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「音楽の対話」
音楽の演奏法での基本中の基本は、対話なのです。
それは、音楽だけではなく、総ての舞台芸術の基本でもあります。

Chopinが自分の生徒に
「オペラを聴くように!」とadviceをしていたのですが、それを日本人の多くの音楽家の人達は、「 『朗々と歌いなさい。』とChopinが言った」と勘違いをしてしまっているようです。
Chopinが言ったのは、
「音楽は言葉である。」「対話である」という意味であったのですよ。それを「音楽で対話するオペラに音楽の原点がある。」といったのです。

音楽の基本は、オペラや演劇と同じ、対話なのです。
一つのmelodieのphraseの中に、質問とそれに対する答えのMotivがあります。
古典派等の通常のphraseは、質問と答えという(a+b)という簡単な構造の繰り返しで作曲されているのですが、近現代になると、その対話がより複雑になって行きます。
そしてその構造式が複雑になればなる程、演奏表現は難しいなって行きます。


小文字aは最小単位のMotivで、質問のような・・・呼びかけの感じです。それに対して小文字bはaに対しての応えのように、なっています。
2回目の小文字aは、小文字bのMotivの断片、頭の16分音符を2個a'として貰って、拡大して広がりを表します。それに対する応えが小文字bです。それの二つを纏めた質問に対しての、解答が小文字cになります。

小文字a+小文字bを大文字のAとして、次はA'、それの応えが大文字のBという事です。
そして、A+A+Bを一つとしてその答えが次のpassageになるのですが、そのpassageも小さな小文字dとそれに対する応えの小文字eが更に小文字eと畳み掛けて行きます。

soloの練習も、最初は一番小さな単位で質問と答えをtempoの緩急や、微妙なdynamikの練習をします。
それが上手に出来るようになったら、今度は次の大きなククリのphraseでまた同様に練習をします。
一番大きな括りでは、A+A’+B迄のククリを一つの大きなAとして、次の小文字dからの多くなBとしてのククリで演奏します。
そうすると、ゆっくりとした同じMetronomのtempoで演奏していたとしても、凄く音楽が短く感じられるのです。
どんな、長い曲でも、説得力があると短く感じるのですよ。









以下同文・・・という事で、より大きなphrase感で演奏出来るようになったら、鬼に金棒ということです。

「音の重量感」
音には、音の質感、所謂、重量感というものがあります。
つまり、音の強弱とは別に、細い糸のように繰り出される音、えぐるような体重の掛かった重い音等、色々な音の音質を表現出来なければなりません。
冒頭の小文字aは、弱いけれど、細くても重量感のある音でもありません。
柔らかな優しい音で始めなければなりません。

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