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[ガンバの古典的な奏法]
それと良く似ているのだが、全く意味が違っていて、その奏法とは非なるものが、ガンバ等の古楽器の奏法に見られる音の出し方、所謂、膨らましである。
これは音が共鳴してきたときに共鳴の響きを大きくするために共振させるという奏法であって、音自体を膨らましているわけではない。
バロックヴァイオリンやガンバ族の楽器が弓の力が弱くって、まだ弓や魂柱の力で音を響かせることが出来なかった時代の奏法である。

 

直接はこの話はpedalの操作とは関係ないのかもしれないけれど、その後押しの癖がピアノのtouchにも言えて、「鍵盤(キー)をしっかりと力を込めて押しなさい。」と習ってきているピアノの先生の多い事、そのために音が死んでいるのだよね。音楽も軽やかに流れないしね。それにしっかりとpedalから足を離してしまうような馬鹿げたpedal操作!
此処まで来ると、もう、言う事はないね!!

 

 

 

②子供にどうペダルを指導したら良いか?

初めてのペダル 

子供達にピアノを指導する時に、いちばん困ることは分数サイズのピアノがないということである。

分数のサイズと言うのはただ単に鍵盤のサイズのみならず、打鍵するときの力も考慮されてなければならない。
私の生徒には、小学校の低学年でもショパンなどの曲を弾く子供もいる。また、低学年でコンクールなどに出演する子もいる。
そうなると、体の大きさとは無関係に、ペダルの使い方を指導しなければならなくなる。

ペダルを付き足台というものも売られているのだが、買って実際に使用してみると、ペダルが実際よりも倍ぐらい重くなって、子供の力では(大人の力でも)細かいペダル操作はとても無理である。ペダルに直接くっつけるタイプのものもあるのだが、アップライトの場合はともかく、グランドの場合にはペダルが大変重たいので、かかとが不安定になって細かいペダル操作は子供にとってはやはり難しい。
指導する側が、逆にペダルの操作を必要最低限に抑えるべきである。

参考までに:

小学校の中学年、高学年ぐらいになってなんとかイスを下げると、足が届くようになった場合でも、かかとがつくわけでないので、やはり細かい操作は難しい。
また身長がペダルまでに充分に足りないときに正しい姿勢をさせようとして、椅子を高くすると、後ろに反ったように座らないとペダルに足が届かない。

こういった事は成長期で年齢的に姿勢が足りないので、仕方がないことなのだが、問題は身長が伸びたときになっても、間違えた姿勢が身について癖になってしまい、正しい姿勢に戻せなくなってしまって、結果ペダル操作に行き詰まるようになる。

逆に椅子をうんと低くして足がとどくようにすると、手がぶらさがりの形になり、手に悪い癖がつく。子供の時にそういった悪い癖が付いたまま、大人になっても不自然な手の形で演奏している人を良く見受ける。

極論として述べるならば、本当に正しいペダル操作を勉強するには、グランドピアノの脚とペダルを短く切るしかない。しかしながらそれでも、グランドピアノのペダルの重さの問題は、解決したわけではない。

参考までに(小学5年生)

椅子をぎりぎりまで下げた状態でも、

足が殆ど、一直線の状態になる。  

 

 

「自宅でのペダルの練習」

日本の家屋では素足に靴下か柔らかいスリッパで練習することが多い。
部屋がフローリングであったとしても、柔らかいスリッパぐらいが関の山であろう。
素足や柔らかいスリッパでは指がペダルを踏む時に曲がってしまう。ペダルは親指では踏むものではない。むしろ親指の付け根の下にあるふくらみの中心がペダルに接する(当たる)ようにするのがポイントである。
親指が曲がると、ペダルを踏むタイミングが遅れてしまう。

発表会などで、正しくペダル操作が出来るようにするには、発表会で履く靴を履いて練習する事が望ましいのだが、畳の部屋や、フローリングでも、部屋を傷つけたく無い人の為に、合板やアクリルボードなどの1畳程度の広さのものを日曜大工店ででも安く買って、ピアノの椅子の下に敷き詰めて、発表会や試験、コンクールの、当日に履く靴と衣装を着て練習をするとよい。

各家庭の事情で、畳の部屋にピアノをおいてある場合や、例え、フローリングでも、硬い靴などで床を傷つけたく無い人は、合板やアクリルボードなどの1畳程度の広さのものを日曜大工店ででも安く買って、ピアノの椅子の下に敷いて練習すると良い。
いずれにしても、発表会や試験、コンクールのためには、当日に履く靴と衣装を着て練習をするのが理想的である。


実際の話でも、衣装などを当日、会場で始めて着てみたら、「腕が自由に動かなかった。」、「背中が破れてしまった。」などと言う冗談みたいな話は、困った事にざらにあるのですよ。

演劇などでも舞台稽古の時には必ず衣装を着たままの稽古をします。
そうすると、それまでの練習では出来ていた事が出来なくなったり、時間のタイミングがずれたりと、色々と問題が出てくるのです。
という事で私も音楽大学受験などを控えた生徒に対して、家で衣装や靴を身に付けさせて練習をさせるという事を良くやります。楽器を演奏する場合には腕や腰が自由に動く必要があります。こういった衣装練習をしたときに、極端なケースとしては、声楽科の受験生の場合ですが、声を出した途端に腰のベルトが切れた、といったような笑い話のような話もあるのですよ。

という事で、ピアノの生徒の場合には、「両手が自由に交差できるか?」と言う点や、或いは、コンサート会場や試験場などが大理石で出来ている場合や、Pタイルなどで出来ている場合には、思っている以上に靴(ハイヒール等が)滑りやすくなるので、事前に靴によく慣れておくひつようがあります。
部屋でピアノを弾く場合は、必要以上に靴(ハイ・ヒールなどが)が滑りやすくなるので事前に慣れておく必要があるのです。

私達の場合には服を作る時には、腕を交差させたり、上方に上げたりして洋服の寸法を採ってもらいます。そこは、音楽家の服を作りつけている職人さんは、pointを良くご存知です。

「そこまでは・・??」といわれる方でも、最低底の固めの(曲がりにくい)スリッパを履いて練習する事をお勧めします。

ペダルの指導法

踏み替えペダルとアクセント・ペダル(基本の2つのペダル)

step1.踏み替えペダルの指導法

Ⅰ⇒Ⅳ⇒Ⅴ⇒Ⅰの和声進行の中で、あらかじめ子供にペダルを踏ませておいてⅠの和音を弾かせて、ペダルを踏んだまま、次にⅣの和音を弾かせる。
子供にペダルを踏み換える前に音を鳴らすと、音がいかに濁るかをしっかりと把握させるのだ。
響きが濁ったら、ペダルを踏み換えさせて濁りのなくなった響きをしっかりと把握させる。
つまり濁らないペダルを操作を指導するためには、濁りの響きをしっかり教える事が基本なのだ。
濁りが分からなければ、濁らない響きが分かるわけはないのだ。

以下、同様にⅣ⇒Ⅴ、Ⅴ⇒Ⅰと練習させて、最後にⅠから最後までがスムーズに出来ているかを確認する。
その段階が学習できたら、次には、逆にⅣの和音を弾くときに、和音と一緒にペダルを踏もうとすると、Ⅰの和音とⅣの和音の間に、すき間ができてしまうことを理解させる。
私自身は子供にペダルを指導する時には、「ペダルを踏む。」と指導するのではなく、和音を弾くと同時に、「ペダルを上げる。」と指導する。また「Ⅳの和音を聞いた瞬間には、観客にはわからないように、弾き手は音の濁りが聞き取れなければならない。」と指導する。こういった微妙な音の濁りが聞き取れるようになると、ペダル操作で音を濁らせる事はなくなる。

先程も注意したように、ペダルを上げる時には、しっかりとペダルをはづさせるためにペダルから足が離れるまで、上げさせる先生がいる。
しかし、一旦必要以上にペダルを上げる癖が身についてしまうと、ペダルが戻る時にバタンバタンと音がするようになってしまうし、早いペダルチェンジが出来なくなってしまう。




日本の音楽大学で教えているドイツ人の先生なのだが、ペダルを踏む時に、床を叩き鳴らすようにドタドタと踵からペダルに叩きつけている先生がいた。
それにはさすがにその先生の演奏会を聞きに来ていた、(ペダル操作に関して無神経な)女子音大生ですら苦笑していた。そのケースも演奏の曲の音よりも、ペダルのドタドタの音の方がうるさかったのだよ。
外人でも、そういうのがいるんだね!いや、ホンと!!

ハッ、ハッ、ハッ!


 

step2.ペダルの指導

初歩の段階では、ペダルは必要最小限にとどめるべきである。また、子供にペダルの感性が身につくまでは、指導者が楽譜に細かくペダルの指示を書き込むべきである。
日本版の楽譜に書いて有るペダルは、ほとんどの場合にペダルの使い過ぎで、和音が濁ってしまって、聞くに耐えなくなってしまう。
ピアノの先生達が、日本版の楽譜のペダル記号を鵜呑みにして、生徒にそのまま指導してきたとすると、日本人のペダル中毒の原因も理解できる。
もし子供がペダル操作で、すばやい踏み替えが出来ない場合には、ペダルは必要最低限にして、踏み替えの困難な所は、ペダルを使用しないようにした方が望ましい。

作曲家の中で、子供のために作曲をしたBartókやKabalevsky等の極々限られた例外を除いては、作曲家はペダルを例外的にしか書かない。
それにはちゃんとした理由がある。 
先程も触れたように、演奏するピアノがアップライト・ピアノの場合と、グランド・ピアノの場合では、ペダル操作が全く違うし、同じグランドピアノでも家庭用の小型のグランドピアノとコンサートホールのフルコンサート・グランドピアノ(所謂、フルコン)では、ペダルのかかり具合が全く違うのだ。
つまり、そういった演奏するピアノの指定をしない限り、ペダルの踏み替え位置を書いても、無駄なのだよ。
私のレッスン室にもかなり大きなグランドピアノが入っているのだが、発表会の会場などでは、それよりもさらに大きなセミコンやフルコンが入っている。
しかし、ピアノの大きさによって、ペダル操作は違うのだから、ペダルは書きようがないのだ。
教室のレッスン室にフルコンが入らないわけではないので、フルコンのピアノを入れれば、それで問題は解決するように思われるかもしれないが、それでは部屋に対してピアノの音が響きすぎて残響に拠る「音割れ」が起こって、聞くに堪えられなくなってしまうのだよ。
狭い部屋にグランドを置く時には、音割れをしないように、部屋の壁を吸音式にしなければならない。そうすると今度はヴァイオリンやフリュート等の楽器が困るんだな、これが!
 

もし子供がペダル操作で、すばやい踏み替えが出来ない場合には、ペダルは必要最低限にして、踏み替えの困難な所は、ペダルを使用しないようにした方が望ましい。 

 

step3.ペダルの本来の意味

殆どの人が勘違いをしているのだが、ペダルとは音響を増幅するための装置であり、音を持続するという意味は二次的なものである。ましてやレガートシモを表現するために、ペダルを使用することは邪道である。

ペダルを使用するか否かにかかわらず鍵盤上で、指でペダル効果を出さなければならない。

バロック時代の音楽には、そういった指で表現したペダル効果を記譜上でも描き表したものが結構見受けられる。それを「書かれたfinger pedal」と言う。

譜例8.平均律 1巻No.1プレリュードハ長調

この曲を、ペダル操作だけで演奏しようとすると、3拍目の頭や2小節目の頭の拍では音が1個だけになって、音の質量感が疎密を繰り返すという、すこぶる不自然な音楽になってしまう。そのためにチェンバリスト達はfinger pedalで次のように演奏する。

譜例9.

(finger pedalを楽譜に書き表すと以下のようになる。)

記譜上でfinger pedalを説明しようとすると、大変難しそうな譜面になってしまうが、実際は、鍵盤上で説明をすると、とても簡単である。つまり、5声部とみなして自分の出番まで、延ばしっぱなしをすればよいだけである。

(よっぽどハンドベルの方が難しい。)

次の譜面は私が子供達を指導するときに、説明のために使っている、finger pedalの簡単な表記である。

譜例10.finger pedalの簡易譜

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