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B
Schule=学校=工房
その次のランクのヴァイオリンは、機械彫りの量産品です。
機械で作るので大量生産ができます。
まず機械で全部同じ形に木を削って、仕上げだけを手作業でします。
大量生産の手法はアマテイ(ストラデイバリウスよりもさらに以前の名工)の時代から、現代に至るまであります。
たくさんの人(名工のお弟子さん達)が大勢でヴァイオリンのパーツを分業で作るという流れ作業は、ストラディバリウスなどの時代から、普通に行われていて、現代にストラディバリの自作であると言われている大半の楽器はそういった方法で作成されています。
ですからストラディバリと銘うたれた楽器には、幾つかのランクがあります。
取り敢えず完全な贋物は別枠だとして・・・・・、
@ストラディバリウスの工房で制作されたもの、
Aストラディバリ・シューレと呼ばれる、優秀な弟子の手によるもの(アマティやストラディバリウスの弟子でも優秀な人の作品となると数千万円もするものもあります。)
B弟子とストラディバリウスの共同制作になるもの、
C完全に正真正銘に本人自身の制作になるものなどがあります。現在正真正銘にストラディバリの手によるヴァイオリンは、世界で数本しかないと言われています。(ちなみにストラディバリラディの工房で作成されたストラディバリは6000本ぐらいあるそうです。それでも、数百万から、中には数千万暮らすのもあるそうですよ。)
つまり、本人自身の手が、全く入っていなかったとしても、ストラディバリウス・スクール(ストラディバリの工房)で作られたものであれば、それらもストラディバリであると称されるのですよ。
現代、作られている殆どのヴァイオリンは(それこそ1,2万のものから、数千万の楽器に至る迄、そのほとんどがストラディバリ・モデルで作られています。
つまり、ほとんどのヴァイオリン(弦楽器)は、ストラディバリをモデルにして(そのdataに基づいて)作成されています。
C
スチューデントヴァイオリン
前述の27億もするヴァイオリンはもちろん分業も弟子の手にも依らず、本人が一人でこつこつと制作したものです。
一般的には30万円位までのヴァイオリンは、機械で作られるか、分業で作られる量産ヴァイオリンです。
それから百万円位までのヴァイオリンを、俗にスチューデント・ヴァイオリンと呼びます。
この楽器の値段のランクの資料は1990年の資料によります。
弦楽器は、年と共に、品薄になって来て、物価の上昇とは別に、楽器自体の価値も上がりますので、この値段は、時勢価格としての参考にはなりません。
スチューデントとは、練習用ヴァイオリンという意味です。
一般大学のオーケストラの学生達が、半分親から出して貰って、残りを、何とかアルバイトをして、買える値段ぐらいかな??
ほとんどは機械彫りなのですが、仕上げの部分だけが、一応手彫りで作られています。(これはこの文を書いた10年ぐらい前の情報です。現在では物価ももっと上がってしまい、完全な手作りのヴァイオリンは100万位からになってしまいました。)
音楽大学に進学する人達にとっての最低ラインの楽器となります。
音楽大学に入学と同時に大学の先生に、買い直しを命じられます。
一応、音大生は、建前だけでも「音楽のプロ」なのですからね。
つまり、学生の練習用楽器としては、それでも良いかもしれませんが、ブロとしての音色は望めませんし、問題外のランクなのですから。
D
分数楽器のお話
高価な楽器は、機械の工程を経ないで、最初から手作りで作られます。
子供用のヴァイオリンは、手作りのオールドヴァイオリンというのは、ほとんどありませんが、それでも、鈴木ヴァイオリンのような量産品ではなく、分数サイズのオールドヴァイオリンという楽器があります。
勿論、オールドなので、全て手作りです。
しかし、子供用の分数ヴァイオリンは、楽器の回転率が良いこともあり、40〜60万ぐらいでオールドのかなり良い楽器が手に入ります。
子供が大きくなったら、使用出来ませんから、レンタルという考え方をするので、安いのです。
条件は、勿論、売った楽器屋さんに返却するという条件が入ります。
という事で、父兄が勝手に又貸しをしたり、使用しないままに家庭で保存していたとしても、下取り価格はほとんどなくなってしまいます。
それは楽器屋さんの、利潤の話だけではなく、使用した楽器は直ぐに、速やかにメンテナンスをしなければならないという意味もあります。そうしないとその楽器の価値が持続出来ないからなのです。
分数楽器は、もしレンタルしないとすると、その分数楽器が30万、40万だとしても、フル・サイズ換算では120〜200万ぐらいに相当します。
それよりも高価な分数ヴァイオリンもありますが、銘器と呼ばれるものは、例え、分数楽器であったとしても400〜700万ぐらいはします。
フル・サイズ楽器に換算すると、数千万の楽器と同格になります。
また近年はコンピュータ・ヴァイオリンというものがあります。
これは、コンピュータにストラディバリウスなどの名器の木の厚みやカーブなどの情報を読み込ませ、その通りに機械が彫るという作り方です。
形状だけはある程度名器に近いものは作れますが、本当の楽器制作とは、木の目や性質等に合わせて微妙な削りだしの調節が必要で、そこに職人の感性や卓越した技が必要とされるので、やはりきちんとした楽器より音色が劣るのは当然と言えます。
また次にお話しなくてはならないのは、ヴァイオリン製作者がいかに優れた技術を持っていたとしても、ヴァイオリンの材料となる木が良質で優れたものでなければ何の意味もなしません。
合板(ベニヤ)でプレスによって制作されたものは論外としても、ヴァイオリンはパーツによっていろいろな種類の木材を使用します。
表板は松、裏板は楓、指盤は黒檀と言う風に。しかし、同じ落葉松、楓でも国によって全く木の種類が違います。
ヨーロッパで楓と言っても、巳本の楓とは全く別の木だと言って良いほど違います。
ヨーロッパの楓に対してアメリカの楓は質が落ちてヴァイオリンの材質としては適しません。
そのアメリカの楓や松よりもさらに(日本では楽器に最適と言われている)北海道の蝦夷松、落葉松は質が落ちるのです。
国産の量産ヴァイオリンは日本の木材を使用します。
だから安くできるのです。
アマティの弟子でもあり、名工として名前を轟かせているヤコブ・シュタイナーがヴァイオリン用の木を求めて、ドイツのミッテンバルトの森を荷程い歩いたという有名な伝説があります。
同じ楓の木でも、一年中太陽の光がささない深い谷の、しかも東西に面した木がヴァイオリンの材料に適しています。
(木目がしっかりとっまっていて年輪の中心が限り無く真ん中にあるからです。)
そういった木を捜し出して切り出したら次には、何十年も(人によっては百年ぐらいにも)寝かせて乾燥させます。
そして出来上がったその木材がやっとヴァイオリンを作るための材料となるのです。(ちなみに日本の場合は、乾燥室で強制的に2〜3ケ月で乾燥させます。)
そういった理由から日本やアメリカなどのヴァイオリン製作者はより良いヴァイオリンを作るためにヨーロッパまで自分の木材を買い付けに出かけます。
より良い楽器を作るためには、その材料となる木材にも大変な手間がかかっているわけです。
という事で、ある日本人の楽器製作者が(この試みは日本人が初めてやった分けではなく、ヨーロッパ人やアメリカ人も同様の試みをしています。)ヨーロッパの教会等が、補修の工事に入った時に、その古い建物から出る廃材で、ストラディバリと同時代の木を持って来て、その木でヴァイオリンを製作するという事です。つまり、木材が古くよく枯れていれば、良い音を出すに違いないという、短絡的な誤解によるものです。
ピアノと違ってヴァイオリンの場合は、ある程度年月が経たないと良い音が出ないと言われています。
名器中の名器と言われるストラディバリウスでも、出来たての頃は今日のような音色ではありませんでした。
すぐれた演奏家達の長い年月に渡る弾き込みと、すぐれた楽器製作者達による丹精の結果によって今日のような名器に育ったと言えます。
ところが、スチューデントヴァイオリンが200年後にストラリバリウスのような音を出すようなすばらしい楽器になるかというとそうではないのです。
機械で量産的に「手抜き」して作ったものは、どんなに時間がたっても名器に成長することはあり得ません。
ですから今日つくられているクレモナなどの優れた楽器であれば、200年後にはストラリバリウスのような名器になっているかもしれません。
但し、その頃はクレモナヴァイオリンの特徴である甘い蜂蜜のような音は失われ、今日のバロックヴァイオリンのような枯れた透徹した音に変わっていることでしょうが。
すぐれた楽器製作者が自分の技と魂を込めて作った楽器は、大切に使用して次の世代のヴァイオリンを学ぶ人達のために手渡していかなければなりません。
下の写真は分数のオールドのviolaです。
この写真だけでは、よく分かりませんね??
大人サイズのヴァイオリンと大きさを比較しないとね。
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