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そういった大型の教会やコンサートホールに据え付けられているパイプオルガンとは、また別に、バロックのオーケストラの伴奏としての、通奏低音楽器として使用する小型のパイプオルガンの事を、通常はPositivオルガンと呼んでいました。

左のポジティーフ・オルガンは、写真を見る限りでは、一段と足鍵盤のタイプですが、二段のものも多いのです。

しかし、小型のパイプ・オルガンとは言っても、それでも、二段鍵盤で、4feetと、8フィートの金管系と、同じ8フィートの木管系(それに16フィートの低音か2feetの超高音を持っている楽器もあります)と、足鍵盤の16(と、それにプラス32フィイート・・・それはないか??管が巨大になりすぎるかな??)がセットになるので、小さな教会等での据え置き式の代用にか、演奏会にも何とか運べるような持ち運びを想定したものがありましたが、それでも、軽いものでも500㌔ぐらいはあり、手軽に、運べるものではありませんでした。

持ち運びという事を考えなくて良いのならば、据え置き型で2段、上鍵盤が8’と2’で、下鍵盤が4’と8’の4列と、足鍵盤が16’という形が理想形ではないでしょうか?
先ほどもお話したように、8’には、木管系と金管系の2種類の区別は絶対に必要なので、2’を省いて、上鍵盤を4’8にして、下鍵盤を8’8’にするのも、良いと思います。
でも金額はえらい変わってきますがね。
それぞれの音色(この選択肢の場合には、必要最低限の音栓という事で、音色ではなく、pitchをoctave変化させる事によって音色を変えていますが、大型の場合には、それぞれのpitchの中でも、色々な音色を出す事が出来るようにパイプが設定されていますが)は、ストップ(音栓)と呼ばれるノブを引き出す事によって、パイプの音色を変更します。
写真では真ん中の黒く見える鍵盤部の両サイドに、それぞれ三つづつある取っ手を引き出す事によって、音色を変化させます。
また、上の鍵盤と下の鍵盤は、Koppelというstop(音栓)を引き出す事で、下の鍵盤を弾くと、上の鍵盤も一緒に動くようにする機能もあります。


私が「・・・かな??・・かな??」を、連発しているのは、調査や資料が不足しているからではありません。

実はその逆で、オルガンは、設置する部屋(ホール)や、オーダーする人の好みで決めるので、完全な定形と言えるものはないからです。


私が音楽大学の学生であった当時は、上野の大ホールのようなコンサートホールでも、パイプオルガンはありませんでした。

だから、上野の大ホールでマタイ受難曲やHandelのメサイアを演奏する時には、学校のPositivオルガンを大型のトラックで運んで演奏していました。

私達は「よくこんな巨大なものが運べるな??」と驚いていたものですが、餅は餅屋で、たった3、4名で運べちゃうんだな!??
これが・・・・・???

すっ・・・!すっ・・!凄い!!   Σ(゚д゚lll)

Portativ Organ



それに対して、ポルタティーフPortativオルガン(ポータブル・オルガンですよ!!)と呼ばれる、持ち運びをする事を前提にしたオルガンが中世の時代からありましたが、主に12世紀から15世紀に掛けて、首に吊るすか、膝に乗せて左手でふいごを動かして右手で鍵盤で演奏する、基本的にはmelodieを単音でしか演奏出来ない単旋律楽器でした。


しかし、それでも、教会でコラールのmelodieを歌ったりと、Bachのcantataの中にも使用されたりしています。
(勿論、cantataの中に出てくる、コラールの単旋律のmelodieを弾くために、ですがね。)







風箱とふいごのお話

もう一つの薀蓄は、オルガンの肺のお話です。
「肺」というのは、私が言い出した言葉ではなく、Bachがオルガンのcheckをする時に、よく口にした言葉で、分かり易く例えて言うと、バグパイプの袋の部分の空気を貯める袋のようなものを言います。

バグパイプはドローンと呼ばれる持続する音を出す笛とmelodieを演奏するためのトーン・ホール(指穴)のある笛の部分と、口に加えて、真っ赤になって息を袋に貯めるための吹き込み口の、大きく分けて、3っつの部分から出来ています。

その原理はオルガンも同じで(勿論、ドローンを出す笛は持っていないので)、風を送るためのふいごと、風を貯める袋に相当する箱(風箱)があって、その風箱にそれぞれの音を出す無数の笛がくっついているのです。
当然、鍵盤を押さない限り、笛(パイプの部分)には風箱に貯められた空気は遮断されて、音が出ないようになっていますが、初期のオルガンのモデルでは、風箱の圧力が強くなると、鍵盤が重くなってしまって、鍵盤を押すのに(演奏するのに)大変な指の力が必要になった・・・というタイプのオルガンもあったそうです。

そういったキーボードを楽に弾くためのメカ(機構)は、色々と時代によって改良されてきたのですが、本当にオルガン奏者が自由に音を出せるようになったのは、19世紀後半から20世紀にかけてのお話なのだそうです。

オルガンはその巨大なパイプの音を出すための、強いフイゴが必要です。
当然、オルガン奏者が演奏しながらふいごを動かす事は(ポルタティーフのオルガン以外は)出来ませんので、baroque時代から近代迄ふいご手と呼ばれるふいごを動かす人達が必要だったのです。
やっと19世紀の後半になって、蒸気機関で風を送る事が可能になって、今日の電気のモーターによる送風は20世紀になってからのお話です。
でも、やはり古い時代の人の手による送風は、オルガンに負担をかけない美しい音がするので、20世紀の後半からはbaroque楽器の復刻と共に、人力のふいごによるオルガンもまた、わざわざ作られるようになってきました。

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