この演奏法では二つの事に留意しておかなければなりません。まずは、装飾音は拍頭に合わせる事、ピアノの場合には少し軽いaccentを装飾音の音に入れて、実音は抜いて(弱く、ピアノの場合には手首を抜く等)して演奏します。弦楽器の場合には、装飾音の音をvibratoaccentにして、実音を抜いて演奏します。
またよく勘違いされるのは、(これもappoggiaturと言われる事が多いようですが)、拍頭に非和声音が来る時に、通奏低音の書法として、非和声音を前打音で、書き表すという事です。これは数字付低音から和音を見る時に、和声音を分かり易くするための書き方ですが、例えば、Mozartの有名なsonateからトルコ風の例で、
auftaktの始まりの音が全て長前打音になっているのは実音がラ、ド、ミの和音上の音になっていて、その音の倚音(非和声音)であるからである。
私が高校生の頃、手に入れたレコード(!)では、かの有名なウィルヘルム・ケンプがこの曲の装飾音を短前打音で演奏している。当時はケンプぐらいの超名演奏家であっても、音楽上の知識はまだまだであった。(しかし、幾ら当時の演奏家達と言えど、ケンプ以外の人で短前打音で演奏している人はいない。名演奏家と言えども間違いは犯すという例か??)
次はGの音価の説明です。
HaydnやMozartの曲には、Gのように、Celloとviolaは4分音符で書かれているのに、violinのTとUは8分音符で書かれているという場合がよくあります。
それがPianosonateのような曲の場合でも、左手と右手が違う音価で書かれている場合があって、私が音楽大学時代にPianoの先生にどうしてこう書かれているのか?と質問した事があります。ピアノの教授曰く、「Haydnは作曲が雑だったのよ!」と一刀両断に言われてしまいました。
ちょっとショックだったな!!
この書法はオケや室内楽をやっていると、しょっちゅう登場します。つまり、オケ・室内楽の書法なのですよ。
でも、不思議な事に、楽典の本や音楽通論の本を紐解いても、ちっともその事に触れて書かれた本はありませんでした。
という分けで、いまだにその事について述べている書物にお目にかかった事はありません。ハイ!
でも、これは室内楽を勉強すれば、体験上分かってくる事実です。
上の譜例のcello、violaはベースラインの納めを演奏していて、violinのTUはmelodieを演奏しているから、その意味が違うからです。ですから、14小節目のviola、celloはdown、up、downになり、violinはupから入って来るので、up、up、up(次の弓をupからいるためにdownにする場合もあります。)
violinUは、13小節目から14小節目の頭の拍までviola、celloと同じ動きなので、14小節目の頭はdownでもよいのです。そうすると、次からはviolinTに整合しなければならないので、いずれにしてもup、upとなります。(もし、up、downと弓順にした場合には、cello、violaに整合してしまうので、すこぶる面白くない。)
H番はある本には「このsforzandoはMozartの原譜ではfと書かれている。」と書いてありました。「えっ?!」驚いて、私の持っているMozartのfacsimile版を調べてみると、やっぱりsfz(sforzando)になっているのだな〜!その人は何で調べたのだろう??不思議だ!!
きっと、pが3拍目についているので、その間はforteで弾かなければならないので、sfzをforteと思ったのでしょうね。(好意的に考えると・・・、でも、研究者ならfacsimile版は絶対でしょうにね。)
20小節目からは、Eのleggierobow、spiccatobowと同じように弾きます。
以下、同文という分けではないのですが、とてもとても限がないので、中々練習しても上手く行かないrepeatの後のpassageを一か所だけを抜き出して、解説して取りあえず終わりにします。中間部の繰り返し以降は、属調のD Durで始まります。
repeat(繰り返し記号の後)の56小節目から59小節目ではe mollのdominante、所謂、X度の和音で終わります。