VitaliのchaconneもBassの定旋律4小節が、2回繰り返されて、themaのmelodieをa,a'と完結させるのですが、Pachelbelの場合も、非常にゆっくりとした鬱々のmelodieである「themaの4小節」が2回繰り返されてthemaのmelodieを完結させる。
Variation形式の簡単な分析法は、盛り上げて行った音楽がtempoを戻して元のtempoに落ち着く所が次のStollenの開始になります。
第一部は、Variation1からVariation毎に少しづつtempoを上げながら、Variation11まで、一気に盛り上げて(高揚させて)行く。
Variation11の7小節目で急激なrit.をして、第二部の始まりで、Variation12は、切々と歌い込むゆっくりとしたVariationとなる。Variation13からはVariation毎の急激なtempoのupと15、16で力強いパワフルなvariationまで、僅か4つのVariationで盛り上げて行く。
17で、再び、浪々とした悠大な対位法的なVariationが17,18と続く。
しかし、19から、突然激しい荒れ狂ったpassageに戻って、20ではsubitoのPから一気に21のfortissimoのpassageに走り込む。またVariation21の4小節目で(殆ど、subitoと思われるぐらいの)急激なdiminuendoで、Pになって、僅か4小節でthemaのrepriseになる。
3回目のVariation(最後のVariation)は、これから最後のthemaに戻って音楽の頂点を作る所まで、・・・所謂、ラスト・スパートまで、一気に盛り上げていくのだが、原曲通りでは、小節数が少なすぎてthemaの鬱々な感じには、戻れない。どうしても残気を消す事が出来づに、中途半端にthemaに入ってしまうのが、欠点である。
Variation21の6小節目に既に、rit.を開始させて、8小節目のthemaの前で本当の大きなrit.にするように演奏しているのだが、それでも、不完全なままに終わってしまう。
その原因は、原曲がオーケストラの曲ではなく、orgelの曲であるからである。
baroqueorgelの場合には、弦楽器のような激情的な表現は出来ないし、そのように演奏されることはない。
Bachのように、後期baroqueのorgel作曲の巨匠であっても、感情的に逸脱することはないのだ。
しかし、比較的に、忠実に原曲のVariationを再現している、Corelli=Geminianiのla foliaは、最後のpassageの盛り上げはかなりのものである。
だから、orgelで演奏されるchaconneとorchestraで演奏されるchaconneは別のconceptの曲であると思った方がよい。
今回の私のarrangeでは、この突然にrepriseするpassageは、8小節程小節を追加して、themaも心残りの残気を2小節プラスして、無理な表現をしなくても良いように、自然にrepriseに入れるように改訂しています。
「・・・・等々、」 と言葉で言うと、「複雑怪奇で兎に角、解りにくい!」 という事で、上記に説明した事を、themaとそのVariationを表に書き表してみました。
1から21までの数字は、Variationの番号を示している。
それぞれのVariationは8小節で構成されている。
Variation21の8小節の内の後半の4小節で、盛り上げたtempoをthemaのrepriseのtempoまで遅くするのは、不自然である。
Pachelbelのchaconneの構成は、大きくA+(b+c)のように、二段構成で出来ている。
見せかけ上は、A+b+cの三段構成をしているのだが、A+B+Aのように、symmetryのrepriseを持たないので、構造的にも、二段構成である。
がっちりと構成されている、96小節のAに対して、bとcを足したとしても88小節の後半部は、一見するとバランスを欠いているように見受けられる。
しかし、このバランスを小節数ではなく、時間的に見ていくと、前半A部ではthemaが唯一ゆっくりした曲である事に対して、後半は12、17、18、22とゆっくりとしたVariationが多いので、時間のバランスは絶妙に取れていて、見事なシンメトリーを作っている。
しかし、それにしても、21のVariationの後半の僅か4小節でのthemaへのtempoの移行は、少し無理があるので、私のversionでは、21小節目のVariationをもう一回繰り返してVariation22にして、themaのrepriseに更にCodaを2小節足している。
という事で、全体の構成は前半部がthema+11Variationで96小節、
第二部が40小節、第三部が追加された8小節で48小節とthemaの8小節+Codaの2小節で、合計58小節、
二部と三部の合計が98小節で、2小節プラスの、ちょうどジャストの構造式になる。
もっとも、遅いtempoのVariationが後半に集中しているので、下膨れの重たい構造式になるのだが、曲想から見てもそれは問題はない。
追加された8小節のpassage