つまり、この時代では、弦楽器とピアノ譜の違いはまだあまりないのです。そのために、ピアノに弦楽器の奏法が混じり込んでいるのです。
譜例5.良くない!弦楽アンサンブル的ではありません。
これはピアノの譜面を弦楽器に丸写ししただけなので、可能性はありますが、『う~ん!』という感じです。「間違ってはいないけれど・・・。どちらかというと・・・」ぐらいかな?
①ハーフペダル
ハーフ・ペダルと言われるpedalは通常2種類あります。pedalを踏み始めてpedalが利き始める場所の事を呼ぶ、ハーフ・ペダルと
音楽大学等で言われている、踏み込んだペダルを戻していって、完全に戻らない曖昧な(少しだけpedalの残ったままになるpointもハーフ・ペダルと呼びます。
後者のpedalをレガート・ペダルと呼ぶ事があります。
[いかにも奇妙なレガート・ペダル]
留学から日本に帰国して来て、音楽大学の子供科の生徒を何人か指導する事になって、参考の為に、初めて子供のコンクール、つまり、小学生や、中学生の学生コンクールなどを聞きに行きました。
その時に、バッハのinventionや平均律などの課題を、チェンバロ奏法やオルガン奏法などの、音と音をつなげて演奏するためのレガートシモ奏法の、(Bachはカンタービレ奏法とも呼んでいましたが、)多分、その真似なのでしょうが、(ペダルを軽く半分だけ踏み替えることによって、完全に音が代わらないように、音の切れを悪くして演奏する注,1 )いとも奇妙なレガート・ペダル(ハーフ・ペダル)と呼ばれる奏法をする子供達が沢山いることに驚かされました。
その後、音楽大学の公開試験等でも、同様の奇妙なハーフ・ペダルを普通に使用している生徒が沢山いることに驚かされました。
注,1)ハーフで踏み替えならまだ良い方で、中には踏みっぱなしという生徒もいました。それでもコンクールの予選を通って行くんだよね!これは許せない!!pun!pun!
[補足説明]
オルガン奏法、チェンバロ奏法、クラマー奏法(クラマー・ビューローのEtüde)も基本的にはlegatissimo奏法が指導上のconceptで、《俗にチェルニー奏法とも呼ばれる》チェルニーのleggiero奏法と一線を画しています。)
その演奏法は、次の音を弾く瞬間に前の音を残して、ダブらせることによって、ベタベタのlegatoを表現します。
そのために、音が変わった瞬間に音の濁りが生じます。
日本流の如何にも奇妙なハーフ・ペダルでは、その音の濁りをイミテーションするために、ペダルで音が残るか残らないかの、微妙な位置で右ペダルを踏みっぱなしにすることによって、音の濁らせて、legatissimo奏法を真似しているのです。
このpedalの使い方はlegatissimo奏法というピアノの演奏上の基礎を勉強していない生徒のための、ただのごまかし弾きにすぎないのに、それでも日本を代表する○○コンクールの予選を通過して行くのだから、審査員の音楽的な感性やピアノ演奏上の基礎力、コンクールのlevelに対して、私としては全く信頼が出来ません。不誠実極まりない!!
日本のピアノの指導者たちはそれが外の音楽の世界、音楽大学を頂点とする音楽の教育社会は、一般の音楽の世界とは全く違った世界観で成立しています。
100年前のちょん髷に裃姿で、ヨーロッパの音楽にカルチャーショックを受けて驚いていた当時の人達の考えがそのままに、その当時の教育が未だに何等修正改良される事は無いままに、その教育が行われているのです。それは、指導者を絶対とする、反抗や過ちを指摘する事が許されない封建社会が、音楽社会では未だにまかり通っているからなのです。
そんな奏法が今現在でも通用する正しいピアノの奏法であるとでも思っているのでしょうかね?
[もう一つのハーフ・ペダル]
ハーフペダルには今の解説のように半分だけ踏み込む場合と、逆に完全に踏んだ状態から、半分だけ戻す使い方もあります。
ロマン派の音楽のようにペダルをたっぷり使う曲で、しかも早くペダルを踏みかえなければいけない場所によく使用されます。
この2種類のハーフ・ペダルは、両方とも同じくらいの頻度で使用されるので、非常に紛らわしい。出来れば区別して、別の名前をつけた方がよいと思っています。
バルトークなどの近、現代の作曲家はハーフ・ペダルどころではなく、1/3や1/4等のペダルが作曲家自らの手によって、指定されているのは周知の事実であります。
それも、高度なレベルを要する曲ではなく、比較的初歩の子供の教育を対象にした曲にすら、普通に使用しているのは驚きでです。
ペダルのかかり具合はグランドピアノとアップライトピアノでは全く違います。
一台一台ピアノのペダルのかかり具合は違うので困ります。
しかも、安いピアノとか下手な調律師が調整したペダルでは高音域と低音域でもペダルのかかり具合がバラつきが出るので始末に悪い。
調律などでハーフ・ペダルというのは鍵盤を「そぅー」と押し込んでいくと、ちょうど真ん中あたりでカックンと引っかかる位置のことを言う。
ピアノ奏法で言う所のハーフ・ペダルとは直接的には関係がなのです。
[日本人の困ったpedal操作]
留学帰りの音楽家を含めて、音大生や所謂、ピアニストと呼ばれている人種、或いは音楽大学の教授クラスの人ですら、pedalの操作でみっともない操作をする事が多い。
その最たる例は、pedalの踏み替えの時に、思いっきりpedalを放すために、ピアノの弦がゴウ!ゴウ!と音を立てているのにも関わらず、全く気にもしないで弾いている演奏者が多いという事である。教室の小学生の生徒が「雷様がゴーロ、ゴロ!」笑っていた。
その音があまりにも大きいので、時には、pedalの雑音の音の方がうるさくて、演奏している本来のピアノの音が全く聞こえなくって、演奏が台無しになっている時すらあるのだが、弾いているピアニスト本人は全く気にならないようだ。
それは当たり前の話で、普段の練習の時からバタン!バタン!と音を立ててペダルを踏み変えているので、当然、その練習の時にノイズが気にならない感性なので、その癖は治る事はない。演奏をしている時に、自分の音を聞いていないのだから、仕方がない。
でも、素人さんでも、さすがに音大生でもそれを聞いたら笑うよ!
たまに私が直接、ピアニスト本人に注意をすると、今度はどうペダルを踏み換えてよいのか、分からなくってしまって、途方にくれてしまうのでした。
どうやら「ダンパーの音を出さないで踏み換える」という事(やり方)が、分からないらしい!?
という事で、老婆心から次に説明しておきます。
[正しいペダルの戻し方]
どんなピアノでもpedalには遊びがある。そして先程言ったように、pedalが利き始める最初にカックンと指に感じるpointがある。
Pedalの上に足を乗せていると、足の本来の重みでpedalは少し踏み込まれた状態になっている。これがニュートラルな状態である。そこからしっかり底まで踏み込んで、そのニュートラルな状態(所謂、これが本当のハーフ・ペダルである。)まで戻せば、ペダルがピアノの本体の木の部分にぶつかる事はないので、pedalのガタン・ガタンという音は絶対に出ない。
それ程、難しく考えなくとも、2,3回ペダルを踏み込んでみて、音が残り始める(ペダルがかかり始める)場所を覚えればよい。
踏み込んだ状態から、かかり始める少し前の位置まで戻せばよいのである。
こういったきちんとしたpedalの操作を覚えてしまえば、ペダルを踏み替える時のpedalの遊びによるラグタイム (無駄)がないので、非常にすばやくpedal操作をする事が出来る。
勿論、踏み替える時の足の距離も足に掛かる力も半分に減ってしまうしね。
だから非常にすばやくペダルの踏み替えが出来るようになるんだよ。
当然、Pedal操作の時間(タイムラグ)の短縮にもなるんだな、これが!
日本ではそういったちゃんとしたpedal操作の「イロハ」は習わないのかね??
再び、Bachのシンフォニアの話に戻って
大分前の事だけれど、私の生徒が学校のお友達をlessonに連れてきた事がありました。
某国立音大の先生について子供の頃から習っているという事で、参考までに、その生徒のバッハのシンフォニアの演奏を聞かせてもらったのですが、独立した三声部の、一声ずつの声部のつながりが全く出来ていなくて「この生徒は、何年も習っていて、一体先生からバッハについて何を学んで来たのだろう?」と、暗澹たる気持ちになったことがあります。
日本のピアノを学ぶ学生達のみならず、指導する先生方も、先ほども述べたように、打鍵の瞬間の音は聞いたとしても、その後の響いている音は聞こうとしません。
inventionなどで声部が交差した場合など、前の声部が響き込んで次にどういうメロディーにつながるか、が全く分からないのです。
それでいて、「有名教授に師事しているのだから・・・・、別に何も注意もされないのだから・・・」、と自分が正しく弾いていると思い込んで疑わないのだから、困ったものだ。
しかし、それだけ、人を信じられるということは、それでよいことなのかな?
善哉!善哉!
私の生徒は、結構シビアーに、小学生でも先生に対して突っ込んでくるよ!?ちょっとでも、教える方が不安を持っていると質問攻めにされるから・・・!
日本では先生に質問をすると、怒り出す先生がいるそうなのだけれど、私は、質問をしてこないようなら、こっちが逆に生徒に質問するけれどね!「どういう理由でそう弾かなければならないの?」ってね・・・。)
私の教室の場合には、音楽を専門に勉強する生徒には、Czerny30番ぐらいのlevelで、インベンションのグレードに入ったら、1,2万で安いキーボードを買わせて、インベンションやシンフォニア、平均率などのBachの勉強を、オルガンの音で弾かせる事によって、長い繋留音や声部の交差などによって惹き起こされる、音の繋がりや干渉(音のぶつかり等)を学習させています。
譜例6.シンフォニアの例
17小節目の4拍目から18小節目一拍目はソプラノの声部とアルトの声部が交差をする。そのために、アルトのFaの音の伸ばしが、不正確になってしまう場合が非常に多い。
譜例7.
100年経っても、何故治らないのか?
最初から間違えた偽物の奏法で学んだ生徒が、正しい本当の奏法を聞いたとしても、正しいと認識できることは無い。偽の奏法が正しいと一途に信じている。
何の根拠も無く、ヴァイオリンに関して、芸大の独特の「弾き始めた後の音を膨らましてしまう」という後押しの奏法は、ヨーロッパの演奏家や日本で指導している外人教授にとっては、日本人独特の我慢のならない奏法であったが、何度注意しても治らない、いや日本人の教授を含めて治そうとしないのだ。
何故なら、それは日本人の大学教授にとっても、或いは生徒達とってもその「後押しの奏法」は日本人の感覚として心地よく聞こえるので、少しも誤った奏法だとも思っていない。だから幾ら、外人が注意しても直そうとはしないのだ。
と言う事で、ベルリンフィルのコンサートマスターであるシュバルベ教授は、よっぽど頭にきてしまったのか、その奏法を日本人の絶対に治らない致命的な奏法(病気である)と言う意味で日本人の「エイズ奏法」と呼んでいました。
「あなたはエイズにかかっています!」っていってね!
「こぶしと唸り」
日本では日本特有の古来からの奏法がある。
演歌の歌唱法などがその典型である。
先ほど書いた事とダブってしまうので、省略するが、所謂「あんこ~~☆●※~!ツバキが~Ut~tttt!」とかいう所謂、後押しのこぶしである。
その奏法が無意識にヴァイオリンの奏法に移ってきているのだ。つまり、喉を絞って歌うと言う事である。