今回の発表会は、・・というか、例年通り、今回も芦塚先生が長年温めてきた新曲を幾つか演奏します。
多分、これも恒例の本邦初演になると思います。
曲名はお楽しみに・・・!
ヒント: その内の1曲はシェイクスピアの真夏の夜の夢に関係のある曲です。
そう言えば、花園自治会館でのオケ・リハーサルの時に、芦塚先生がオケの指揮をしながら、片手に箒を持って踊っていましたよ。
どういうこっちゃ???
芦塚先生、おかしくなっちゃった???
そろそろ、歳だモンね・・・・?!ボケが入ってきちゃった・・・・???
2012年4月1日千葉地区発表会千葉市文化センター・アート・ホール
purcell chaconne C.wmv
発表会当日の演奏です。聞いてください。
この演奏では、「楽譜の通り」に演奏をしています。
「楽譜の通りに」・・・という事は、「楽譜通りに演奏しない」という事もあるのかな?
それが、実は・・・あるのですよ。
その一つは、上に書いたように、ornament(装飾)を入れて演奏するという事です。その装飾は今日、一般では、ただ単に音符を飾り立てて演奏した・・と思われているようなのですが、実際にはそうではありません。チェンバロやヴァイオリンも、当時は楽器の性能的にまだ開発、発達段階で、その演奏上の不足を補うために、装飾音が作られて使用されていったのです。
だから今日ではモルデントやプラルトリラーは非常に早く演奏される事が多いのですが、プラルトリラーとはゆっくりした弱拍を表すための記号だったので、主客転倒もはなはだしいのです。
今日の強拍を表すためのトリルや弱拍を表すためのトリル、それぞれ色々な意味を持って書かれていました。
だから、「この装飾音は何を表しているのかな?」と考えることはとても大切なことです。
もう一つの楽譜通りの意味は、当時の舞曲は踊るための独特のステップのリズムです。
上記のように、Menuettは比較的に直線的な踊りなので、3拍子の、2,3拍が詰まるようなrhythmで演奏します。
これはlandlerやValse等の舞曲も同じです。
la foliaも、まだ宮廷に入る前の音楽は、非常に粗野で扇情的な音楽で、何度も禁止令が出たそうです。それが、洗練されるに従って、だんだん遅く典雅な曲になってきました。
skipのrhythmも、実際に演奏されるものと、書かれたものは、かなり違います。
それは当時の慣習でより簡単明瞭に書かれていました。
何故なら、当時は演奏は殆ど初見で演奏されていたからです。
つまり、現代のマンガ家と同じように、作曲家は毎週締め切りに追われて作曲をしていた分けで、当日の朝に楽譜が間に合えばまだ善し!で、本番の直前に舞台にやっと楽譜が届く事も、日常茶飯事だったのです。
だから、演奏家が舞台で楽譜をパッと見ても、初見でパッと弾けるように、読譜上の不必要な難しさを極力省いたからなのです。
だから、フランス風のoverture(オーバーチュアー・序曲)と言ったら、通常の付点で書かれていても、下記の演奏譜のように、休符を入れて、複付点で非常に鋭く演奏する・・・と、決まっていたのです。
8分音符の音階進行が続いたら、rhythm通りではなく、軽くスイングして演奏するとか、今日では逆にエキセントリックに聞こえるかもしれませんが、それはダンスのステップを伴っているから、danceを知っている人達にとっては、当たり前の演奏方法なのです。
上記のpurcellのchaconne Cを、baroqueversionで演奏すると、こうなります。
教室でも演奏の奏き分けをします。
2012年6月24日八千代市生涯学習プラザ主催Early Summer Concert
Henry PurcellのChaconne C
同じ曲なのに、ここまで違うと面白いですね。
指揮杖のお話
さて、この絵の中で、作曲家のLullyが手にしているのは指揮杖(しきじょう)と言います。
「答えは、発表会の時に、幕間のお話で・・・・!」
答えは美伶ちゃんが幕間でお話してくれましたが、そのお話を撮った所のビデオが見当たらないので、芦塚先生の解説を代わりに載せておきます。
baroque時代はまだ指揮棒というものがなく、指揮杖という長い豪華な棒で床をドンドンと叩き鳴らして、テンポを取ったのです。
上記の絵に登場したLullyはその指揮杖の先を足の甲にぶつけてしまい、その傷が元で死んでしまった、といわれています。
マラン・マレーの若き日と、師匠の娘の恋物語をはらった「めぐり逢う朝」という有名な映画にも、指揮杖で指揮をするマレーからストーリーが始まります。
自治会館でのリハーサルの時の、芦塚先生が箒を持って床をトントンと鳴らしたというお話は、baroque時代の指揮杖の代わりだったのですよ。
Henry PurcellのChaconne g moll
2012年4月1日千葉地区発表会千葉市文化センター・アート・ホールでは、発表会の新曲としては、Henry PurcellのChaconneのg mollも予定しています。
chaconneのgは、芦塚先生が若い頃から所有して勉強していたpurcellのoriginal版のスコアーと、近頃、それが出版されている事を知って、手に入れた高名なイギリスの誇る作曲家であるBenjamin Brittenが校訂した版を比較検証して今回の発表会では使用しています。
最初、芦塚先生がこのchaconneのBritten版をカタログ上で見つけた時には、「Brittenのarrangeによる擬古典の作品かな?」と思って、スコアーを取り寄せたそうです。
しかし、このchaconneのBritten版は、ブリテンが、「青少年のための管弦楽入門」で見せたように、purcellのRondeauのイメージ(インスピレーション)によって、新たに作曲した擬古典版(Brittenの作曲)ではなく、当時の慣習に従って演奏したものを、現代風に正確に楽譜に書き表すと、こうなる・・・という実際の演奏を、忠実に楽譜に書き表した(再現した)、所謂、演奏譜というものなのです。
こういった楽譜の事を、一般的には、「作曲」や「編曲」とは言わないで、本来は「Realisation(具体化、現実化)」と言います。
しかし、Britten版では、Edited by ・・・となっています。
所謂、編集という事でしょうか??
という事で、Britten版には、著作権が掛かっています。
「う~ん???」
しかし、上記の様な理由で、芦塚先生が昔留学中から持っていたoriginal版を使用して演奏しても、Britten版で演奏しても、当時の演奏そのままに、baroque様式そのままに、古式豊かに演奏すると同じ演奏になってしまうのですよ。
つまり、当時の演奏styleそのままに、正確に古式豊かに演奏すると、Brittenが書いた譜面の通りになるのですよ。
だから、今更、「Britten版の著作権」と言われてもね~ぇ???
発表会で子供達が演奏した、henry purcellのchaconne ハ長調は、originalの譜面を底本にして、楽譜通りに演奏しています。
「楽譜通りに演奏するとこうなる。」という例でしょうかね。
2012年6月24日の八千代のコンサートでは、同じHennry purcellのchaconneのgを、芦塚先生が校訂した芦塚陽二版という演奏譜(Realisation譜)を使用して古式豊かに演奏しました。
だからと言っても、芦塚先生は、芦塚先生の「Realisation譜」に対して、「私は別に著作権料はいらないけれどね!」と言っていましたがね。つまり、baroqueの音楽に造詣の深い人が演奏すると、同じ演奏になってしまうから、芦塚versionである・・という独自性はなくなるからなのです。
曲が出来てから本番までの、練習の日程が少なかったので、練習が間に合っていない感はありますが、Britten版との違いはよく聞き取れると思います。
purcell chaconne g Ashizukaversion
2012年6月24日八千代市生涯学習プラザ主催Early Summer Concert
baroqueの演奏譜の実際の例を引用して
baroque時代は当時の慣習的に、楽譜に書かれている音符と実際に演奏される音符やリズムは違う事が多いのです。
それを、現代の音楽家用に実際に演奏される音符やrhythmで書いたものが、校訂版になります。
校訂版というと、先程のRealisation譜とはまた違って、少し校訂者の考えによるarrangeが混じってきます。原典よりも少し遠くなる分けです。
Realisation譜は、楽譜上の見た目はoriginalの原典とは違いますが、当時の演奏のstyleを忠実に表現したものですから、こちらの方がoriginalには近いはずです。(「・・・はずです。」というのは、出版社の分類では、逆に校訂版の方が原典に近いとされるからです。)
譜例:originalの版