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12小節目の全音版の下に書かれている指使い、2-3-3は子供達には不可能である。

同じ全音版の上に書かれている2-1-3の指使いは、2-1の指のくぐりが難しいが不可能ではない。

しかし、同音連打の後の(3-2-1-)3-1は、「不可能ではない」も幾つも繰り返されると、限りなく不可能に近づく。

その点安川版ではfa-laの2-3-5も自然ではある。でも同音連打を5-5-5と打たなければならないことが難点である。しかし、12小節目から13小節目のre-si-laは5-3-1ですこぶる自然である。5-5-5が気になるようなら、5-4-5とでもしておけばよい。

この点では安川版の勝ちである。

 

15小節目の指使い

安川版では14小節目の最後のreの音から始めてsi-sol-miと5-4-2-1と4和音として取らせている。Mi-fa#の縮めを除けばすこぶる自然な指使いである。

全音版では14小節目の最後の音は1の指になっているので、3-1,2と極めて難しい。

全音版では15小節目のarticulationがbowslurのarticulationになっているので、古典派特有のarticulationのための指使いと言えない事もないのかの知れないが、この曲を弾く子供達のlevelの指使いではない事は確かである。

 

12小節目から15小節目までの左手の指使い

安川版は左手の開始音を4の指で始めている。

14小節目で初めて5の指にチェンジしている。

それに対して、全音版は最初から5の指で始めて、14小節目の指使いの変更はない。

一見すると全音版がシンプルで分があるように見受けられるが、全音版の指使いでは、実際には子供はSi-reの2-5の指は広がらないので、無理に指を広げて弾くか、不必要に手を飛ばして弾くかしなければならず、この指使いはZirkus(サーカス・曲芸)である。

無意味に難しい。

 

21小節目の指使い

安川版では21小節目の指使いを12#3134と弾かせているが、このconceptはGがpositionで1の指になるという考え方である。というわけなので、si, do-reのdo-reは別に何の指でも良い。shiftに収めるのならば、1-4-5でも良いのである。

 

それに対して全音版では、20小節目のGのキーが4の指なので、position移動をしないで、そのまま、Gまでshiftして、Aで1の指に変えている。そのために、siのpositionではGのshiftの中に指使いが納まってしまいすこぶる自然にthemaの指使いに戻っている。

この場合には幾分全音版の方が分が良いかと思われる。

 

29小節目後半から35小節目までの指使い

譜例:全音版と安川版の指使いの違い

 

安川版では29小節目の後半si-do-reの指使いを3の指から始めている。それは32小節目までshiftで指使いのチェンジをしないためである。

しかし、その結果、30小節目のschleiferの前の同音連打は全部の音(キー)が同じ2の指になってしまっている。また33小節目のla-re、si-do-reの4-1,3はいただけない。

33小節目の後半、Si-do-re,の3の指で始めるのは最初と整合させるためであろうから、いたし方はないとしても、32小節目後半のla-si-la,la-re 4-5-4,4-1あまり良い指使いとはいえない。

全音版のほうは、si-do-re,の開始音を2の指から、始めているので、schleiferの前の同音連打はかろうじてschleiferの頭の音が1-2とチェンジしていて自然である。

且つ又、33小節目の同音連打は5の指にチェンジしている事によって、不自然さを防いでいる。33小節目のla-re,siのre,siの指の広がりも、phraseの切れ目なので、問題はない。

  

[強弱について]

29小節目から35小節目前半までの強弱

譜例:

 

前の文章の続きとしてであるが、むしろ、安川版では29小節目から35小節目の前半までは、Pとしての指定しかないのだが、全音版では29小節目後半からのsi-do-reのphraseがPで、33小節目からの繰り返しをpianissimoにしている点で心地よい。

且つ又、安川版では35小節目後半からsforzando、decrescendo、pが2回繰り返されて、最後の和音がforteで終わるのに対して、全音版では35小節目後半の1回目がmezzoforteで演奏され、2回目はエコーとしてPで演奏されだけではなく、articulationもkleinigkeit(小さな変更)で微妙に変化されていて良い。終わりの和音もそのままにPで静かに終わっていくのも上品で良い。

 

最初から8小節目繰り返し記号まで

安川版はPで開始して、5,6小節目を膨らまして、7小節目Pで終るというすこぶる単純な書き方をしている。

譜例:

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