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ところで、どうしてIちゃんに「お買い物のお話」をしたか、分かるかな?

「う・・・ん??あんまり・・??」

じつはね、「お買い物が上手になること」と、「楽器の練習」が上手になることは,同じことなんだよ。

「え・・っ!」

Iちゃんは・・どうして、発表会の曲を仕上げるのに2週間足りなかったのか、・・それを考えて見よう。
勿論、2週間足りなかった分けだから、ラスト・スパートを2週間早くすれば良かったのだよね!!
発表会の直前で、2,3週間を必死に練習するのなら、本当は、曲を貰った時点で、2,3週間必死に練習すれば、良かったのだよ。
だって、必死になる時間(日にち)は同じでしょう?
同じ、ダラダラとlessonを受けて、最後の2,3週間必死になるのも、最初の2,3週間必死になって、後をダラダラするのも、どちらも同じだと思うけれどね。

次に、勉強の仕方のadviceです。

普通、ピアノの先生に曲を見て貰う時には、最初に「譜読み」をするでしょ。
それから、「譜読み」がちゃんと出来たら、今度は、指づかいを直されて、今度は指づかいを練習する。
次に、上手く弾けない所を抜き出しして、スキップ練習を2、3週間くらいやって、
だいたい出来るようになったら、今度は強弱をつけて練習をして。
それから仕上げに、暗譜をして・・・発表会だよね???
これって、さっき例を上げた、歌の歌詞や、お買い物のお話に似ているよね???


さっきの無駄な買い物のお話のように、すごく時間が掛かってしまうよね。
だから効率よくお買い物をするように、最初から指づかいや強弱を暗譜しながら譜読みして、ついでにスキップ練習も暗譜でやってしまえばいい。
そしたら発表会までに、まだいっぱい時間があまるでしょ?
練習っていうのはそういうふうにやるんだよ。

でも、暗譜は苦手だから、最初から覚えられない!
そりゃあ、そうだよね!!
でも、サ!!人は同時に幾つもの事に集中出来ない・・て、言うのは知っている??先生が黒板に書いた文字をノートに写しながら、先生のお話を聴くと言う事は、本当は出来ないのだよ。
だから、楽譜の音符を読みながら、音の間違いを聴き取る事は、とても難しいのだよ。
暗譜してしまえば、目をつぶって弾く事も出来るよね??
そうしたら、音がちゃんと聴こえるでしょう??
私が注意した音符の動きも聴き取る事が出来るよね??

暗譜が苦手でも、その一つのphraseだけ・・、つまり、1小節や、2小節なら、さきに覚える事は出来るでしょう??
その1小節だけを、暗譜で練習すればよいのだよ!!
この方法論も芦塚メトードの一つで、1小節でも、水準を上げれば、他の小節は自ずから、水準が上がる・・という、メトードなのだよ。不思議だよね??

でもまあ、音楽の勉強を始めたばかりの子供の場合や、他の教室からやって来て、そういった水準を上げるという勉強の方法が、未だ身についてない場合もあるよね。
そういった場合には、いきなり曲の全体を、そのような練習法で練習するのは、とても無理だよね。
その場合には、その曲の中で、ホンの1小節だけを1箇所だけ、或いは・・・、とか言う風に、出来る範囲で、少しずつやっていくといいんだよ。

Iちゃんは、こういった練習法は未だ習っていなかった分けだから、今度のlessonまでに、何小節ずつだったら、そういう練習法が宿題に出来るかな?
1小節を1箇所??それとも、2小節を2箇所は出来るかな?
それとも4小節・・?
1小節、1箇所・・だけ・・かな??

じゃあ、実際にやってみようか!

そう言い終わると芦塚先生は、Iちゃんが、出来なかった所を抜き出して、その小節のレッスンに入りました。

この小節は、いったい何が原因でミスったの??
音を覚えていなかったのかな??それとも指使い??

暗譜が不安だったのですよ。

じゃあ、よく旋律を見てみよう!
このmelodieはこっちのpassageに繋がっていて、この旋律はこのmelodieに来ているよね??

あっ、そうか??
で、指使いは大丈夫??
あれ??その指使いも違うよ!!
あっつ!本当だ!!

5,6分のlessonの後で、
ほら、もう1箇所は出来るようになったよ!

あれ??本当だ!!
簡単でしょう??
ウン!!

説明を受けただけで、弾けるようになったので、Iちゃんは、すっかり驚いてしまいました。
練習をした分けではないので、ね??




写真の生徒は上の文章とは全く関係はありません。
受験の時の生徒で、この時は音大生です。

 

芦塚先生から先生方へのアドバイス

子供達が、Pianoやviolinのlessonが続いて行くか、どうかの分かれ道は、譜読みの出来、不出来が根本の原因である事が多いのです。

以前、全音の編集長の山口さんに伺ったお話ですが、Pianoのお稽古を始めた子供達の70%以上の子供達が、バイエルの70番、80番の段階でピアノのお稽古を止めるそうで、その子供達の90%以上の生徒達が、譜読み(読譜力の無さ)が原因でPianoをやめるのだそうです。

譜読みの指導は、勿論、メトードに拠るものが大きいのですが、導入さえちゃんと出来れば、後は、慣れと経験で上手にする事が出来ます。
私が初歩の生徒達を指導していた頃は、Beyerの早い時期に、練習をして来ないで良い教材を使って、初見の暗譜の指導をしていました。
最初の課題が8小節ぐらいの片手で演奏する教則本を使用して、3分間譜面をじっと見て、(声をださないで、指を動かさないで・・)暗譜でPianoで演奏します。
課題の曲は、両手の8小節になって、16小節になって・・と、段々と暗譜の量が増えて行きますが、時間を変える事は基本的にはありません。
逆に、慣れて行くに従って、譜読みの時間は減らして行くのです。

ある程度のlevel迄上達すると、他の生徒と連弾を組みます。
しかし、この連弾のcurriculumも楽譜を買わせる事はありません。
初見の練習なのだからです。楽譜を買わせてしまうと、予習をしてしまうので、初見の練習にはならないからです。

教室に講師希望の学生が来た時に、KlengelのPianotrioの曲を初見で弾けなかったのを見て、5歳、6歳の子供達が不思議がっていて、
「どうして弾けないの?」と、聞いていました。
その学生は教室には、二度と来なかったけれどね・・。
確かに、5歳、6歳の子供と一緒に初見で練習して、大学を卒業した自分が弾けなければ、チョッとショックかも知れないけれどね。

でも、これは、子供達が、意地悪でそういう質問をしたのではないのですよ。
教室では、自分達も先輩の生徒達も、皆が初見で演奏をするのだから、講師を希望する先生が
「弾けない!」と言う事が、全く理解出来なかったのですよ。
教室の生徒達にとっては、教室の先生も生徒も普通に初見が出来る・・という事が一般論なのでね。



本来的には「譜読み」は、バイエルの早い段階でマスター出来ていなければなりません。
楽器の導入を、私達の教室で始めた人達は、全く譜読みに引っかかる事は無いのですが、しかし、今現在、私たちの教室に居る生徒さんの多くは、最初から私達の教室で音楽(楽器)を習い始めた人は意外と少ないのです。

つまり、他所の教室で楽器を習い始めたのですが、ある程度レベルが進んだ段階で、所謂、「譜読み力」と学んでいる「曲のlevel」噛み合わないために、結局の所、行き詰って、それでもっと、きちんと指導してくれる教室を探して、やっと、入会した人達が多いのです。
そういった人達のために、学んで来た教室によって、その生徒の抱える問題点が異なるので、それに合わせた、色々な指導マニュアルをつっくてあります。

しかし、譜読みを指導する上で、大切なことは、ただ単には、技術的な正しい譜読みの手順だけはなく、生徒達に意識(譜読みとは何か。譜読みの重要性など)を持たせることが最も必要なことであると言えます。
proを目指す小学生の子供がいましたが、有名な大御所の先生について、学んでいたのですが、全く譜読みが出来ず、先生が片手づつ、或いは、単音でtapeに録音をして、それを聴きながら、曲を覚えてから、練習をする・・という、涙ぐましい努力をしていました。
私は、「趣味で音楽をやるのなら、それでも良いけれど、もし、proになりたいのなら、それは致命的になるよ!」と、adviceをしたのですが、考えて見ると、その先生の門下生達は、全員譜読みが出来ないのですから、危機感がある分けはありません。
先生自身が、譜読み出来ないのだから、その生徒が出来るようになる分けはないのですよね。


巷の音楽教室の先生達の指導で、もっとも、感じる問題点は、ピアノの先生、或るいは、violinの先生達は、ともすれば、生徒が曲をある程度弾けるようになると、直ぐに合格にしてしまいがちですが、所謂、Beyerの段階・・・つまり、初期指導の段階で、生徒に自分の演奏する曲の水準を作る・・ということが大切なのです。

つまり、「ノン・ミスで、1回弾けたら、合格」・・というのは、有り得ません。

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