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分かり易く説明すると、図1の場合には、単なる伴奏の4分音符であり、図2の場合は、melodicな旋律的な要素が加味されているからです。
一見すると無味乾燥に思われがちなbasso continuoのpartですが、4分音符一つ取っても、そのpassageや音楽表現で、4分音符の演奏が大きく変わって来るのですよ。
どうしても、soloの生徒を優先に指導してしまうので、ついついにbasso continuoのCembaloやcelloの奏法に迄、指導が行きません。
前回の発表会(15年の10月頃)からは、そういったシテ役の演奏法にも、気を付けて指導するように、自分自身でも、注意をしています。或る時には、soloの注意を生徒に任せたとしても・・です。.

「ちなみ」・・ついでに、Vivaldiの作品の中で、一番、難しい、高度なlevelが要求される曲は、Vivaldiの作品の中でも、一番有名な曲である、「四季(Le quattro stagioni)」でしょうかね??

Vivaldiの「四季」は、「和声と創意への試み」(Il cimento dell'armonia e dell'inventione)というtytlの作品であるOp.8の第1集の第1曲から第4曲までの曲 「春La Primavera」「夏L'Estate」「秋L'Autunno」「冬L'Inverno」・・と名付けられた曲集の総称であります。
春、夏、秋、冬に関する、Sonetto(ソネット14行詩)が曲の描写音楽のように、楽譜の上に書かれていて、その光景が描写されている描写音楽になります。

ただし、ヴィヴァルディ自身が、このシリーズを「四季」と名付けた分けではないそうです。
「四季」に関しての詳しい説明は、「四季」のPageでするので、ここでは割愛しましょう。



これまで、長い長い、蛇足でしたが、それでは、以下、詳しい曲のAnalyseに入ります。

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ritornello形式について

baroque時代に使用された音楽の形式では、(当然、未だsonate形式等の形式は無かったので、)このritornellol(リトルネルロ)形式が、baroque時代のconcerto等に使用された音楽形式の一番主流の形式になります。

ritornello(リトルネロ)の形式や様式の説明を、一通り分かり易くお話するのには、かなり込み入った内容になって来るので、先ず、ritornellolの形式のお話と、その作曲技法に関するお話(basso continuoのお話を)区別して、説明して行く事にします



先ず、最初のお話は、ritornelloの形式、構造についての説明をです。

ritornellol(リトルネロ)の形式は、日本語の訳語では、rondo(ロンド)形式と同様に、循環形式(themaが繰り返される形式)と訳します。(不思議な事に、rondo形式もritornellol形式も、循環形式と訳されています。)


「循環」という言葉には、今更、説明は必要はないとは、思いますが、私が中学生、高校生時代には、学校に通うために乗車するバスが、循環バスでした。
その懐かしいバスは、流石にもう走ってはいないようですが、その路線自体は、今でも長崎の町にあって、今でも、バスが走っているようです。
山手線も循環電車ですよね。

左側の写真のバスは、かなりの大型バス(多分記憶では90人乗りだったと思います。)で、長崎と諫早を走っていた、トレラー・バスです。

循環バスは、もっと小型のバスですが、netでも、写真が見つからないので、諦めました。

循環という言葉に拘って、蛇足を続けているのは、実は、このritornellolやrondoの形式は、大きなsymmetry(シンメトリー・左右対称)構造の形式であって、日本語(文部省)の訳の・・「無限の循環形式」ではないからです。

輪唱の「蛙の歌」等は、同じmelodieが、誰かが止めない限り、無限に続くので、無限canonという言い方をする事があります。

勿論、それに対して、Pachelbelのcanonのように、melodieが続いて行って、終わるcanonを有限canonと呼ぶ事もあります。
私の場合には、循環形式の循環の言葉は、無限canonのように、終わりのない形式を連想してしまいます。

ドイツ語で、循環形式とは何と言うのか??を私は知らないので、この日本語訳は、私にとっては不本意な訳なので、チョッと拘って見ました。


ritornello形式やrondo形式では、(ABA)(ACA)(ADA)と無制限に繰り返して行く事が出来るので、その名前がついているのですが、無限に続く・・という事は、循環の回り回って・・・、とは意味が違いますよネ??

ritornello形式には、楽典の教則本等に、その詳しい説明が掲載されていないので、rondo形式を例に上げて、詳しく説明すると、・・・以下・・・



以下、rondo形式の説明です。

rondo形式では、thema(主題)がAとすると、Aのthemaが終わると、新しいBの音楽になって、また、Aの主題に回帰します。
そして、同様に・・・新しいCの曲が出て来て、また再びAに回帰します。以下、同文(ABA)(ACA)+・・・n、、という感じですかね??

・・・これをまとめたのが、単純rondo形式・・・・、A+B+A+C+Aの形式となります。

但し、大きくは、最初のA+B+Aを括弧で括って、(A+B+A)+C+Aとなるのですが((A+B+A)を纏めてAと書き表したりするので、すこぶる紛らわしのですが、A+B+A'なら、どこかで見た形式ですよね。。

実は、これは、本当ならば、(A+B+A)+C+(A+B+A) つまり、シンメトリー形式の最後のB+Aが省略された形になるのです。
(後述しますが、省略をしない型が、大rondo形式になります。)


つまり、大きく見てみると、symmetry(シンメトリー左右対称)の構造をしている分けで、この構造が、音楽の構造の安定性を生み出します。

しかし、実際には、(A+B+A)が二回も繰り返されるのは、クド過ぎるので、再現部の最後B+Aを省略する事が多いのです。

・・という事で、(A+B+A)+C+(A+B+A)の完全な形を大rondo形式と言い、省略された形の(A+B+A)+C+Aを小rondoと言う事があります。
これは、楽典の形式論でよく出て来るお話ですよね。

その形式には、時々、Codaが追加されて、大ロンド(A+B+A)+C+(A+B+A)+D(=Coda)とか、小ロンド(A+B+A)+C+A+D(=Coda)となる事もよくあります。
ここは一般論なので、比較的には分かり易いと思います。
ここまでは、蛇足の 「rondo形式」の説明です。



ここからritornellol形式の説明に入ります。

さて、本題のritornello形式の説明に入りますが、形式そのものは、あまりrondo形式とは変わらないのですが、二つの点で、ritornello形式とrondo形式では、根本的に違う点があります。

その第一の要素は、rondo形式は、舞曲であると言う事で、ritornello形式は、純音楽(舞曲のようなdance等音楽以外の要素を含まない)の形式であるので、rondoとritornelloとは、themaの曲のimageや、基本のtempoの設定や、rhythm等々が、全く違います。

文章が前後してしまいましたが、themaのtuttiの部分に戻って、作曲家によっては、themaを繰り返す時に全く同じにrepeatさせる作曲家もいますが、Vivaldiの場合には、繰り返す度に、少しづつ変更しています。

作曲の基本は、4分音符単位に考えると、拡大形では、4分音符が2分音符や全音符になったりm縮小形では、8分音符や16分音符の単位になったりします。
後は、themaの一部を抜いたり、
基本的には、tuttiの部分(orchestraが演奏する部分)が曲のthemaになって、そのorchestraのthemaが変形されながら、繰り返されて行きます。
Vivaldiの変形の一番手法は、themaが、「今日は秋晴れのとても良い天気だ!」とすると、繰り返しでは、(例えば、少し縮小されて・・)「今日は、とても良い天気だ!」となって、3回めの繰り返しでは、「秋晴れの天気だ!」とか「今日はとても良い!」とか、その都度少しずつ変形されながら、繰り返されて行きます。



という事で、ritornelloの形式についての解説した楽典や音楽形式の本はありませんので、この論文でritornelloの形式を、しっかりと把握してください。

Vivaldi のviolinconcerto in e Op.WNr.2は、Vivaldiのviolinconcertoなので、当然、ritornelloの形式で作曲されています。

ritornello形式については、詳しくは Vivaldi a moll T楽章のPageを参照して下さい。(青い文字をクリックすると、a mollのPageに飛びます。)ritornelloのthemaが繰り返される度に、どのように変化されているのかを譜面上で、比較対照しています。

ritornelloのorchestraのpart(所謂、ritornelloのthema)は、ちょうど、rondo形式のように、繰り返されて演奏されます。
ritornelloのRを取って、R(T+U+*)とします。人によっては、ritornelloの形式をrondoの形式と勘違いして言っている先生もいますが、rondoは舞曲の形式であり、tempoやrhythmもその形式に含まれて来ます。
ritornelloは純粋の器楽のための形式なので、舞曲特有のtempo感やrhythm感を持ちません。全くの別のルーツの形式です。
形態が似ていたとしても、似て非なる物です。


このOp.WNr.2 e mollの場合には、ritornelloのthemaは、5回繰り返されます。

・・・・という事で、その構造式は次のようになります。

RT⇒(soloT)⇒RU⇒(soloU)⇒RV⇒(soloV)⇒RW⇒(soloW)⇒RXと(任意の回数分)、繰り返されます。

soloの部分は、この曲ではviolinistが、violinの技巧的なpassageを演奏していきます。
その伴奏の形態は、オケの伴奏の場合、オケの各パートのtopの奏者が演奏するconcertanteと呼ばれる場合、violinsoloの曲を演奏する時のように、basso continuoのcelloと和音を補充するCembaloの人が伴奏する場合のように、色々な伴奏形態があります。

この曲の場合の解説なのですが、・・・
soloTはsoloviolinのfigurationをviolinとviolaで刻みで伴奏します。
通奏低音のCembaloとcelloは入りません。

soloUは38小節目の後半からで、violinsoloのfigurationは同じですが、最初はsoloTと同じように、violinとviolaの刻みで入ってきますが、2小節半のviolinTとviolinUの伴奏の後、41小節目からは、通奏低音のcelloとCembaloに交代します。
42小節からは、49小節まで、その通奏低音のpartに、更に、violinTとviolinUでMotivがcanon風に入ってきます。
それが、49小節目の前半まで繰り返されると、49小節目の後半からは、完全なbasso continuo(通奏低音)のcelloとCembaloだけの伴奏になります。
という事で、Ricordi版では、この41小節目からのbasso continuoを、basso continuoではなく、Kontrabassを省いたcello群で演奏して、49小節目の後半3拍目から唐突にbasso continuoのsolo celloで演奏するように指示しています。

これでは、ritornelloの意味が希薄になってしまいますので、芦塚versionでは、38小節目の3拍目の裏からのviolinとviolaはsoli(concertante)にしています。

ピンクの字が芦塚versionの変更箇所です。

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