっているかを、常にドクタービートなどで確認しながら練習する事。

 

[不自然な左手]

51小節目と52小節目は何故なのか、理由は分からないのだが、4分音符が不自然にlegatoになったりstaccatoをしたりと、一貫性が無く演奏する人が多い。

譜例:51小節から42小節目の左手の一貫性

             ↓抜きのslur        抜きのslur     ↓legato

 

                             ↑左手が右手につられて、

                               4分音符がstaccatoになる。

                                           ↑右手につられて、

                                             左手がlegatoに

                                             なってしまう。

この譜例の1小節目と2小節目の右手は「抜きの音」である。左手が右手の「抜き」につられて、左手の4分音符が軽いstaccatoになってしまう。しかし、その次の3小節目では右手が1小節まるまるlegatoというか、slurなので、左手も同じようにつられて、legatoになってしまうのだ。

というわけで、ここで要求されるのは両手の完全な独立という事なのだ。

 

55小節目の1拍目はmelodieの最後の音である。だから2拍目からkadenzのpassageが始まる。そのための軽いブレスが必要なのだ。同様に56小節目、58小節目の1拍目と2拍目の間にもphraseの切れ目を表すbreathが必要となる。

 

[不自然なaccent]

60小節目からのpassageは不自然なぐらいにforteとPianoを付けさせる先生が多いのには辟易させられる。ForteとPianoは右手に軽いaccentのような上品なforteとPianoをつける。しかし、左手のforteとPianoは既にMozartが、5度圏の頭の音として強調するために、その基音をoctaveで表している。それを更に現代のピアノで破壊的、衝撃的に弾くのはlacherlich(笑止千万)である。Mozartがoctaveで5度サークルの基音を強調しているのだから、forte、Pianoのコントラストをつけるのは右手だけで、しかも優しく・・・でよい。

64小節目から、forteの位置が変わってくるので、迷走してくる生徒が多いし、先生もむきになってrhythmを(ジャズでも弾くように)力任せに弾いている。あほらし!!

baroque音楽のヘミオラのように、ただ単に3拍子の中に2拍子が紛れ込んできただけなのです。

 

易しく簡単に拍子通りに書き直して見ると、下記の譜面のようになります。

 

譜例:64小節目と65小節目の変拍子の書き直し


F:67小節目から70小節目までの指使いは非常に難しい。

譜例:

特に、1拍目の裏のミ♭ソの42の指から始まる指使いは難しい。

これは古典時代の指使いの原則で、下降する音型の時には、下の声部をlegatoするという原則から来ている。

24-12-24-12の指使いは、下声部の音が2-1-2-1-2-1と音をつなげる事が簡単であるからだ。その反面上声部の音は、4-3-4-3-4-3という、3の指の上を4の指が(なるべくlegatoで)跨がなければならない、という難しい技術が必要である。

この指使いは上級者用の指使いであって、初めてMozartに挑戦する子供達には難しい技術である。

私は、古典的な指使いの原則論からは外れるのだが、子供達のために、より簡単な指使い―35-24-13-12、という指使いを好んで指導している。2拍目の裏からの下声部のドーシードは1-1-1-1になって音は切れるのであるが、上声部のmelodieは楽にlegatoが出来るので音楽が不自然にならなくて良い。 

 

70小節の3度がブチブチに切れてしまっていたのだが、それも指使いが原因である。このpassageの指使いは基本的な指使いであり、それを満知哉にしっかりと意識させなければならない。指使いを変えないで、3度の内の上声部の音だけをlegatoさせてみると良い。それが滑らかに演奏出来るようになったら、3度で練習してみて、何処で粒が乱れるかを探すと良い。粒が乱れる後の音を省くと上手く3度が取れるかをcheckする。

また67小節目からの指使いは幾つも考えられるので、その生徒にとってどの指使いの方がベストであるか、より上手く演奏出来るか?・・・を探して見ると良い。

 

82小節目と84小節目のPianoとforteの奏き分けは、octaveがforteを表して、8分音符がPianoを表しています。また、82〜83小節目のPianoのpassageと84〜85小節目のforteのコントラストの奏き分けも、左手がPianoを表す8分音符の単音と、forteを表す4分音符のoctaveの音によって、そのコントラストの違いを表現しています。

つまり、演奏者が殊更必死になって顔を真っ赤にしてforteで弾かなくとも、Mozartがforte Pianoがちゃんとそう聞こえるように、譜面上に書いているのですからねぇ〜。

86小節目から89小節目の左手の16分音符のbeat(粒粒)が正確に聞こえるように弾かなければなりません。くれぐれも不ぞろいにならないように注意してください。

 

90小節、91小節目の2拍目に書かれているsf.(sforzando)は、verschobene Takt(推移節奏)の拍頭を表すsforzandoです。

 

テキスト ボックス: 譜例:拍頭の移動




それを日本人はあたかもaccentのように(私には、けんか腰のように・・聞こえるのだが・・・)、驚くほど不自然に強く弾きます。それがあたかもMozartの意図であるかのように・・・・!!

 


113小節目から123小節目までは5度圏ではなく、Sequenz進行によります。

MozartはSequenzを使用する時に、よくenharmonic(異名同音)を使用します。そのためにあたかも、Sequenzではないように思われてしまいます。

Mozartが転調の天才であったことの証でもあります。

 

譜例:113小節目から123小節目のSequenz進行

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