このカッコでくくられた音はすこぶる不協和な音がする。Beethovenや現代の音楽ならいざ知らず、baroqueの時代にはそぐわない。明らかにviolaのBasso-ostinatoのミスである。
じゃあ、2小節目と4小節目のviolaの頭の音をGに変えれば良いのでは??
そうは行かない。下の楽譜を見て分かるように、2ndとviolaが平行8度の禁則を起こすからである。
私達は次のように訂正して演奏する。
参考までに:
訂正はviolaがF、D、Dと弾いても良さそうだが、この場合にはcelloの動きとviolaがお互いに、反進行をしているので、導音連打ではそのimageは出ないからである。
それだけの変更で、このostinatoは、2小節単位のSequenzに変わってしまう。小節単位のSequenzが、2小節単位に変わっただけである。
ちなみにこのostinatoのpassageは105小節目から108小節目と161小節目から164小節目でも反復される。
この曲は私達の教室では、violinの初心者の教材であるVivaldiのOp.3Nr6の有名なa mollのconcertoのように、.celloを学び始めた比較的な初歩の段階の生徒が、初めてオーケストラに参加してconcertoを勉強するための、教材として使用している。
という事で、結構小学校低学年ぐらいの小さい生徒が演奏する事が多いので、通奏低音のCembaloのpartもそれに合わせて、同じ年齢の子供が演奏出来るように、小さな手と簡単な伴奏に配慮してRealisation(楽譜(音符)起こし)している。
参考までに: VivaldiOp.3Nr.6a mollのCembaloについて
但し、一般的には初心者の教材として有名な、そのVivaldiのa mollのconcertoにしても、緩徐楽章のU楽章は、非常に難しく、初心者の手には負えないどころか、上級者にとっても難しい超高難度のlevelの曲になるのだ。
同様に、このcelloconcertoも、T楽章こそは、初心者の手の届く範囲の技術で書かれているのだが、U楽章は非常にadultな曲想を演奏しなければならないし、V楽章に至っては、proにとっても難しい技術を強いられる難曲である。
Vivaldiのcelloconcertoの殆どの曲は、重厚でadultな曲想で作曲されており、小さな子供達の手におえるしろものではない。
初心者の曲の代表のように言われているVivaldiのa mollのviolinconcertoですら、Vivaldiは子供を対象にして作曲しているのではないのだよ。
Vivaldiの擁護のために、敢えて確認しておくが、私がいつも口にしているVivaldi=curriculumは、Vivaldi自身がそういうcurriculumを、考えて、そのcurriculum上に曲をシステムとして作曲したわけではない。
また、敢えて付け加えるならば、そういったEtudeとしての教材はまだその時代にはなかったのだよ。
つまり、Etudeという概念そのものがなかったのだよ。
Etudeというgenreが登場するのは、古典派の時代に入ってからの話になる。
勿論、Etudeという名前の曲集はBach等も書いてはいるのだが、それはフーガやパルティータの曲集の名前として付けられているのに過ぎない。
古典派の時代になって、Piano(クラビア)が一般的になってから、Clmentiを始めとしたピアニスト達の手によって書かれていく。
というわけで、Vivaldiがピエタの初級の子供達のために曲を作ったかどうかは知らないが、それは教育教材のためではなく、あくまでピエタで毎週演奏される催しのための作曲なのだから。
あくまで、私が、Vivaldiの作品から、芦塚メトードによるcurriculumに従って、曲を抜粋、再配列していったのだから・・・。