昔々、大崎のゲートシティ大崎という所で対外出演をやった事があります。
ロビーコンサートで音響的には、問題だし、大き過ぎるので、演奏をする前に、PAを立ててマイクとスピーカーをセッティングして貰うようにお願いしました。
当日、PA担当の人がリハーサルの音量をcheckして・・「PAは要らないので、生音でやりましょう!」と、折角セッティングしたPAセットを、お喋り用のマイクとスピーカーだけを残して、演奏のマイクとスピーカーは全部、片付けてしまいました。
おおきなセンターの吹き抜けのホールの横に、お店のあるエントランスが無数にあるのですが、スタッフの人達が歩いて音量をcheckしたのですが、全部に響き渡っていたそうなのです。
こういった事はproの演奏会の時でもやらない事だそうで、非常に特殊な事だそうです。
音楽大学の先生達やproの演奏家達の音量は、結構、大きいようなのですが、実際には、チョッと、色々な事があります。
普段、私達が「音量がある」という場合には、その音源(例えばviolinやPiano等の楽器)の傍で、聞いて音量の強さを言います。
しかし、本当の意味での強い音とは、「遠音=とおね」の利く音の事を言うのです。
耳元で強い音は、「傍鳴りの音」と言って、広いホール等の会場では通りません。
ですから、音の強いproの音でも、PAを通さないと、客席には届かないのです。
「傍鳴りの音」は耳には力強く聴こえる音なので、弦楽器の場合には、3点支持で弓で弦を押さえつけてゴシゴシと音を出します。
演奏会の本番で、弓を折った演奏家もいるほどです。(勿論、弦を切るのは当たり前の話です。寧ろ、弦を切らない方がおかしい・・!・・となります。)
Pianoの場合も、ご多分に漏れず、腕や指先に力を入れて、鍵盤の底まで弾き抜くように演奏します。
pianistの自慢はPianoのハンマーを練習で何本折ったとか、弦を何本切ったとか・・です。
腱鞘炎になるのは、練習のし過ぎで、褒められるべき事だそうです。
いずれの楽器の場合にも、楽器は鳴らすものである・・という前提があります。
でも、私達の教室の場合には、その大前提自体が違います。
先ず、楽器は力で鳴らすものではありません。
violinであろうとPianoであろうと、楽器そのものが、鳴ってくれるように導くものなのです。
弓の重さに任せて、楽器のなる位置に指のpositionをしっかりと取れば、楽器は自然に鳴ってくれます。
でも、楽器がちゃんと鳴ってくれるようになるためには、楽器をトレーニングする必要があります。
konsonanzを正確に取って、自分が鳴らしたい音で楽器がよく共鳴するようにトレーニングします。
3点支持の人達は、楽器をkonsonanzで鳴らすという事は知りません。
だから、遠音のある楽器というのも、分からないのです。
安い楽器を喜んで買って行ってくれるので、重宝しています。
本当に良い、遠音の利く楽器が時々売れ残っているからです。遠音の利く楽器は耳元では音が小さく響くからです。
だから、弦楽器の選定に行く時には、必ず2人で行きます。
自分が楽器の音を出す事よりも、離れて聴いた時にその楽器の音がどうなっているのか?をcheckするためです。
傍鳴りの楽器は、ホンの4,5メーター離れただけでも音が減数します。遠音の利く楽器は、全く音量が落ちないのです。
だから、傍鳴りの楽器と遠音の利く楽器では、4,5メーターで音量が入れ替わってしまいます。
そこをcheckしないと、安い傍鳴りの楽器の方が良い楽器であると錯覚してしまいます。
勿論、昔の同級生で音楽教室を経営しているviolinの先生のように、「私は30人から50人ぐらいの発表会しかしないから、それぐらいの広さで良く聴こえる楽器がいいわ。」と言うのなら、傍鳴りの楽器で充分なのです。
良い楽器が、売れ残っている事がある・・という事は、とても、有り難い事です。
・・3点支持様様です。
何億円もするようなStradivariのような銘器は、誰が演奏しても、音が響くように誤解されていますが、天下の名手の人が、半年も掛かって、楽器のトレーニングをして、やっと音が出るようになるのです。
楽器は安い楽器になればなる程、簡単に音を響かせる事が出来ます。(但し、敢えて誤解のないように、注意をしておきますが、本当に安い楽器は、やはり音は出ません。幾らトレーニングしても、出ないものは出ないのです。私の財布と一緒でね・・!!ある程度の金額の・・所謂、violinという楽器の場合のお話です。)
ある程度の楽器で音を出せるような演奏家でも、Stradivariクラスの楽器になると、音出しは難しくなって来ます。
Stradivariの楽器を鳴らせる演奏家は、ある程度安い楽器でも音を出せます。
しかし、安い楽器しか鳴らせない似非演奏家の人達がStradivariを鳴らせるようになる事はありません。
しかし、この話は楽器屋にとっても内緒の話なのです。
何故??って、・・・??
だって、Stradivariを買う人が必ずしも、楽器を鳴らせるだけの力量を持った人とは限らないからです。
だから、鳴らせない人がいたとしても、一応はそれらしい音がするように、楽器を調整しておくのですよ。
楽器は売れてなんぼの世界ですからね。