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13才とはいっても、イタリアを代表するピアニストの卵の少女で、既に、ピアノコンクールの入賞歴は三つも、四つもある少女でした。初めてその少女に会ったのは、私がイタリアに着いてリハーサル会場である音楽大学を尋ねた時でした
リハーサルの為に学校の入り口の階段を歩いていた私にその少女が気付いて、とても嬉しそうな顔をして僕の方に近付いて来たので、「さて、私はいったい何語でこの子に話かけたらいいのだろうか。私はイタリア語はまるっきり話せないぞ。」 とちょっと戸惑いをおぼえました。
そうするとその女の子が私の気持ちを察したのか、微笑みながら、とても流暢なドイツ語で「私は英語もドイツ語も話せますので、どうぞお好きな言葉でお話しください。」と話かけてきました。
そしてその子が私のピアノの楽譜を差し出して、「これにサインをしてください。」と恥ずかしそうに言いました。何とその表情の愛らしかったこと!
コンクールの賞金が、どういう分けか、ドイツでは引き落とす事が出来なかったので、ミュンヒェンからは、そんなに遠くなかった北イタリアのZanibon迄、賞金を受け取りに行く事になりました。
という事で、可愛い少女のRobertaちゃんにもう一度会う事ができました。
その子とお母さんが北イタリアののどかな郊外の古城やリンゴ園に案内してくれました。
その子はリンゴ園のリンゴ樹の中からこっそり一番ちっちゃなかわいらしいリンゴを取ってきて、私にプレゼントしてくれました。(これがドイツの大人の女の人なら一番大きくておいしそうなリンゴをプレゼントしてくれたことでしょう。しかし、バンビーノのRobertaちゃんはこっそりとリンゴ園から、リンゴを盗むには、一番小さなリンゴが精一杯だったのです。その子供心の初々しさをとても素晴らしい物に感じている私でした。)
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