右の写真はセイコーの電子メトロノームで、私のお気に入りのメトロノームの内の一台です。
Pitchはbaroquepitchの415と、438から446までを1刻みで設定する事ができます。
(baroquepitchを持っているメトロノームは珍しいのです。)
そう言った事よりも、このメトロノームで特に気に入っているところが、メトロノームのtempoを2つ同時に設定する事が出来て、第一tempoから第二tempoへと、正面のボタンで瞬時にチェンジする事が出来るという、このメトロノームの機能です。
しかしながら、幾ら高性能のメトロノームであったとしても、100分の1のサイクルのpitchを出すわけではありません。
殆どの音楽家は、100分の1サイクルのpitchを確かめながら、音楽の勉強をする事は通常は有り得ないという事なのです。
しかし、私達の教室では、子供達に純正調を指導していますから、当然100分の1のサイクルの単位が必要になってくるのです。
100分の1の音程の訓練と言っても、それを感覚的に指導しているわけではありません。
教室には100分の1の音程を作るためのキーボードが数台あります。(数台と言うのは教室別に1台ずつ・・と言う意味です。)
この写真の製品はヤマハ製です。
教室で使用している古い方の楽器は「ハーモニー・トレーナー」と言っていたようですが、この楽器は「ハーモニー・ディレクター」と名前を変えています。一見すると1,2万の安物のキー・ボードのようにも見えますが、本体価格は16万ぐらいする超高性能の代物です。(それに別売の脚台等の付属品が必要です。)
「純正調を子供達に指導している。」といっても、勿論、平均律を指導しないまま、いきなり純正調でorchestraの指導、教育をしているわけではありませんよ!
純正調を勉強している子供達にとっては、まず、平均律は出来て当たり前の事なのですから!
私達の教室ではオケのグループを年少グループから、年中、年長グループの3段階に分けています。3段階といっても子供達のキャパシティーでの分類ですから(実際の年齢は関係ないので、本当は初級、中級、上級という呼び名の方が正しいのでしょうが、いたずらに子供の競争心を煽るようなので、そう言った呼び方は避けているのです。) 当然、年中の生徒は年少のグループのお手伝いが出来て、年長のグループは年中と、年少のグループのお手伝いが出来るわけです。
私達は子供達のオケを指導する時には、その生徒達が既にその曲をマスターしたとしても、それでその曲は「卒業」という考え方はしません。何回も年下のグループのお手伝いをする事によって、自分達が勉強した曲のフィード・バックをさせていくのです。これはオケ練習のカリキュラムのお話ですが、当然、年中オケや年長オケのグループに入る前に (中年オケやおじいさんオケではありませんよ!)、年少オケや室内楽などで、・・・或いは普段のlessonの指導の中で、絶対音感を勉強しているのですから。
当然、「年中や、年長のオーケストラ・グループの生徒達にとっては、平均律の音は当たり前の事として、ちゃんとpitchを取れる。」と言う前提のお話です。
私が今ここでお話しているのは、もう一つ上のグレードの音感訓練のお話です。
ヤマハで売っているハーモニー・ディレクターですが、これは主に学校のブラスの指導用として売られています。ですから、キーボードとして一般の販売店に陳列されている事は非常に少なく、音楽学校を目指している学生達ですら目にする機会は殆どありません。キーボードとして使用するだけのためには非常に高価な楽器ですから、その使い方を知らない限り、一般の音楽家が、このキーボードをこの値段で買い求める事は無意味です。
ですから、この楽器はブラス・バンドの訓練用にとしてしか販売されていないのです。
一般の人達が絶対音感を育成するために、高いお金を出して、このハーモニー・ディレクターを買ったとしても、絶対音感を育てるためのカリキュラムがなければ、実際には絶対音感が身に付く事はありません。
よく一般の人達が間違う事ですが、その道具を買えば、それなりに何らかの効果があると期待します。
しかし、残念ながら、道具は道具に過ぎないのです。
それを、どう使用するかでその道具の本当の価値が決まってくるのです。
私達の教室でも、「音符カード」のように、市販の物で、代用が出来るものは、なるべく市販の物で間に合わせるようにして、先生達が音符カードなどを製作しなくてもよいように、無駄な努力をしないですむようにしています。
しかし、私達の教室のlessonを見学した外部の先生方が勘違いして、「市販の音符カードを買い込んできて大体同じようにlessonすれば私達の教室の子供達と同じように、音符がすらすら読めるようになると思い込んでしまう。」という事は、はなはだその理解が短絡的で残念な気がします。
このお話には、さらに尾ひれが付いて、「芦塚メトードとはオリジナルのものだと思ったのだけど、市販のカードを使って指導していると言う事は、オリジナルではないのでは?」という、もっととんでもない事を外部の先生に質問されたこともあります。
市販の音符カードを使用して、譜読みの訓練をしている、芦塚メトードの「譜読みのメトード」というのは、ソフトの事であって、使用するカードは別にどのカードでもよいのです。
ハーモニー・ディレクターも全く同じ事が言えます。
つまり、学校が部活の為にハーモニー・ディレクターを買ったから・・・と言って、生徒達に絶対音感が付くとするのなら、そこらの小、中学校のブラスの部活の生徒達にも全員絶対音がついていなければなりませんよね。
ところが、それが、そうはいかないのよね!!
ここでやっと本題に話を元に戻して、・・・・・・・
音楽を専門に勉強する人さえ、通常では100分の1のpitchの世界は体験した事がないので、どうしても、正確なpitchを身につけると言う所は曖昧になってしまうのです。
ですから、どうしてもオケマンには、低めにチューニングする人と高めにチューニングする人が出てきてしまいます。
つまり、完全5度の幅は思ったよりも広いのです。
それがAの音の話だけならば、そんなに問題はなく、そう言った「pitchは針で合わせなさい。」とかいう誤った事を言い出す先生もいなくなるはずです。
しかし、ヴァイオリンやチェロ、コントラバスなどは基本的には4本の弦を持っていますから(コントラバスは五弦もあるので)、曖昧な音から、更に曖昧な完全5度で、次の音、次の音と受け渡されて行くと、最終的には、それぞれの音の微妙なずれが増幅されて行って、例えばヴァイオリンを例に取ると最低音のGの音が全く誰とも合わないという事になってしまいます。
ましてや、フルオケではAのpitchの管楽器(通常はA管と言います。)やB♭の楽器(当然、B管です。)、Es管の楽器にホルンなどのF管の楽器なども、一つのオーケストラの中に渾然として存在します。
ですから、オーケストラで「ド」の音を一つに聞こえるように合わせると言うのは至難の技なのですよ。だから、先程の話「チューニングは針でするほうがよい。」という話になるのです。
そりゃ、単なる勉強不足だよね!
アッ、ハッ、ハッ、ハッ!
某国立オーケストラで、オーケストラの奏者が全員で、自分のチューナーの針を見ながら調弦をしているのを見るのは、きっと壮観だろうね!?
私達の教室は弦楽オーケストラなので、Aをピュアーなサイクルの中で(振動の中で)高めに合わせて、各自がそれぞれの弦を高めに5度のチューニングをします。(勿論、コントラバスは4度調弦ですがね。)チューニングが終わったら、たまに確認のために全員でGの音を出すことがあります。
それで全員の音が完全に合っていて、混じりけのないピュアーなGの音が出たら、完全に音が合っていると言うことです。(「4本の弦を1本、1本、弦が合っているかどうかを確かめる必要は無い」と言う話です。)
音を耳で聞こうとしないで、機械の針でtuningをする人が、正しい音感を持てる事はない、という事は当たり前ですよね。
耳で音を聞くことをしないで、チューナーの針で音合わせをすると言う事は、絶対音感どころか、正しいAの音さえ「聞き分ける事が出来ない」と言う前提に立っているわけでしょう??
先程の某国立orchestraの先生は、潜在的に「私はAの音が分かりません。」と言っている事になってしまうのですよ。
耳で正しいpureなAを取る事が出来ない人が、A♭やCの音、色々なpitchの音を聞き分ける事が出来ないのは当たり前でしょう??
基準の音さえ聞くことが出来ないのに、どうして、octaveの残りの11個の音が聞き分けられるのでしょうかね。ましてや、「Aの4分の1高い!」 なんて聞き分けるのは、そりゃ「至難の業!」じゃなくって、「不可能!」でやんしょうよ!!
それで、わが国を支える、某国立音楽大学の先生??某国立orchestraの奏者??
それじゃぁ、お先真っ暗じゃん!!
でも、本当に、お先は真っ暗なのかもしれません。
私がコンクールの審査員に呼ばれて、受験生達を審査をした時の話ですが、小学生ならまだいざ知らず、中学生、高校生になっても、tuningがすばやく正しく出来る生徒はいませんでした。
コンクールの地方予選なら、いざ知らず、本選、全国大会でですよ!
あまりの酷さに、伴奏者がヴァイオリンを取り上げてチューニングした事もあります。(プロのヴァイオリンの伴奏者はヴァイオリンも演奏出来ます。)
私もコンクールの時に、受験生がtuningが出来ないままに弾き始めようとしたので、生徒を止めて「D線からのtuningをやり直しなさい。」と叱った事があります。
その時に審査に見えられていた他の先生が「芦塚先生は自分の生徒でもない生徒にtuningをやり直しさせた。」と自分の生徒と他人の生徒に対しての分け隔てない態度に甚く感激されてしまいました。
私としては、そんなに深く考えたわけではなく、たんに狂ったpitchで曲を聞かされるのがたまらなかっただけなのですがね。
余談の余談の余談ですが:
私達の教室の生徒達は、ピュアーな5度の取り方や純正調の音の取り方等を学びます。
まず、最初はpureな完全5度の中で、高めのpureな完全5度、真ん中のpureな完全5度、低めのpureな完全5度の3段階が識別出来るように訓練をします。
その訓練を積んでいる内に生徒達は、半音の半分や半音の4分の1の違いも分かるようになってきます。
ですから弦楽器を勉強する生徒達も、ピアノを勉強する生徒達も殆どの生徒が絶対音感を持っています。
(ピアノではtuningをする事はないので、ピアノの生徒の音感をつける指導はまた別のやり方なのですが、今回はお話が長くなりますので、それには触れません。)
例えば、つい先日のお話ですが、小学校の1年生の女の子のお父さんが子供のヴァイオリンのチューニングのためにi-podを買ってきました。
さっそく、Aの音を鳴らしてみると、その女の子が「pitchが低い!」と文句を言いました。
お父さんは「i-pod だからAが狂っているわけはない。」と言って子供と喧嘩になってしまいました。
そこでお父さんが教室に質問に来ました。
それで、担当の先生が「標準Aと演奏会pitchのお話」を説明して、「子供の主張も正しい」という事を説明しました。お父さんは「子供に負けた!」と悔しがって、喜んでいましたがね。
まぁ、負けたか勝ったかは親子のcommunicationの話で、どうでもよいことですが、つまり、お父さんが買ってきたi-podは標準の国際高度である440サイクルで、子供の絶対音は演奏会用高度の443サイクルだったわけです。
勿論、その事が分かっていれば、i-podでも、443サイクルに基準音を直すことができます。
今のキーボードはおもちゃでなければ、殆どの楽器がpitchの切り替えが出来るようになっています。
さて、よく私達の教室の子供達は「殆どの生徒達が絶対音感を身に付けている」というお話をよくしますが、まずは「Aの音を正確に覚える」と言う事がなければ、絶対音感が身に付くという事はありえません。
当たり前のお話ですがね。
「絶対音感を習得する」と言えば、今年の秋口に、江古田の事務所を椎名町に引越ししましたが、その町には絶対音を習得させる事を売り文句にして、それだけで長野や名古屋などの関東各都県から、椎名町に生徒達を集めている(この私でさえその存在を知っているという)超有名音楽教室があります。
そこの教室の生徒達は、絶対音感を習得するために、小学生の低学年の時から、何年も何年もかけて、日夜、絶対音感が身に付くように努力しているわけですがね・・・・??
そこの教室との一番大きな違いは、私達の教室の生徒達は取り立てて絶対音を身に付けるための特別な訓練はしていないのに、いつの間にか絶対音感が子供達の身に付いてしまうという事なのです。
補足:
「なんとなく絶対音が身に付く。」 なんておいしい話は、まぁ、絶対にありませんよね。
「いつの間にか絶対音が身に付く。」 と言うのは、あくまで生徒の側からの感想であり、指導者が「絶対音が自然に身に付くような特別な訓練をしなければ、子供達に絶対音が身に付く。」という事はありえないのは、当たり前の話ですよね。
椎名町のその教室との大きな違いは、「努力するのが先生か生徒か・・」の違いでしょうかね??
次のお話は今までの話とは、間逆のお話です。
「某国立音楽大学に行きたいから・・・!」と言って、中学校を卒業すると同時に私達の音楽教室をやめて、某国立音楽大学の先生のところに替わって行った生徒がいます。
当然、某音大ではscaleの試験があるので、その某音大の先生の指導の元でscaleの勉強を、ピアノで一音、一音取って、ヴァイオリンでそのpitchを一音一音合わせて弾いていくと言う日本型の勉強を高校生の間の3年間、みっちりやらされてしまいました。
3年間の涙ぐましい受験勉強の期間を経て希望の某国立音楽大学に入学した頃には、もうすっかり子供の頃に私達の教室でしっかりと身に付いていた、「半音の半分や4分の1半音を聞き分ける絶対音感の能力」は失われてしまっていましたよ。
その結果、彼女の愛用の楽器もすっかり音が出なくなってしまっていましたよ。
当然、某音大では楽器の「konsonanzを使用しての作音」というのはやらないのでしょうからね。
(蛇足:konsonanzという単語は普通の今の辞書ではなかなか出てきません。日本の辞書では木村・相良のドイツ語の辞書ならちゃんと出てきます。)
日本の音楽大学では、音を取るのに「ピアノに合わせて音を取る」なんて、とんでもない教育がいまだにまかり通っているのですね。
(勿論、Aの音だけを取るのであれば、何の問題もありませんがね。)
生徒だけでなく、先生ですら、平均律と言う意味や、調律の事、或いはピュアーな純正調の事が全く分かっていないという事なのですね。
困ったものです。
余談の蛇足で、チューニングとは直接は関係がないのですが、弦楽器の奏者や大学の先生達がチューニングの時によくやってしまう、ヴァイオリンの製作者やディーラーにとってはとても考えられない、ヴァイオリンや弓を壊しかねない恐ろしいやり方があり、私達は驚かされてしまいます。
*よく音大の先生達がやっている、松脂を多めに塗った後、弓をピッ、ピッと振って余分な松脂を落とすやり方は、弓のコンディションにとって最悪だと言うだけでなく、もっと最悪の場合には弓が折れて、修理不能になってしまいます。
*チューニングの時に、ペグを何回もウィーンウィーンとかコキコキとか回すやり方は、“当たり”を取り除く方法なので、やればやるほどペグが止まらなくなり、pitchが合わなくなってしまいます。
*最悪のチューニングはチューニングが下手な音大生がチューニング中に音が低めになったら、peg-boxの内側に指を入れて弦を押してpitchを上げるやり方です。この方法は、演奏中に楽器のpitchが下がった時に非常手段として使用する場合がありますが、通常のチューニングでそれをやってはいけません。そのチューニングでは演奏中にすぐにpitchが下がってしまいますし、ヴァイオリンにチューニングの当たりは出来ません。まして、そう言ったチューニングでは正確なチューニングをする事は出来ないのです。
*ちょっとしたコツですが、木製のpegは穴との当たりのために、完全にpitchを合わせてしまうと、pegから指を放した瞬間に、ほんの少しpegが引っ張られて、pitchが下がってしまうのです。チューニングの上手な人はそのラグを計算して少し高めの時に指を放します。また、新しいヴァイオリンを買った時など、教育用pitchの440サイクルで当たりが出来ているヴァイオリンの場合があります。その場合にはその当たりを取ってしまって、443サイクルの演奏会用のpitchに当たりを付けないといけないので、当たりを取ってしまうために、前述の間違えたやり方(pegをコキコキ回すやり方)で当たりを取ってからチューニングをしなおして、新しい当たりを作ります。
*弦楽器をケースにしまう時に、楽器を拭くときには、必ず松脂の付いている所を拭く布と、それ以外のところを拭く布は分けなければなりません。松脂が付いた布で胴体などを拭くと、松脂でコーティング・ニスを削ってしまうからです。・・・・えっっ??「拭かないでケースにしまうからいい!」って・・・??
[baroquepitchについて]
最初のお話は、先程のお話とダブってしまいますが、さて、その他には所謂、baroquepitchというのがあります。
リコーダー(Recorder)も、本来はbaroque時代の楽器ですから、プロ仕様の楽器は435〜438Hzが一般です。
勿論、日本の学校用のrecorderは国際標準pitchの440サイクルの調律です。
というわけで、私が所有している木製のrecorderはbaroquepitchなので、私達の教室の生徒達の発表会でも使用する事ができません。
教室の発表会のpitchは演奏会pitchの443?だからです。
ですから教室の子供達のための発表会用には、木製のbaroquerecorderではなく、日本製のプラスチックのrecorderを使用します。
参考:芦塚先生所有のbaroquepitchのrecorderの3本セット